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日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 9

2017年4月旧シリーズ名「鉄道運賃はこのままでいいのだろうか」をタイトル変更しました。

当然ながらかっては旧国鉄路線全線を日本国有鉄道1組織で運行していた。
 国鉄改革は表面的には公社:国鉄としての巨額すぎる赤字の払拭を国鉄を分割することにより、分割で誕生した各社の競合による競争意識を作ることにより、サービスの向上と赤字体質からの脱却を目指す、として国鉄は7社のJRに分割された。
 しかし実態は強力な国鉄労働者の組合を分割する労働対策を主眼として、ではないのかと水面下でささやかれていた。
 日本では労働組合(労組)の組織形態として企業別労働組合となっているので、企業が分割されると労組も分割され弱体化される、このことを忘れないでおきたい。

国鉄の民営分割のプランの骨格は1983年に発足した国鉄再建監理委員会(委員長亀井正夫氏当時の住友電気工業会長)によって立案された。
国鉄民営分割の目的は4つあり

  1. JR経営の黒字化
  2. 37兆3000億円の国鉄長期債務処理
  3. 労使関係の「正常化」
  4. 鉄道事業の再生

以上の展望を得ることであった。
そして1987(昭和62)年に旧国鉄が分割・民営化された時の国鉄長期債務等の総額は37.1兆円で、このうち、25.5兆円を当時の国鉄清算事業団が承継し、 残りは、新幹線保有機構が5.7兆円、JR各社が5.9兆円を引き継いだ。
 現在長期債務の処理については、1998年閣議決定で一般会計に継承され、2014年3月(平成26年度末)で17兆9784億円の残となっている。
 当時政府は国鉄所有の用地を清算事業団により売却しその益を返済にあてるとしたが、初年度(1987年)から用地高値売却が周辺地域の地価高騰を招くとして売却は1年凍結された。
現在では以下に見るように国鉄の長期債務のうち24.2兆円が国民負担とされた。

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鉄道・運輸機構 | 国鉄清算事業 | 国鉄長期債務の処理及び事業の収支構造

いわば国鉄長期債務はいったん棚上げされ、いつの間にか国民全体の負担と変わり、荷が軽くなったJR各社は過去の赤字体質には戻れないということで、採算重視の視点がいっそう強くなったようだ。

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JR各社は連続している国鉄路線を6エリアに分けて、かつ新幹線だけを分離しないという方針でJR6社は1987年発足した。
 「旅と鉄道」2017年4月増刊号に興味のある記事がある。

須田 寛氏の回想録でタイトルは「あれから30年、国鉄分割民営化、舞台裏の物語」とある。氏は旧日本国有鉄道入社後、87年の分割民営化にあたり、JR東海初代代表取締役社長を務めた。

記事によれば

国鉄改革・分割には、国会でも世論を二分するほどの賛否両論が議論された。
その時に抱かれた疑問は、

  • 分割民営化すれば線区の途中で会社別に分断され、乗り換えが生ずる。
  • 会社ごとに運賃も別々に決定されるだろうから複数会社またがりの運賃はたかくなる、
  • 長距離列車は運転できないのでは
  • 会社によって運賃格差ができる

というような疑問があったとのことである。
また「国鉄は全国一本のネットワークであってこそ、そのサービスが維持される」などの反対意見も多かった。

それに対し以下のような解決策をとった。
「そのまま」の移行を
  • 実践移行前の86年9月に翌年実施予定の運賃繰り上げ実施
  • 86年11月に翌年実施予定のダイヤ改正を先行実施
  • 長距離列車の客車乗務員待ち受けは、11月時点で分割会社が担当することを想定し地域ごとに受け持ち替えをしておく(当面車掌は従来通り始発終着駅通し乗務)運賃収受方法・乗車券発行の方法など運送約款についても国鉄当時のものをそのまま新会社の約款とみなすこととし各社間で協定し、運輸省にも申請許可を得ておく。
  • 乗車券の発行方法、通用期間、乗り越し、乗車変更、途中下車ルールなど 乗車券の地紋・様式も変更しない
いくつかの「例外」
法的に、また経理的にいくつかの「例外」が必要になった。
  • 東海道新幹線は運行管理上、線区途中分割にはなじまないので、東京ー新大阪間が一貫してJR東海の経営となった。そのため東京ー熱海間と米原ー新大阪間では新幹線と在来線で別の経営会社に分かれることになった。
    そこで在来線運賃切符で新幹線に乗り換える際に新幹線改札で「振替票」なるものを発行し、下車する駅の新幹線改札でこれを回収しその運賃部分を計算、該当会社に振り分けた。
    しかしこれも1年間実施したが、完全な回収は無理となり、結果的には各社立会いのもと実態調査を行い、発行会社と収受会社の異なる切符は統計的手法で収入金の再配分を行った。
  • 東京・(新)横浜・京都・(新)大阪は特定都区市内制なので、たとえば東海道新幹線の東京都区内行きの切符を持った乗客は新幹線改札をでてそのまま在来線利用で目的地まで向かう。
    これも実際どのような利用かを調査し1枚当たり平均距離(3km)の運賃を該当会社に再配分することで落着した。

JR発足後30年がたち乗車券の様式や販売制度の基本は当時と変わらず、むしろ当時以上に全国のJR旅客6社が統一されたシステムへ向かっているものが多い。  JR6社分割後想像以上にコンピュータ機器への依存が増え6社で統一方式を採用した方がなじむからだ。

 

どうだろうか。

この論をもってしても国鉄分割をする目的の一つであった鉄道事業の再生に向けての発展的施策は見えてこない。分割にあたっての障害解決には成功したとしてさて鉄道事業の再生・発展はどのようにえがかれるのだろうか。
 ここで提示された論は、そもそも国鉄分割がなければ発生しない問題であり、ましてや最後の「JR6社の統一されたシステム」などは分割しないほうが大いに発展したと思われる。
みどりの窓口にあるMARSシステムも、前回書いたようなJR各社ホームページにあるWeb案内構成も同じシステムで構築は可能だ。
 またこの中にでてくる統計的手法は、青春18キップの販売についても応用され、なんらかの実態調査に基づき、統計的に各社への再配分をしているのだろう。

seisyun.tabiris.com



結論 前回見たようにJR東日本以外の各社はこのような貧しいWeb案内システムの提供で利用者に向けての親切なシステム構築ができているのだろうか?

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