線路は続く 目次
線路は続く10 大いなる不名誉
日本では鉄道マンが、「鉄道路線を廃止させてくれ」というジレンマを抱く・・
なんという不幸な国を作ってしまったのだろうか。
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昨年テレビでJR北海道の路線維持活動が紹介された。
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番組の中でJR北海道の宗谷線の維持管理費用は「29億円」となっている。
そこで鉄道としてJR北海道の宗谷線(旭川駅-稚内駅)と、自動車として国道40号線で同じく「旭川駅-稚内駅」間を移動した比較を行った。
鉄道では各駅停車1回乗り継ぎで距離296km、所要時間5時間24分、
特急利用では3時間47分
一方GoogleMapによる自家用車での距離は246km、所要時間は4時間12分と出た。
2009年度の予算と少し古い資料だが国土交通省北海道開発局のサイトから道路関係予算を拾った。
平成21年度 道路関係事業費 |北海道開発局
2009年度北海道開発局予算(単位百万円) |
km当たり |
対象道路 |
6792km |
道路補修関連 |
75,791 |
11.16 |
内高規格道路 |
225km |
内訳道路維持予算 |
53,230 |
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内一般国道 |
6567km |
内訳雪寒a
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22,561 |
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内訳の中「雪寒a」は雪に対する対策費(除雪・雪崩防止・地吹雪対策)である。これと道路維持予算の合計は757億9千万円となる。
そして開発局の所管対象道路6792kmから「km当たり」単価を出す。そして上記「旭川駅-稚内駅」246kmの維持費を算定した。
鉄道2017年・道路2009年維持費比較 |
km当たり/百万円 |
鉄道:宗谷線 旭川駅-稚内駅 |
296km |
29億円 |
9.79 |
道路:(旭川駅-稚内駅) |
246km |
27億45百万円 |
11.16 |
すると27億4千5百万円となった。
・このほかに北海道庁主管の道路があるのでその部分は予算がプラスとなる。(旭川駅から稚内駅までのルートでは大部分国道で道道は少ない)
なぜ鉄道「不公平政策」が続いたか
現状では鉄道・道路ほぼ同じような維持費がかかっている。しかし同じ維持費であるが道路は道路財源という税金で賄われ、同じ維持費を鉄道では事業者負担である。
上記の例のように道路は、当然人や物流の移動が多いところに作られる。それは鉄道も同じですなわち両者は競合することになる。下記指摘のようにその両者は同じルールの下で競っているのではない。
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このような不合理はいかにして発生したか・・
実は民営化をして国鉄を分割し、儲かるところ本州3社と儲からないところ3島3社に分けただけなのである。
東海道新幹線から北海道新幹線までの総合計利益率は35.1%という高率である。国鉄分割民営化の時に新幹線と在来線を別会社としないことを大前提とした。
その前提のもと本州を区分するときに、首都圏と東海道新幹線という鉄道のドル箱路線をいかにするかという大問題があった。本州を2社に区分するとなると、当然首都圏を抱える社と東海道新幹線を抱える社とは分ける必要がある。そこで首都圏から以東の社と、東海道新幹線から以西の社に分けると、東海道新幹線山陽新幹線を持つ1社が鉄道収入・営業利益双方において巨大なものになる。このアンバランスを避けるために、本州を3社に分け、首都圏を主とするJR東日本と東海道新幹線を主体とするJR東海、そして本州西部を担当するJR西日本が誕生した。
この本州を3社に分割し鉄道収入に均衡を持たすという固定観念が間違っていた。東海道新幹線と宗谷本線ではあまりにも収支係数が違いすぎる。これを同じような組織で維持すると捉えた判断が間違っていた。
鉄道収入から判断して鉄道網を分割するには他にも案は考えられたはずだ。
例えば、新幹線を別機構にする。すると鉄道網の分割をするなら2社という形も見えてくる。
東は首都圏から東、北海道まで、西は静岡・長野・富山から西、四国九州まで。NTTの東西分割に近い。
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