紙つぶて 細く永く

右の「読者になる」ボタンをクリックし読者なっていただくと記事更新時にお知らせが届きます。

}

官僚の彼我

同じように東京大学から官僚となり、方や文部科学省かたや財務省。年の差2歳。
それにしても官僚人生の最後にその評価は大きく差が開いてしまった。
前川喜平氏62才と佐川宣寿氏60才
前川氏は官僚としての最高位、事務次官に上り詰め、退官間近に「文科省天下り問題」( 文科省天下りで37人処分 最終報告、違法事案62件に :日本経済新聞 )で停職処分を受けた。そして退職後メディアに安倍政権下での「忖度行政」の事実を披瀝し、「面従腹背」を実践した。
一方このころに上記忖度行政の暴露を止めようという下心からか、「官僚足るものにあるまじき」出会い系バー通い、を読売新聞記事で指摘された。
ところが、どっこい出会い系バー通いは事実であったが、貧困調査のためだったことが実証され、形勢は逆転、彼の評価は上がり、情けないことに官邸からのリークを下に取材もせず記事にしたとした読売新聞の報道姿勢が大いに非難される事態となった。
その饒舌な講演で全国各地から引く手あまたとなっている。

一方佐川宣寿氏は、財務省理財局長時代の国会における忖度答弁「文書はありません」「廃棄しました」を強いられ、その後に就いた国税庁長官事務次官と同等の地位だそうだ)としての職務では「適正・公平な課税、徴集の実現を図ることが重要」と述べ、本心に反してしっかり文書を保存し行政に当たりましょうとは言わなかったようだ。
それでも以下のように部下たちに「面従腹背」にあい、
「国会答弁のように睨み付けるようなことはなく、時々笑顔も出たのですが、回答は用意したペーパーを読む官僚答弁。苦情を受けているのは現場の職員なので、何かメッセージを発してはどうですか、と言っているのですが、最後まで謝罪はありませんでした」(国税労組関係者)
満足に職務も行えず、悶々とした日々を過ごしている。( 雲隠れの佐川・国税庁長官を発見 まるで逃亡犯のような行動│NEWSポストセブン )

f:id:greengreengrass:20180222083259j:plain

 


官僚、いや誰かに仕えるという職業についての生き方の多くは、前川氏の言ではないが面従腹背である。
前川氏と異なり、佐川氏には「面従」しかなく「腹背」する宮仕え魂が存在しなかった。
その逃げまくる姿勢をみても哀れな末路だと想像する。無知性の権力に「こきつかわれる」人生もたまったものではない。
後任の理財局長である大田氏は、質疑に対して「金額についてのやりとりはあったが、価格の提示はしていない」と、佐川氏のように全くの否定ではなく、巧妙言葉を変えて逃げた。いささかの腹背を見せたのだ。
(あの場面で、野党の質疑は「金額についてのやりとりはしたのだな?」とたずね直せばよかった。そうであれば「そうです」と肯定せざるを得なかった)
佐川氏は長い職業人生の終盤に近く、思わぬ落とし穴にはまったその境遇を恨んでいる事だろう。国税庁長官として栄転で職業人生を全うするはずが、上部から忖度を求められ、機転を利かすことができずつい明かな嘘をついた。試練が続く。
この二人の機微について逆転の王、前川氏が自らざっくばらんに語っている。

前川喜平さん「私がもし佐川宣寿国税庁長官(前理財局長)の立場に追い込まれたら」 (1/2)


経済一流、政治二流といわれたがいずれも凋落は明かで、日本に残った唯一といっていい一流システムである官僚機構が崩壊しかけている。
かってその頑固さで嫌味だった福田康夫元総理も官邸による官僚の人事管理を「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」と批判している。
人間万事塞翁が馬で、今日の落胆は明日の喜びとなり、今日の忖度は明日の恐怖となる。官僚諸氏よこんな日本システムで全うな方法で出世しようとしても無理なのだ。

REMEMBER3.11

地域から孤立した無比の文化という誤想

池上彰の記事を読んで、加藤周一「日本文化の雑種性」が似ているなと思った。

アイスホッケー女子の南北合同チームがスウェーデンと対戦したときのこと、北朝鮮の応援団とリンクを挟んで反対側に、韓国のチアリーダーたちが現れ、自由奔放なダンスを披露した。
その躍動感。これぞ自由な社会の典型だ。
彼女たちは、これを見て何を感じたのだろうか。
試合の合間に流れるポップスの数々。それに合わせて踊る若い女性たち。これも驚きだろう。試合が終わって帰路につくとき、彼女たちは度肝を抜かれるはずだ。
まばゆい光の洪水を見るからだ。
彼女たちも、来る前に朝鮮半島の地図を見ているはずだから、江陵が韓国の中では「田舎」に属することはわかっているはず。それなのに、平壌ピョンヤン)の街より明るいのだ。
首都の平壌ですら、街灯はわずかで薄暗い。まして地方に出ると、道路に街灯はない。
各地に点在する金日成像はライトアップされているが、一般の住宅は、夜の8時になると電気が来なくなる。私はそれを北朝鮮の南部の開城(ケソン)で経験した。漆黒の闇に満天の星が美しかった。
北朝鮮では、「韓国民はアメリカ帝国主義の圧政下で貧しい生活を送っている」と教え込まれている。その教えが間違っていることを、彼女たちは知ってしまったはずだ。
彼女たちに対し、監視役が「見聞きしたことは本国で口にしてはならぬ」と口止めするだろうか。
彼女たちも賢いから、口にしないだろう。いや、ひょっとすると家族には話してしまうかも。そうなると、家族そろって北朝鮮当局への不信感が芽生えるだろう。

f:id:greengreengrass:20180208104553j:plain

加藤周一は、彼のいう「西洋見物」の途中で、日本人は西洋の事を研究するよりも日本についての研究を進めるほうが学問芸術の上で生産的になる、と考えたそうだ。
そして、現在日本のいたるところに転がっている問題は西洋の文化や問題よりも却って面白いと思われるものがある、だが彼自身がその点を発展させてゆかなかったのは怠慢だと考えた。(彼は東京大学医学部出身で血液学の第一人者だった)

日本文化の雑種性(抜粋)そして日本人の立場とは何かと考えた時に、その内容は西洋の影響のない日本的なものという風に考えた。西洋の影響が技術的な面を除けば、精神の上でも文化の上でもいたって表面的な浅ぱくなものにとどまっていると考えた。
 日本でそれに似たものとなるとそこにだけは長い歴史を負った文化が形となってあらわれている京都の古い軒並みを思い出すほかない。 私が西洋見物の途中で日本人の立場を考えたときに、その内容は国民主義的であった。そしてそういう私の考えは、英仏両国に暮らしている間、英仏両国民の自国の文化に対する極端に国民主義的な態度によって、大いに刺激された。
 英国的な特色は学問芸術から服装や生活様式の末端にまで及んでいる。英国の文化は日本でのように医学は外国式で美術はまた別の外国式だが生活様式は日本流というような混雑したものでない。したがって何事も軽薄でなく長い歴史を負っていておちついたものだということである。
 西洋からの帰途日本の第一印象とでもいうべきものは、海に迫る山と水際の松林、松林のかげに見える漁村の白壁、これは西ヨーロッパとは全くちがう世界である。
 しかし他方では玄界灘から船が関門海峡に入ると右舷にあらわれる北九州の工場地帯、林立する煙突の煙と溶鉱炉の火、活動的で勤勉な国民がつくり上げたいわゆる「近代的」な日本、これはマレーとは全くちがう世界である。
 上陸した神戸の印象はマルセーユともちがうが、シンガポールともちがっていた。 外見からいえば神戸よりもシンガポールの方がマルセーユに近い。それはシンガポールが植民地だからであって、シンガポールの西洋式の街はマレー人が自分たちの必要のために自分たちで作ったものではない。
 ところが神戸では、港の桟橋も、起重機も、街の西洋式建物も風俗も、すべて日本人たちの必要を満たすために自らの手でつくったものである。西洋種の文化がいかに深く日本の根を養っているかという証拠は、その西洋種をぬきとろうとする日本主義者が一人の例外もなく極端な精神主義者であることによくあらわれている。日本精神や純日本風の文学芸術を説く人はあるが、純日本風の電車や選挙を説くことはない。 日本の伝統的文化をたたえるその当人が自分の文章を毛筆ではなくペンでかき、和綴じではなく西洋風の本にこしらえる。書斎では和服かもしれぬが外へ出るときは洋服である。日本人の日常生活にはもはやとりかえしのつかない形で西洋種の文化が入っている。
 経済の下部構造が「前近代的要素」をひきずりながらもとにかく独占資本主義の段階に達している今日、精神と文学芸術だけが純日本風に発展する可能性があると考えるのは、よほどの精神主義者でなければむずかしいだろう。日本主義者はかならず精神主義者となり、日常生活や下部構造がどうあろうと、精神はそういうものから独立に文化を生みだすと考える他ない。
 思想と文学の領域にかぎれば、戦争中の「国民精神総動員」つまり戦争を正当化するために天皇を祭りあげると同時に日本文化を祭りあげるという仕事をひきうけたのは主に京都の哲学者の一派と日本浪漫派の一派であった。西洋の哲学によって訓練された方法を使って彼らは天皇制を「近代化」したのである。国学者流のみそぎだけでは近代的な戦争イデオロギーとしては役に立たない。いわゆる「超国家主義」そのものが舶来の道具で組み立てられる他なかった。


本当に彼の国と古き「良き」日本は瓜二つのようだ。

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 21

線路は続く 目次

線路は続く12 道路維持費について

鉄道存廃の判断基準とは

国交省HPに以下のような流通経済大学 板谷和也教授の意見が掲載されている。
私の考えを青色で書き込んでみた

この文章には「地域公共交通シンポジウムin旭川旭川グランドホテル 2017/06/12」とクレジットがある。

鉄道存廃の判断基準なぜ、鉄道でなければならないと思うのか
  • なんとなく「地域の衰退」につながりそう• 鉄道がない街は衰退してしまうのではないか

    はっきりしたデータではないがもちろんないよりはある方が有利とはいえる。一例(https://www.projectdesign.jp/201605/pn-fukui/002870.php

  • JRの努力が不足していそう• まだコスト削減の余地があるのではないか

    日高線は高潮被害で不通になっている区間の護岸工事をJRがやるべきことになっている。なぜ国土保全のことまでやらなければいけないのか」等過当な保守もあることは事実だ。

  • 国が無責任だ• 社会の基本的なインフラだから、赤字かどうかに関わらず維持されるのが当然ではないか

    憲法にうたわれているように交通弱者にも「移動の自由」は認められているということからも適正な交通手段は維持されるべき。http://greengreengrass.hatenadiary.jp/entry/2017/04/10/112401

  • 鉄道の利用が減少したことが原因で維持困難線区が発生

    鉄道利用が減少したその原因は、他に価格比較で割安な移動手段(主に高速道路)が調整もせずに作られたことも大きい。

  • 質問:鉄道利用が減るのは悪いことなのか?•回答:誰も悪くない
  • 交通状況の変化は当然のこと• より便利な移動手段が使えるようになったら、誰でもその移動手段を使うようになる • 利用が減った交通手段は「役割を終えつつある」だけ

    道路は作れば採算度外視。一方鉄道は「受益者負担」という名のもとに個別に採算を要求される。公平なルールによって判断されていない。

国鉄が分割民営化に至った要因
  • 労使関係の悪化
  • 「働かない」職員が多数存在

    国鉄最後の社員は27万7000人。JR発足時は21万6000人となり初年度から黒字となった。

  • 巨額の債務
  • 新線建設の資金を多額に高利で調達

    この部分は政治が関与した問題

  • 経営権不在• 新設建設をするかどうかや運賃水準などを自力で決められない

    同じく政治が関与した問題

分割民営化が必要だった理由
  • 国鉄のままでは経営不能

    同じく政治が関与した問題

  • 弾力的な運賃設定、ダイヤ設定、職員運用、関連事業の充実、地域の特色を生かした経営のいずれも、国鉄では不可能

    当時の国鉄にはいえるが、「国営鉄道」そのものについて不可能か否か根拠薄弱

  • 内部補助による非効率• 黒字路線の利益が赤字路線の維持に使われてしまう

    内部補助は重要な問題。これを行わなければJR東日本でも採算がとれない路線は廃線となり、行く末は首都圏路線網と東北線等の幹線くらいとなる。他のJRでも在来線は大部分赤字となり残るのは大都市近郊と新幹線くらい。

「国」が鉄道路線を維持する論理
  • 幹線ネットワークを構成する路線については、国が維持する必要がある
  • 理由:その路線が存在することで、国全体が利益を享受できるから
  • したがって、少なくとも道外に利益が波及しない路線については、国が支援するべきではない

    鉄道は路線網であり、北海道の路線を考えても道外からの乗客が0という路線は少ないのではないか

  • こうした路線は、本来なら鉄道で維持すべきではあるが、利用が少ない場合はバスの方が効率的

    一般的なバスは鉄道よりも運輸効率は悪化する。バス路線は最終的には赤字となり廃止となる例が多い。

  • 国負担:北海道以外の46都府県の住民が、北海道のために金を出すということ 「クニ」という実態のない概念が負担するのではない• したがって、負担させる論理が不可欠
  • ガソリン税の一部を鉄道への補助に用いるというのは、自動車ユーザーが鉄道を助けるということ

    ユーザーではなく国が強制的に税として徴収し、鉄道幹線と並行する自動車道を作ってきた。そして環境負荷の多い自動車へとユーザーを導いたことに対する是正という面を考えたい。

  • 北海道負担:道民が負担• 鉄道の走っていない市町村民も負担するということ• たとえば、留萌線を維持するために、釧路や根室の人が負担できますか?

    下記にあげたように、国全体で全線路保守(例として東海道新幹線の鉄道収入をあてる)という考え。

 

北海道国道40号線の維持費について再考してみた。

まずは一般道・高規格道路を分析
以下平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査から見てみると、このルートには一般国道と高規格道のバイパスがあることがわかった。
国道40号線と名寄美深道路、幌富バイパス、さらに豊富バイパス合計300.1km(内高規格道路49.6km、一般国道250.5km)の車両通行量を求める。

平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査

これによると国道40号線全線の1日当たり総通行車両は466,128台、各調査地点の平均をとると5684.、最低通過台数地点は965台となっている。


観測地点82か所の合計車両通行量は466,128台。最大数量23,303台、最小965台、平均5,685台と計測された。「線路は続く」前々回( 日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 19 - 紙つぶて 細く永く )で求めた国道40号の維持費246km 27億45百万円を、高規格道路49.6km、一般国道250.5kmに合わせて再計算する。
そして求めた表が以下になる。

北海道開発局道路補修予算 757億9100万円
北海道開発局国道40号線維持費コスト
全線 300.1km   この区間は4.4%  3347.3 11.16
内高規格 49.6km 16.5% 高規格 553.2  
一般 250.5km 83.5% 一般国道 2794.06  
        単位百万円

年間維持コストは33億4730万円となった。

平均車両/日 1年換算 維持コスト 1台当たり
5685台 2,074,843台 33億4877万円 1613.14円

国道40号線年間平均通過車両は(a5685台×365)2,074,843台、これで徐する33億4730万円/2074842.5台は1613円となる。
つまり国道40号線この区間旭川稚内)の通行により1台・1回あたり平均1613円の通行コストが係っていることになる。
 自動車はこの道路建設や維持に係るコストを年間5兆円に上るガソリン税自動車取得税等で別途支払っている。
九州の自動車や名古屋の自動車が、たとえ北海道の高規格道路を使わなくても雪害対策や道路整備のコストは道路特定財源を使って負担される。
このようなシステムは鉄道を考えた場合に充分生かされていない。あくまでもJR6社は地域環境が異なっても当然のごとく6社が自社のエリアでの維持費を捻出する。

仮称:鉄道特定財源

単位百万円

JR7社の決算一覧
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR北海道 20
16
総合 2,568.7 76,847 29.9 125,127 49 -48,280 -18.8 7,065
20
17
総合 2,283.2 79,758 34.9 132,334 58 -52,576 -23.0 7,003
新幹線 148.8 11,653 78.3 14,435 97 -2,782 -18.7
JR東日本 20
16
総合 7,458.2 1,805,000 242.0 1,647,300 221 157,700 21.14 57,580
新幹線 1,194.2 578,200 484.2        
20
17
総合 7,457.3 1,816,200 243.5 1,680,100 225 136,100 18.25 57,580
新幹線 1,194.2 584,300 489.3        
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR東海 20
16
総合 1,970.8 1,357,900 689.0 800,300 406 557,600 282.9 18,164
新幹線 552.6 1,192,000 2,157.1        
20
17
総合 1,970.8 1,371,900 696.1 784,900 398 587,000 297.9 18,054
新幹線 552.6 1,211,900 2,193.1        
JR西日本 20
16
総合 5,007.1 850,000 169.8 817,000 163 33,000 6.6 29,680
新幹線 812.6 437,200 538.0        
20
17
総合 5,008.7 849,600 169.6 820,600 164 121,700 24.3 29,152
新幹線 812.6 434,600 534.8        
JR四国 20
16
全体 855.2 26,982 31.6 37,895 44 -10,913 -12.8 2,507
20
17
全体 855.2 27,269 31.9 39,178 46 -11,909 -13.9 2,450
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR九州 20
16
総合 2,273.0 180,900 79.6 191,400 84 -10,500 -4.62 9,060
新幹線 288.9 49,362 170.9          
20
17
総合 2,273.0 176,400 77.6 150,700 66 25,700 11.31 8,978
新幹線 288.9 50,100 173.4        
JR貨物 20
16
全体 7,967.9 136,366 17.1 139,723 18 -3,357 -0.4 5,602
20
17
全体 7,961.8 136,934 17.2 136,406 17 528 0.1 5,529
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
7社合計 20
16
  30,374 4,433,995   3,758,745   675,250 22.2 129,658
20
17
  27,810 4,458,061   3,748,045   710,016 25.5 128,746
新幹線 20
16
  2,848.3 2,256,762 792          
20
17
  2,997.1 2,292,553 765          

決算資料HPは末尾に記載


JR7社合計では2016年度6752億5000万円、2017年度7100億1600万円の鉄道営業利益があった。つまりJR北海道JR九州・JR貨物まで含めた全社では黒字なのだ。この発想からは様々な方策が考えられる。
 政策当局はどうしても「国鉄分割の失敗」を認めたくないようだ。
自動車に倣えば、新幹線の鉄道収入を全国6社のJRで共有するという方法も可能ということだ。

仮称「鉄道特定財源一案として新幹線特急料金相当部分を「鉄道特定財源」もどきと見なし、共有する。
 試算したところ東海道新幹線部分での各駅間運賃+特急料金に占める特急料金のシェアは平均47%、同じく東北新幹線プラス東海道新幹線各駅間運賃+特急料金に占める特急料金の平均は46%だった。
 早特割引等を換算し、特急料金収入を新幹線鉄道収入の少なく見積もり40%と仮定した。
2016年度の新幹線鉄道収入は2兆2925億5300万円、この40%は9070億2120万円これにあたる部分を鉄道線路保守資金として全路線に活用する。

国交省の試算によるJR各社の「雪量」比較は以下のようになる。


JR北海道の7508に対しJR東海は451、JR四国は0である。当然立地によって雪害も大きく異なる。

f:id:greengreengrass:20180216112305p:plain

http://www.mlit.go.jp/common/001195227.pdf より加工


JR北海道では2017年度雪に対する冬季設備投資が4億9000万円(新幹線1億2000万円 在来線3億7000万円)、冬季対策費が44億5000万円、合計49億4000万円係ったという。(JR北海道「お客様相談室」による)
鉄道収入797億5800万円の鉄道収入に対して雪害対策が49億4000万円、これは6.2%になる。

雪害のJR北海道や近辺人口の少ない過疎地を走る列車の路線保守にも、全国鉄道収入を合計した鉄道収入計から必要に応じて費用を賄う。まさに道路特定財源の鉄道版だ。
諸外国では鉄道路線の維持に向けて、端的に税金で補助する方策等財産としての鉄道路線に思いをはせている。

JR北海道 http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/kessan/28/pdf/00_jrhokkaido.pdf
JR東日本 http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201703guide1.pdf
JR東海 http://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2017.pdf
JR西日本 http://www.westjr.co.jp/company/ir/library/fact/pdf/2017/fact2017.pdf
JR四国 http://www.jr-shikoku.co.jp/04_company/kessan/30_stage.pdf
JR九州 http://www.jrkyushu.co.jp/company/ir/library/earnings/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/2016.4q.kessansetsumei_2.pdf
JR貨物 http://www.jrfreight.co.jp/common/pdf/kessan/h27_kessan.pdf

 

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 27 線路は続く13へ進む - 紙つぶて 細く永く

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 20 -線路は続く11 へ戻る 紙つぶて 細く永く

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 20

線路は続く 目次

線路は続く11 JR東西2社+新幹線体制+貨物

前回で、現行のJR7社体制ではなく、JR東西2社(+新幹線機構+JR貨物)を考た。まず2社体制を検討する。

greengreengrass.hatenadiary.jp

JR7社の決算を読むことからさらに考えてみよう。

JR7社の決算一覧から見える数字
単位百万円  区別 営業収入 営業km 鉄道収入 /km 社員 営業係数
JR
北海道
2016 総合   2,568.7 76,847 29.9 7,065 154
2017 総合   2,283.2 79,758 34.9 7,003 166
内新幹線   148.8 11,653 78.3
JR
東日本
2016 総合 2,057,300 7,458.2 1,805,000 242.0 57,580 84.3
内新幹線   1,194.2 578,200 484.2 55.5
2017 総合 2,068,800 7,457.3 1,816,200 243.5 57,580  
内新幹線   1,194.2 584,300 489.3  
JR東 2016   総合 10,026.9 1,879,847      
2017   総合 9,740.5 1,895,958   64583  
  在来線のみ 8,397.5 1,300,005      

JR
東海

2016 総合 1,738,400 1,970.8 1,357,900 689.0 18,164 68.0
内新幹線   552.6 1,192,000 2,157.1 64.4
2017 総合 1,756,900 1,970.8 1,371,900 696.1 18,054  
内新幹線   552.6 1,211,900 2,193.1  
JR
西日本
2016 総合 1,451,300 5,007.1 850,000 169.8 29,680 89.4
内新幹線   812.6 437,200 538.0 51.7
2017 総合 1,441,411 5,008.7 849,600 169.6 29,152  
内新幹線   812.6 434,600 534.8  
JR
四国
2016 全体   855.2 26,982 31.6 2,507 137.2
2017 全体   855.2 27,269 31.9 2,450  
JR
九州
2016 総合 377,900 2,273.0 180,900 79.6 9,060 107.3
内新幹線   288.9 49,362 170.9   89.3
2017 総合 382,900 2,273.0 176,400 77.6 8,978  
内新幹線   288.9 50,100 173.4  
JR西 2016   総合 10,106.1 2,415,782      
2017   総合 10,107.7 2,425,169   58634  
  在来線のみ 8,453.6 728,569      
JR
貨物
2016 全体 136,366 7,967.9 136,366 17.1 5,602 106.0
2017 全体 136,934 7,961.8 136,934 17.2 5,529  

注)JR北海道以外の営業係数(100円稼ぐのに必要なコスト)は週刊東洋経済臨時増刊より2012年度の指数 決算数字修正

 

JR各社の2017年決算から各項目の数字を拾い出した。
営業収入は運輸業以外に不動産業とうのいわば副業収入を含む数字。鉄道収入が運輸業としての売上となる。「/km」は営業キロ数1kmあたりの収入を求めた。
仮称「JR東・西」各社の在来線の延長キロ数は8397.5kmと8453.6km、社員数は6万4583人と5万8634人(社員数は新幹線が外れると当然減少する)とほぼ拮抗する。
現在の7社体制と比べて、各社の経営を見てもこのほうがはるかに合理性がある。
なぜ国鉄分割の時にこのような案を考えなかったか・・。

それはやはり東海道新幹線をどの社に割り振るかという問題からだろう。
うがった見方をすれば、東海道新幹線の巨大な利益をJR東海一社で独占させたことが間違いだった。その結果、リニア新幹線のような暴走にもつながった。

リニアの功罪 東海道新幹線の耐用年数から大規模なリニューアルの必要が考えられている。
リニューアルに際し東海道新幹線を運用停止させる必要からもリニアは東京・名古屋間のサブ的な意味をもたせるとされている。
しかし、その意味では現在北陸新幹線として大阪までの延伸計画があり補完としてはこちらを考えてもいいのではないか。
開業後の予想時間を福井県が試算した。福井県HPにでている。

f:id:greengreengrass:20180208094954p:plain

福井県HPより
それによると東京-金沢-京都-新大阪のルート予定時間は3時間48分となっている。 現行ののぞみ2時間30分と比べて1時間強多くかかる。
しかし5兆円以上といわれるリニア新幹線建設費そのものの巨額さもさることながら、運用後は結果的に東海道新幹線と競合する路線であるというリニア新幹線の宿命そして何より今後の日本経済の拡大、そして需要増が望めるのかという点からも、現在予測される需要予測は芳しいものではない。そのリニア建設のリスクを考えればこの1時間強の差は安いものではないか。


新幹線を外した、鉄道収入を見ると首都圏を抱えるJR東は1兆3000億円、JR西は7285億6900万円と差はかなり大きくなる。

この点を含め鉄道として新幹線機構とJR貨物を含め総合的な連携を考えることになる。
求められるのは鉄道の廃線ではなく、営業努力により乗客増に努めなければならないことだ。

余談 なぜ車の所有台数が少ないか

興味ある数字がある。北海道の世帯当たり車の保有台数は全国41位。北海道より下位には千葉県・兵庫県京都府・神奈川県・大阪府・東京都となっている。
いわゆる大都市の近辺では交通の便利さから、自動車の保有数が少なくなるのだろう。

都道府県別自動車保有台数
順位 前年
順位
都道府県 世帯当り台数 保有台数 世 帯 数
順位 前年
順位
都道府県 世帯当たり
普及台数
保有台数 世 帯 数
福 井 1.749 507006 289825
富 山 1.702 706138 414865
山 形 1.680 691912 411919
群 馬 1.643 1366885 831970
栃 木 1.619 1323350 817370
茨 城 1.602 1957634 1221978
坡 阜 1.594 1291304 809888
長 野 1.585 1364385 861074
福 島 1.564 1218677 779244
10 10 新 潟 1.554 1383696 890293
11 11 山 梨 1.546 550799 356363
12 12 佐 賀 1.521 499049 328015
13 13 石 川 1.492 713718 478395
14 14 三 重 1.466 1147394 782840
15 15 鳥 取 1.453 342296 235502
16 16 静 岡 1.411 2198433 1557733
17 18 岩 手 1.405 734731 523065
18 19 島 根 1.404 405366 288790
19 17 滋 賀 1.397 791006 566148
20 20 秋 田 1.389 591678 426020
21 21 岡 山 1.373 1148102 835989
22 22 徳 島 1.357 453263 334117
23 23 香 川 1.339 583927 436123
24 24 熊 本 1.326 1022084 770607
25 25 宮 城 1.308 1282898 980808
26 26 沖 縄 1.298 821706 632826
27 28 大 分 1.287 686418 533406
28 27 愛 知 1.283 4125650 3214669
29 29 宮 崎 1.282 668895 521627
30 30 山 囗 1.240 817891 659804
31 31 青 森 1.228 724176 589887
32 32 和歌山 1.219 536508 440150
33 33 鹿児島 1.165 940088 807169
34 34 愛 媛 1.129 735787 651763
35 37 高 知 1.116 393485 352694
36 35 広 島 1.110 1443487 1300322
37 36 奈 良 1.107 650270 587413
38 38 長 崎 1.088 690970 635020
39 39 福 岡 1.081 2562795 2371459
40 40 北海道 1.008 2782914 2761826
41 41 埼 玉 0.989 3177611 3212080
42 42 千 葉 0.989 2779939 2811702
43 43 兵 庫 0.916 2297983 2507945
44 44 京 都 0.827 994957 1202380
45 45 神奈川 0.720 3051367 4236072
46 46 大 阪 0.651 2749369 4223735
47 47 東 京 0.445 3110817 6994147
/ 合 計 1.062 61018814 57477037

自動車検査登録情報協会HPより

俗説には北海道の場合、札幌に人口が集中しているので交通の便が良い札幌での自動車保有台数が少ないといわれる。ではその札幌市の保有台数を見てみよう。

  札幌市 札幌運輸局 北海道 北海道札幌以外
総車両数 1,029,597 1,686,802 3,736,908 2,707,311
人口2018.1.1 1,954,626 2,849,688 5,348,102 3,393,476
世帯数2018.1.1 944,184 1,311,812 3,358,621 2,414,437
1台当り人口 1.898 1.689 1.431 1.253
世帯当たり台数 1.090 1.286 1.113 1.121

上記は北海道運輸局の数字。こちらには乗用自動車(タクシー)等が含まれ、登録車両の定義が異なるので上記と数字は異なるが、札幌市を外した北海道でも世帯当たり保有台数は1.121と全国35位そう多くはない。JR北海道の利用も少ない。
 北海道の人は主に何で移動しているのだろう?
札幌運輸局管内は以下

札幌運輸局管内

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 21 - へ進む 紙つぶて 細く永く

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 19 - へ戻る 紙つぶて 細く永く

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 19

線路は続く 目次

線路は続く10 大いなる不名誉

日本では鉄道マンが、「鉄道路線を廃止させてくれ」というジレンマを抱く・・
なんという不幸な国を作ってしまったのだろうか。


昨年テレビでJR北海道の路線維持活動が紹介された。

NHK「クロ-ズアップ」 2017年3月29日(水)

JR北海道で、鉄道の運行を司る部署の会議にカメラが初めて入りました。
話し合われていたのは、徹底したコスト削減です。
「圧縮して(自治体に)お示ししないと、ゼロベースだと話も聞いてもらえない」
自治体に協議に応じてもらうためには、求める費用負担を少しでも減らす必要があると考えているのです。
普通列車1本切ると、(削減額は)500万円くらい。
6本、減らして、3,000万円くらい」
この日の議論は、北海道北部を走る宗谷線旭川稚内を結び、北海道の背骨とも呼ばれています。
見直し区間は180キロ。 7つの自治体に及んでいます。 維持するためには、赤字の穴埋めや老朽化した施設の更新などに、毎年29億円が必要だといいます。
検討の対象は、あらゆる分野に及びます。
まず、あがったのは、およそ100か所ある踏切の維持費です。
「1か所でも百数十万円かかると思う、トータルすると。 そこをどう落とすか」
踏切をなくすと、人や車が線路を横断できなくなります。
地域の人に不便をかけますが、コスト削減のためには、やむを得ないという案です。
しかし、全体で必要な29億円には遠く及びません。
「この線区では何をやる? 経費節減で、大きなところで」
巨額のコストを減らすために、さらに踏み込んだ案も出ました。
定時運行に欠かせない除雪の費用です。
この路線だけで、ひと冬に2億円かかっています。
「(列車を)定時に走らせようと、かなりの頻度で、機械除雪やっている。 経費を縮減する方法として、初列車はなんとか確保しましょう。 それ以降はご迷惑をかけるかもしれません」
「列車が遅れるかもしれないってことですか」
「そう」
鉄道会社として固く守ってきた定時運行の理念をどこまで犠牲に出来るのか。 ぎりぎりの検討が続きます。


番組の中でJR北海道宗谷線の維持管理費用は「29億円」となっている。
そこで鉄道としてJR北海道宗谷線旭川駅稚内駅)と、自動車として国道40号線で同じく「旭川駅稚内駅」間を移動した比較を行った。

 

f:id:greengreengrass:20180205135401p:plain

国土数値情報を元に加工


鉄道では各駅停車1回乗り継ぎで距離296km、所要時間5時間24分、
特急利用では3時間47分
一方GoogleMapによる自家用車での距離は246km、所要時間は4時間12分と出た。

2009年度の予算と少し古い資料だが国土交通省北海道開発局のサイトから道路関係予算を拾った。

平成21年度 道路関係事業費 |北海道開発局

2009年度北海道開発局予算(単位百万円) km当たり
対象道路 6792km 道路補修関連 75,791 11.16
内高規格道路 225km 内訳道路維持予算 53,230  
一般国道 6567km

内訳雪寒a

22,561  

内訳の中「雪寒a」は雪に対する対策費(除雪・雪崩防止・地吹雪対策)である。これと道路維持予算の合計は757億9千万円となる。
そして開発局の所管対象道路6792kmから「km当たり」単価を出す。そして上記「旭川駅稚内駅」246kmの維持費を算定した。

鉄道2017年・道路2009年維持費比較 km当たり/百万円
鉄道:宗谷線 旭川駅-稚内 296km 29億円 9.79
道路:(旭川駅-稚内駅) 246km 27億45百万円 11.16

すると27億4千5百万円となった。
・このほかに北海道庁主管の道路があるのでその部分は予算がプラスとなる。(旭川駅から稚内駅までのルートでは大部分国道で道道は少ない)

なぜ鉄道「不公平政策」が続いたか

現状では鉄道・道路ほぼ同じような維持費がかかっている。しかし同じ維持費であるが道路は道路財源という税金で賄われ、同じ維持費を鉄道では事業者負担である。
上記の例のように道路は、当然人や物流の移動が多いところに作られる。それは鉄道も同じですなわち両者は競合することになる。下記指摘のようにその両者は同じルールの下で競っているのではない。

北海道教育大准教授・武田泉国土交通省の地方部局である北海道開発局に道路行政の任務は与えられているが、鉄道は一貫して対象外。
一方で鉄道に並行するような高規格道路をたくさん造っている。
JR北海道の経営がいくら悪化しても、鉄道は自前で面倒を見て、頑張れないならやめてくださいという話だ。
 日高線は高潮被害で不通になっている区間の護岸工事をJRがやるべきことになっている。なぜ国土保全のことまでやらなければいけないのか
 国には、最大限の多様な選択肢を作るための制度改革を望む。膨大な道路建設予算があるのは、我々がガソリン税を払っているから。
 欧米では交通税を鉄道など公共交通機関全般に転用されることがある。日本でも道路財源を鉄道にも使えばいいのではないか。
 上下分離という案が出るが、「上中下」分離という手段もある。道路、港、空港は上下が完全に分かれている。ところが鉄道だけは全部一体。
 上中下を分離する場合は、上が車両の運行を担うJR、中は車両保有などを行う道や第三セクター、下が線路などを保有する開発局や鉄道建設・運輸施設整備支援機構などの選択肢がある。
 今は限られた特定の枠組みでしか議論していない。国は分割民営化の失策を認めたくないのか動かず、さまざまな可能性が排除されたまま議論が進んでいる。柔軟に考えれば、もっと策はある」

このような不合理はいかにして発生したか・・
なぜ鉄道「不公平政策」が続いたか 杉山淳一の「週刊鉄道経済」鉄道開業から114年にわたり「鉄道の費用はすべて鉄道事業者が負担する」という仕組みだけだった。
実際には鉄道国有化の流れがあり、国が鉄道を負担した時代がある。
しかし民間鉄道については鉄道会社負担の原則だ。それはなぜか。
 簡単に言うと「鉄道がもうかったから」である。
明治5年に新橋~横浜間で鉄道が開業した翌年の数値を見ると、年間の旅客収入は42万円、貨物収入は2万円、経費は23万円。
つまり利益は21万円だ。利益率約5割。 こんなにおいしい商売はない。
もちろん沿線は活気づく。鉄道はもうかる。
 そこで全国の資産家や有志が鉄道建設に乗り出した。
 当時の国は「鉄道は国策であり国営であるべき」と考えていた。これは軍事輸送の観点も大きかった。利益の出る国営事業として独占したいという気持ちもあったと思われる。
 しかし、全国の幹線鉄道を整備する資金が明治政府にはなかった。そこで、どうしても鉄道を開業したいという者に対して、国が免許を与えた。
 ここから、民間鉄道は自己資本で鉄道を建設し、政府は免許を与えるという図式が始まっている。
しかし軍部の要請で1906年に鉄道国有法が施行され、北海道炭礦鉄道、日本鉄道(関東・東北方面)、山陽鉄道などが買収された。
これは戦時買収のような屈辱的な条件ではなく、かなり良い値段で買い取られた。  鉄道はもうかる。それは政府も承知だった。鉄道はもうかる事業ですよ、だから自己責任でやってください、という考え方が定着した。
 そしてなぜか、100年以上も経過して、この考え方のみ国策で改められていない。
国営鉄道(国鉄)は赤字で失敗した。本当はこのときに鉄道はもうからないという認識を持つべきだった。
そして、上下分離を実施し、鉄道と他の交通手段との不公平を解消すべきだった。  それを「民営化したからこれからはもうかる」と勘違いし、鉄道会社の自助努力に任せるという風潮につながった。
鉄道事業法によって免許制から許可制に緩和され、国の関与は小さくなった。建設許可も出しやすいけれど、廃止の許可も出しやすくなった。

実は民営化をして国鉄を分割し、儲かるところ本州3社と儲からないところ3島3社に分けただけなのである。
東海道新幹線から北海道新幹線までの総合計利益率は35.1%という高率である。国鉄分割民営化の時に新幹線と在来線を別会社としないことを大前提とした。
その前提のもと本州を区分するときに、首都圏と東海道新幹線という鉄道のドル箱路線をいかにするかという大問題があった。本州を2社に区分するとなると、当然首都圏を抱える社と東海道新幹線を抱える社とは分ける必要がある。そこで首都圏から以東の社と、東海道新幹線から以西の社に分けると、東海道新幹線山陽新幹線を持つ1社が鉄道収入・営業利益双方において巨大なものになる。このアンバランスを避けるために、本州を3社に分け、首都圏を主とするJR東日本東海道新幹線を主体とするJR東海、そして本州西部を担当するJR西日本が誕生した。
 この本州を3社に分割し鉄道収入に均衡を持たすという固定観念が間違っていた。東海道新幹線と宗谷本線ではあまりにも収支係数が違いすぎる。これを同じような組織で維持すると捉えた判断が間違っていた。
鉄道収入から判断して鉄道網を分割するには他にも案は考えられたはずだ。
例えば、新幹線を別機構にする。すると鉄道網の分割をするなら2社という形も見えてくる。
東は首都圏から東、北海道まで、西は静岡・長野・富山から西、四国九州まで。NTTの東西分割に近い。

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 20 - へ進む 紙つぶて 細く永く

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 18 -へ戻る  紙つぶて 細く永く

 

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 18

線路は続く 目次

線路は続く9 JR各社比較

JR7社は旧国鉄を批判的にとらえかつ各問題の発展的解消を目的に設立された。

旧国鉄の問題点として以下のような指摘があった。

  • 40数万人という職員はー組織では管理できない
  • 合理化抵抗勢力としての労働組合を分割弱体化する
  • 民間企業として官製のしがらみをとる
  • 相互に競争させ経営効率化とサービス向上を目指す

 

そして旧国鉄は分割され7社体制となった。その7社体制を考える。

  • 総社員は129000人程度(決算資料)JR東日本社員数57580人
  • 組合は協調路線(JR連合7万9千人 JR総連7万人 発表数字)
  • 生産性の向上は顕著
  • 近年は歴史を重ねることで各社個別組織体としての独自路線も強くなり始めた

 

JR7社に分割された線路は、それぞれが協調し旧国鉄としての全国一体サービスも維持するとされた。

 しかし旧国鉄とJR7社体制を考える時、例えば京都から北海道知床へ行くような長距離の移動と、京都大阪間のような近距離交通を考えることはまったく概念が異なることになる。

f:id:greengreengrass:20180123133449p:plain

2016年のJR各社路線図 国土数値情報をもとにBlog主加工

 

JR各社間の移動

新しい資料を基にJR各社間の移動を見てみる。
国交省に都道府県別旅客移動の一覧があるので、これを加工しJR各社間の移動として集計した。

2015年のJR間の移動をまとめてみた。発表された数字は急行か特急での移動なので実際は近隣他府県への移動等の普通列車の人数を加えるともう少し多くなる。
JR各社のエリアとした都道府県は以下

JR北海道北海道
JR東日本青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島・新潟・茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・長野
JR東海静岡・愛知・岐阜・三重
JR西日本富山・石川・福井・滋賀・京都・鳥取・島根・奈良・大阪・和歌山・兵庫・岡山・広島・山口
JR四国徳島・香川・愛媛・高知
JR九州福岡・佐賀・長崎・大分・熊本・宮崎・鹿児島

 

2015年JR(都道府県換算)間の移動(特急・急行)
            単位千人
  JR
北海道
JR
東日本
JR
東海
JR
西日本
JR
四国
JR
九州
JR
北海道
7009.32          
JR
東日本
2040.69 79438.85        
JR
東海
252.51 44007.13 12867.20      
JR
西日本
625.89 73779.35 1748.58 33046.10    
JR
四国
6.69 1717.18 656.12 5436.54 2451.63  
JR
九州
84.39 4103.57 2922.77 14332.46 612.33 21221.43

各社のカラーをつけたJR自社管内移動数を集計すると1億5603万4千人、これは総移動乗客3億836万人の半数50.%となる。特急急行の乗客でいえばJR自社管内ではなく各社間の移動が半数になるということだ。

次は各JR管内の構成比で各JRからどの地域に移動しているかを見る。

以下が
目的地 
JR
北海道
JR
東日本
JR
東海
JR
西日本
JR
四国
JR
九州
JR
北海道
70.0% 1.0% 0.4% 0.5% 0.1% 0.2%
JR
東日本
20.4% 38.7% 70.5% 57.2% 15.8% 9.5%
JR
東海
2.5% 21.5% 20.6% 1.4% 6.0% 6.8%
JR
西日本
6.2% 36.0% 2.8% 25.6% 50.0% 33.1%
JR
四国
0.1% 0.8% 1.1% 4.2% 22.5% 1.4%
JR
九州
0.8% 2.0% 4.7% 11.1% 5.6% 49.0%
  100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%

JR北海道では自社管内とJR東日本間での移動が多い。

JR東日本では自社管内と同じ程度JR西日本間での移動が多い。

JR東海では圧倒的にJR東日本管内への移動が多い。JR東海はエリアも狭く自社管内での特急利用数がそう多くないこともあるのかもしれない。

JR西日本では自社管内移動の倍以上がJR東日本への移動だ。
しかし注意しなければいけないのは、新大阪駅から東京駅への新幹線利用は集計上ではJR西日本にしているが実際はJR東海の利用になること。

JR四国は路線数の関係だろうが自社管内よりもJR西日本管内への移動が多い。

またJR九州は自社管内に次いでJR西日本が多い。

この両地域でJR東日本管内への移動は飛行機の利用になることなのかもしれない。

次に路線維持という面から路線km当たりの人口を特に島嶼という観点からJR北海道、JR四国、JR九州三社を比較した。

3島JR路線距離と人口
  路線km 人口 km当人口 対九州比 面積
JR北海道 2283.2 5381733 2357 40.9% 8,345,000ha
JR四国 855.2 3912670 4575 79.3% 1,880,000ha
JR九州 2273.0 13108027 5767 100% 3,675,000ha

JR北海道はJR九州と比較し、km当たりの人口で4割となった。当然乗客数は異なる。というか面積の膨大さも兼ね合わせて見ると、はるか遠くの駅まで車で向い列車に乗るということになる。

次に総移動乗客の中で移動エリア別のシェアを見る。

  JR
北海道
JR
東日本
JR
東海
JR
西日本
JR
四国
JR
九州
JR
北海道
2.3%          
JR
東日本
0.7% 25.8%        
JR
東海
0.1% 14.3% 4.2%      
JR
西日本
0.2% 23.9% 0.6% 10.7%    
JR
四国
0.0% 0.6% 0.2% 1.8% 0.8%  
JR
九州
0.0% 1.3% 0.9% 4.6% 0.2% 6.9%

シェアの上位はJR東日本管内とJR東日本とJR東海・JR西日本の間、JR西日本管内、JR九州管内の順だ。圧倒的に東海道沿線が多い。
運賃収入を考えれば、これに優等列車以外の列車移動乗客数が加わる。

ここでJR北海道とJR東海を考えてみる。

上記にあげるように日本全国の移動でも東海道線沿線の移動が圧倒的に多いという事実がある。
 そして旧国鉄を分割するときに恣意的に東海道新幹線を一体として残す必要からJR東海は少数の在来線とともに組織された。
一方JR北海道は旅客6社の中で最もkm当たりの周辺人口が少ない。つまり周辺人口による需要が少ないということになる。
 以下はJR東海・JR北海道の2016年決算からひろった数字である。

2017年3月JR東海・JR北海道決算数字
2017 JR東海 JR北海道
  総合 内新幹線 総合 内新幹線
営業収入 1兆7569億円      
営業キロ 1970.8km 552.6km 2283.2km 148.8km
鉄道収入 1兆3719億円 1兆2119億円 797億円 116億円
km当 6億9600万円 21億9300万円 3500万円 7800万円
総営業費 1兆1374億円      
鉄営業費 7849億円 未公開  1323億円 144億円
km当 3億9800万   5800万円 9700万円
鉄営業利益 5870億円 未公開  -526億円 -28億8200万円
km当 2億9800万円   -2300万円 -1900万円

資料:JR東海 JR東海ファクトシート2017

   JR北海道 JR北海道>>企業情報>>経営情報

JR東海では新幹線による鉄道収入は1km当たり21億円!である。
一方JR北海道の北海道新幹線は全線148.8kmで鉄道収入が116億円。
    つまりJR東海の東海道新幹線京都駅を出た「のぞみ」が加速ギアを入れ数十秒で東山トンネルに差し掛かるそして東山トンネルを抜けた付近からJR東海道線の山科駅が近い。JR東海ではこの距離京都-山科間(約5.5km)だけでJR北海道の北海道新幹線全線の鉄道収入を稼いでいる。
なによりもJR東海の鉄道収入1兆3719億円に比してJR北海道の鉄道運賃収入は797億円、5.%となる。
にどうしてこのようないびつな企業体になったのだろうか?

 

線路は続く 目次

2020・21年発表JR各社の決算比較

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/g/greengreengrass/20210729/20210729102747.png

各社2021年運輸収入数字後は2020年比
  • JR北海道 
    2020年3月発表決算
    運輸収入「875億円」:赤字「▲521億円
    2021年3月発表決算
    運輸収入「510億円」58.3%:赤字「▲814億円
  • JR四国
    2020年3月発表決算
    運輸収入「260億円」:赤字「▲136億円
    2021年3月発表決算
    運輸収入「146億円」56.2%:赤字「▲231億円
  • JR東海
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1兆4222億円」:鉄道部門利益額「6167億3300万円」
    2021年3月発表決算
    運輸収入「5274億円」37.1%:鉄道部門利益額「▲1819億9600万円
  • JR東日本
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1兆9692億円」:鉄道部門利益額「2540億9500万円」
    2021年3月発表決算
    運輸収入「9543億円」48.5%:鉄道部門利益額「▲6508億2700万円
  • JR西日本
    2020年3月発表決算
    運輸収入「9318億円」:鉄道部門利益額「1054億1200万円」
    2021年3月発表決算
    運輸収入「4807億円」51.6%:鉄道部門利益額「▲2476億3400万円
  • JR九州
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1652億円」:鉄道部門利益額「200億8900万円」
    2021年3月発表決算
    運輸収入「897億円」54.3%:鉄道部門利益額「▲366億1000万円
  • JR貨物
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1429億円」:鉄道部門利益額「85億500万円」
    JR貨物
    2021年3月発表決算
    運輸収入「1336億円」93.5%:鉄道部門利益額「▲90億6400万円
  • 2020年7社
    運輸収入合計 4兆7680億37百万円
  • 2021年7社
    運輸収入合計 2兆2515億28百万円  47.2%
    営業損益合計 ▲1兆2306億25百万円

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 17

線路は続く 目次

線路は続く8 採用候補者名簿の工夫

(文中敬称略)

JR7社発足にあたって新会社の採用候補者が選ばれた。責任者は職員局葛西敬之。全職員に旅客会社と貨物会社計7社の中から第一希望から第五希望までを聞き合わせた。そして勤務成績などを加え評価データとして整備した。
また並行して希望退職、国鉄を退職しJRへの採用を望まない希望者の募集も行った。その結果、予定数の2万人を上回る2万2千人に達した。そのため新会社への、「再雇用」を希望する職員を全員採用しても欠員が生じる見込みとなった。そこで井手や葛西たちは下記にあげる国鉄改革法23条の「基準を提示」に目を付けた。

日本国有鉄道改革法第二十三条  承継法人の設立委員(当該承継法人が第十一条第一項の規定により運輸大臣が指定する法人である場合にあつては、当該承継法人。以下「設立委員等」という。)は、日本国有鉄道を通じ、その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、職員の募集を行うものとする。


二人が設立委員会委員長斎藤英四郎に「委員会として採用基準を作ってほしい」と陳情すると、斎藤は「君らがその案をつくれ」と指示をした。葛西らは「不当労働行為といわれないギリギリの線」でその案を作り斎藤に渡した。
採用基準には「(国鉄在職中の)勤務状況からみて、新会社の職員としてふさわしくない者」の除外規定が入れられた。
斎藤は「組織を破壊するようなことばかりやっていた連中を、新会社で、大手を振って歩かせれば、組織は再びおかしくなる。過去の処分歴などが選考基準に入ることはいいことだ」と設立委員会で説明した。
その結果「昭和58(1983)年度から昭和61(1986)年度までの間に停職処分2回以上、または停職6か月以上の処分を1回でも受けた者、それ以外に採用基準に適合しないという理由がある者」という採用不適格基準が盛り込まれた。
 この4年間(1983-1986)に限るということになれば、組織を守るために”大転換”を図って分割・民営化路線に協力してきた動労組合員の処分は皆無に近く、国労を中心に全動労・千葉動労に不採用が集中した。(「昭和解体」牧久より)
国労と動労の分離を図り分割民営に賛成した動労に有利に働くような基準作りだったことは否めない。このことが23年という長く厳しい長期裁判の要因ともなった。参照

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 16 - 紙つぶて 細く永く


1988(昭和61)年初めの職員数は27万7000人。JR新会社の採用予定数は18万3000人。
しかし、実際は転出者や退職者も増え年度末では職員数は21万6000人まで減少し、新会社発足直前では本州の3社(東日本・東海・西日本)は合わせて9000人の欠員でスタートした。
その一方、北海道で4300人、九州で2300人が地元採用を希望し清算事業団職員として残った。その70.8%が国労員で残りが(動労とは別の)全動労・千葉動労の組合員だった。
そして「新しく」JRの社員となった職員も新しい職場でそのモチベーションの高揚もあいまって勤務についた。

 

JR7社発足

国鉄からJRへの歴史は、「昭和の解体」というテーマで語られた。

国交省に日本の鉄道史という資料がある。それによると、
1893(明治26)年度には官私合わせて約3,219キロメートルであった鉄道路線は、1906(39)年度には8,047キロメートルに達した。

f:id:greengreengrass:20180118093645p:plain

明治末の国鉄路線

轍のあった道 より

f:id:greengreengrass:20180118103153p:plain

大正末の国鉄路線

轍のあった道 より

f:id:greengreengrass:20180119112654p:plain

昭和末の国鉄路線(国土数値情報を元にBlog主が加工)


国鉄としての総延長路線は20,920kmが最長となった。

国交省「日本の鉄道史」より
    21 世紀に向けて、国土の均衡ある発展を図り、豊かさの実感できる社会を実現するために、交通関係社会資本の充実・強化が重要とされる中、特に鉄道については、環境問題及びエネルギー問題等の制約の中で期待が高まってきた。 しかし、鉄道の整備は、投下資本が多額であり、投資の回収に長期間を要するため、中長期的な見通しに立ってめざすべき鉄道の姿を示し、鉄道整備を計画的に進めていく必要があると認識されてきた。 このため、平成3年の鉄道整備基金の設立を機に、同年6月、運輸省は運輸政策審議会に「21 世紀に向けての中長期の鉄道整備に関する基本的考え方について」を諮問し、4年6月に答申が出された。 この答申は、鉄道に対する期待の高まりの中で、国鉄の分割・民営化により民間を中心として進められることとなった鉄道整備についての基本的方向を示したものであり、鉄道整備の目標を具体的に示したこと、国、地域社会及び利用者等の関係者が、それぞれ必要な負担を行い、鉄道整備の実現のために一層努力することを求めたこと等が大きな特徴である。 なお、整備目標としては、幹線鉄道について、
  • 新幹線を含む全国主要幹線鉄道の表定速度の平均を時速 100km から時速 120km 台までに向上させること。
  • 鉄道特性のある分野について、東京、名古屋、大阪、福岡または札幌から地方中核都市までを、少なくとも、概ね3時間台で移動できるようにすること。
  • 都市鉄道について、
  • 東京圏については今後 10年程度でラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として 180%程度にすることとし、大都市圏の都市鉄道については、長期的には、ラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として 150%程度にすること。
  • を提示した。 
国交省「日本の鉄道史」より
  1. 上限価格制の導入
  2. 認可対象となる運賃水準及び運賃体系は上限のみとし、事業者は上限運賃の範囲内であれば報告 のみによって運賃の設定・変更が可能であることとした。これによって、事業者の自主性の拡大及 び規制コストの軽減が図られるとともに、利用者ニーズに応じた多様な運賃設定が弾力的に行われ うることとなり利用者利益の増進が期待されることとなった。
  3. ヤードスティック方式(基準比較方式)の強化
  4. 鉄道事業の経営効率化を推進するため、例えば、線路費実績単価等の何らかの指標によって事業 者の比較を行い、非効率によるコスト増は運賃等によって回収できないとすることにより生じる事 業者間の間接的な競争を通じて効率化を推進するヤードスティック方式について、比較方法の緻密 化、適用方法の改善、経年変化による効率化努力の評価、公表データによる基準コストの算定、計 算方法及び計算結果の公表並びに対象事業者の拡大といった改良を行い、経営効率化インセンティ ブをより高める方向に強化するとともに、規制コストの軽減及び透明性の確保を図った。
  5. 原価計算方式の改善
  6. 運賃改定時の原価計算期間をこれまでの1年から複数年度(3年)へ延ばすことによって運賃改 定周期の長期化を図ること等により、規制コストの軽減と経営効率化インセンティブの強化を図っ た。
  7. 手続きの簡素化
  8. 座席指定料金の設定・変更等について地方運輸局長への権限委任範囲を拡大する等の手続きの簡 素化を行い、規制コストの軽減を図った。
  9. 情報公開の推進
  10. 運輸省及び鉄道事業者が運賃改定時等に提供すべき情報を定めた情報公開のガイドラインの策定 並びに新ヤードスティック方式による基準コストの公表等の情報公開の推進を行った。これにより 運賃改定の透明性が向上するともに、利用者等の監視を通じた経営効率化及びサービス向上等の促 進が期待された。 新しい旅客鉄道運賃制度の導入後、11年5月までに 153 社が上限価格制に移行し、このうち 47 社の約5,000区間では、従来の認可制では見られない認可された上限額を下回る廉価な運賃が新たに設定され、 また、乗継割引運賃、時差回数乗車券及び土休日回数乗車券の拡充等利用者利便を増進する多様な運賃 設定がなされる等その効果は確実に現れた。

その後、新幹線開通に伴って第三セクター移管等でJR路線としても在来線は縮小の一途をたどっている。2014年現在JR総延長20,022km(新幹線2,679km 在来線17,342km)「数字で見る鉄道」

線路は続く 目次

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

はてなブログ・グラデーションの使い方 某国営放送受信料検証

excel等ではセルの中の書式設定で背景色をグラデーションにすることは簡単にできるが、HTMLでテーブルのセルにグラデーションを描く方法がわからなかった。
いろいろWeb検索をしたところ以下の方法がわかった。
以下にある表「放送の受信形態」で「0%-100%」のセルのグラデーションは、以下のHtmlで記述している。
<td style=”background-image: linear-gradient(to right, #819FF7,white);” rowspan=”8”>0%ー100%</td>

解説(または余計なお世話) td、/td (セル開始とセル終了)
style=”background-image:(style属性で背景画像を指定)
linear-gradient (to right, #819FF7,white);”(グラデーション指定、右から左へ、淡いブルーから、白)
rowspan=”8”(垂直方向セルの数8個を統合)


今回は横方向のグラデーションなのでlinear-gradientの後に「to right」を挿入している。縦方向であればこれを省略。

某国営放送を視聴する形態にはざっと以下のような方法・形が考えられる。
登場人物は契約人と実際にサービスの提供を受ける視聴者、そして大道具として放送、小道具として視聴機器各種。この配役で以下の表「放送の受信形態」を作成した。

項「所有」は視聴者の所有非所有区分、
「特定」は契約時に住所を記入するので住所に付帯する機器類。
「視聴割合」はサービスそのものをどの程度受けるかその割合、
「判決」でA支払100%と記載した部分は判決で契約人に支払い義務が発生する。同じく判決項で「要求」は判決では触れられていないがNHKとして現在契約を要求している。
いまのところ視聴する機器全部が一斉に故障の期間は受信料不要とのこと。いいかえるならどれか一つでも正常であれば受信料支払いが必要となる。
まず契約自体は所帯単位とするらしい。すると所帯主が契約するか否かということになり、たとえば所帯の構成員だけが放送を視聴していても所帯主が契約することになる。
次に、契約主と視聴機器の所有非所有の関係が出てくる。
そして当然どれだけ視聴するかという視聴割合がある。

放送の受信形態
契約人 視聴者 所有 視聴媒体 番組 特定 視聴割合 区別 判決 媒体
故障
所有 TV 視聴 0%ー100% 1 A支払100% 確認後不要
ラジオ 2 A支払100% 確認後不要
携帯ワンセグ × 3 A支払100% 確認後不要
携帯電話 × 4 注1  
車載TVナビ × 5 要求 確認後不要
カーラジオ × 6 注2  
WebWi-Fi × 7 注1  
WebLAN 8 注1  
TV 視聴せず   9 A支払100% 確認後不要
ラジオ   10 A支払100% 確認後不要
携帯ワンセグ ×   11 A支払100% 確認後不要
携帯電話 ×   12 注1  
車載TVナビ ×   13 要求 確認後不要
カーラジオ ×   14 注2  
WebWi-Fi ×   15 注1  
WebLAN   16 注1  
非所有 TV 視聴 0%ー100% 17 A支払100% 確認後不要
ラジオ 18 A支払100% 確認後不要
携帯ワンセグ × 19 A支払100% 確認後不要
携帯電話 × 20 未言及  
車載TVナビ × 21 未言及  
カーラジオ × 22 未言及  
WebWi-Fi × 23 未言及  
WebLAN 24 未言及  
TV 視聴せず   25 A支払100% 確認後不要
ラジオ   26 A支払100% 確認後不要
携帯ワンセグ ×   27 A支払100% 確認後不要
携帯電話 ×   28 未言及  
車載TVナビ ×   29 未言及  
カーラジオ ×   30 未言及  
WebWi-Fi ×   31 未言及  
WebLAN   32 未言及  

注1)インターナット向けに同時配信予定。その場合はインターネット受信だけでも受信料同額徴集予定。双方契約の場合は1本の受信料のみ。
注2)区別6のカーラジオの場合は「契約していれば無料」であるが他の機器が無くカーラジオのみで聴取の場合は徴集と思われる。

旅館やホテル等多数の放送受信機を設置している法人はその台数分受信料を支払わなければならない、2017年3月東横インは未納している19億3千万円の受信料を支払えという判決がおりた。東横インはもちろん控訴した。
昔はNHKとしても契約の時に受信機数量を阿吽の呼吸で決めたり、ホテルの稼働率を基礎に契約台数算定をしたこともあったようだ。

www.bengo4.com


しかしビジネスホテルでそんなにテレビを見るものだろうか。

また多くの場合契約主と視聴者はまったく異なることになる。 例えば、個人宅で所帯主の意向に関係なく家族が内緒で携帯電話を契約しワンセグ携帯にて視聴していた場合も契約の対象となる。 組織なら、例えば毎日組織の機器でヘビーに視聴する人は無料でサービスを受けることが可能であり、一方で「下らん」番組は見ないと、自宅にて、ためになる「7時のニュース」しか見ないひとは少ないサービス提供で満額の支払いとなる。

 



次に視聴度数を考えてみた。

放送18時間/dayのうち1日あたり見る番組時間
平均視聴時間/日 18時間 5時間 3時間 1時間 30分 15分
1ヶ月計 540h 150h 90h 30h 15h 7.5h
視聴度数 100% 28% 17% 6% 3% 1%

放送は毎日18時間行われている。その放送をどれだけ見るのかという問題。
毎日100%、18時間(垂れ流しで)見ている場合と比してそれぞれ平均5時間/日から15分/日まで見た場合の視聴度数が上記だ。もちろん視聴しない場合は0%となる。
毎日5時間テレビを見る人が世の中にいるとは信じがたいが(いるのだろうな)、その場合でも配信された放送の28%しか視聴していない。他のメディアに比してテレビは圧倒的に情報の垂れ流し度が多くなるのだ。
余談として、ジャーナリストの間ではNHKの取材を受けた地域の取材コストはインフレになるものらしい。潤沢な資金がそうさせるのだろう。

受信料社会保険論も、社会保険の場合は保険料支払いは地方自治体や健保連であり、実際の医療サービス提供を受けるのは病院や診療所等の信頼ある別組織となるところが、徴集もサービス提供も双方同じ忖度付き公共放送という受信料制度と異なる。

greengreengrass.hatenadiary.jp

NHKはスクランブル放送を行わない理由として、「特定の利益や視聴率に左右されず、社会生活の基本となる確かな情報や、豊かな文化を育む多様な番組を、いつでも、どこでも、誰にでも分けへだてなく提供する役割」ということを上げている。
確かな情報が届けられているならまだしも、権力に立ち向かう取材をしたところで放送できないという、ていたらくを見せられているくらいだからまだまだ信頼を持てないし、このままならNHKがなくても我慢できる。

最高裁の判決はこのような事情を考慮したのだろうか。いかに国民の知る権利擁護のために「正しい公共放送」が必要としても、そのサービス享受にこれほどの多岐にわたる選択があるのなら、やはりそれは平等なサービスということを目指すべきだ。
 このような多様な受信方法がある状態で、加えて現在の忖度付き放送内容からも納得できるのは、やはり受信サービスを受けた頻度により受信料を徴収するという方法だろう。
 その方法はさまざま考えられるが一番正確で、技術的にも実現しやすいのは、一部番組でもすでに取り入れられている、双方向機能により番組視聴時間を収集する方法と考える。
この方法はインターネットに接続されている所帯に限定されるが、専用アプリをインストールし視聴結果を集計する、あるいは別途番組視聴時間記録機を開発してもいいだろう。そして集計された視聴度数に応じて支払うという、電話料金のような支払方法だ。
 インターネット経由の受信契約(上記注1)所帯向けのみのお得サービスとしてもいい。
 これなら見ただけ支払うという平等なサービスとなる。これは副次的に視聴率調査数が劇的増加につながるというおまけもあるし、各番組ディレクターも励みになるのではないか。見ない人は払わなくていいし、見た人は見た分だけ払おう。

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

青春18きっぷ弾丸周遊

乗り鉄路線巡り 金沢に続いて今回も弾丸周遊
路線は弾丸強行最長一日大回り、奈良線・関西線・城東貨物船(おおさか東線)・片町線・東海道線・山陽線・津山線・因美線・山陰線に挑戦。最下段の地図参照。
まずは京都出発

第一列車 7時24分 609M 奈良行 奈良8時40分

ここから大阪経由尼崎へは関西線と学研都市線がある。愛用のhyperDIAでは8時46分発関西線大阪行きを選んだ。しかし少しでも路線数をこなしたいのでここは尼崎行き直通快速を利用する。この快速は関西線久宝寺経由城東貨物線から放出、東西線で尼崎まで行く。

第二列車 奈良8時43分 7101M 尼崎行 尼崎9時52分

f:id:greengreengrass:20180108085308j:plain
奈良駅は少し変わった構造をしている。2番ホームに入る列車は両側がホームとなっている。

f:id:greengreengrass:20180108090509j:plain

ウィキペディアhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%88%E8%89%AF%E9%A7%85より

あさ8時なので3階ホームには寒風が吹いていた。そして乗客を降ろす側と乗る側両方のホームに向けてドアが開いた。
この車両は1車両4ドアで両側8ドアが開きそこから寒風が吹きこんできた。
乗客も少ないので両側のドアを開ける必要はなさそう。なぜこんなに広く開放するのだろうと不親切な対応を嘆いた。
列車は関西線で久宝寺まで走る。その間「郡山」「大和小泉」「法隆寺」「王寺」と停車するが、土曜日だからか乗ってくる人は少ない。久宝寺駅ではホームに列ができていたが、その通勤客達も、直通で大阪行きに乗るのだろう、だれも乗ってこなかった。
列車は城東貨物線を走る。この貨物線は久宝寺-放出区間が2008年から旅客運送も開始されている。その城東貨物線(おおさか東線)はレール音が小気味よかった。下記レール音(向いの乗客話し声が少し入ってます)を聞きながら続きをどうぞ

soundcloud.com

列車は放出(「はなてん」と読みます 難読駅)から片町線東西線に入り尼崎まで。松の内だからかその間やはり乗客は少なかった。

 

尼崎からは姫路まで

第三列車 尼崎10時5分 3229M姫路行 姫路11時3分

この列車は満員で当初座れなかった。三ノ宮で降りる乗客があり座席確保。

f:id:greengreengrass:20180108101144j:plain

姫路では4分の待ち合わせになるのでまっ先に下車、向いのホームに並ぶ。

第四列車 姫路11時7分 959M播州赤穂行 相生 11時26分

未踏線の赤穂線まわりも考えたが、岡山乗り継ぎ時間がぐっと短くなり休憩をとれないのでやめた。

第五列車 相生11時28分 1315M岡山行 岡山12時38分

岡山駅で駅そば(うどん)昼食、そして吉備団子。

第六列車 岡山13時5分 3938D快速ことぶき津山行 津山14時11分

 

f:id:greengreengrass:20180108101816j:plain

夕食は鳥取で駅弁購入車内で取ると考えているが、念のため岡山でばら寿司を買った。でも食べちゃった。これが旅のだいご味。
津山は寅さんのロケ地、そして津山には機関区があった。

www.tsuyamakan.jp

f:id:greengreengrass:20180108103424j:plain

駅頭にはC11が展示してある

第七列車 津山14時38分 680D智頭行 智頭15時47分

そしてあった、寅さん最後の映画「寅次郎紅の花」冒頭の駅 美作滝尾 停車は1分

f:id:greengreengrass:20180108103529j:plain

f:id:greengreengrass:20180108105715j:plain

雪景色はここだけだった

この列車は岡山鳥取県境のトンネル物見トンネルに係ると下りとなり、トンネルの中で速度を速めた。あとで調べるとこの区間最高速度は95kmとなっている。でも結構速かった。下記は速度音(トンネル内の音がピークをオーバーしているのでご注意)

soundcloud.com

第八列車 智頭15時54分 658D鳥取行 鳥取16時44分

f:id:greengreengrass:20180108110204j:plain
f:id:greengreengrass:20180108105643j:plain
鳥取で39分の待ち合わせ。駅のショッピング街が新しいので鳥取駅が新しいと思っていたが、駅自体は1978年の高架化と同じだった。
(ということは寅さん44作と変わっていない)

www.tora-san.jp


夕食の駅弁を求めるがこの時間になると売り切れのものもあり選択肢は少ない。駅を出発する頃に外はすっかり暮れていた。

第九列車 鳥取17時23分 542K浜坂行 18時7分浜坂

ビールと駅弁で車内夕食 2度目のだいご味だ

第十列車 浜坂18時24分 184D豊岡行 豊岡19時30分

もうすっかり暗くなり期待した日本海は見えない。
ここで出発時列車遅延となった。単線区間で下り列車が鹿を発見し、徐行運転の結果数分遅れて到着するという。
車掌が検札の時に、福知山からの連絡か否かを各乗客に聞いていた。ほぼ全員が京都までの乗り継ぎだった。
じつは福知山での接続が11分しかない。この数分が拡大するようだと帰れない(かな)。
 しかしその後列車は鹿を見ることもなく順調に走り、和田山で遅れも取り戻した!
閑散ダイヤだからか? 遅れた列車が遅れを取り戻すという経験は少ない。

第十一列車 豊岡19時33分 446M福知山行 福知山20時57分

福知山からは結構人が乗ってきた。ほぼ満席。

第十二列車 福知山21時8分 1154M快速園部行 園部22時15分

青春18きっぷ有効期間この辺りでは京都方面へ青春18きっぷで「帰る」人が多い。

第十三列車 園部22時17分 286M京都行 京都22時58分


回った経路

f:id:greengreengrass:20180108203545p:plain

通常運賃9830円 青春18キップ使用2370円

ちなみに当初は逆コースも考えた。帰りを本数の多い山陽線・東海道線とすれば途中時間に余裕が生まれるのじゃないかと。しかし組んで見るとだめだった。
鳥取発智頭行きの普通は、鳥取発11時58分から14時10分までない。そして京都から鳥取に12時前に着く連絡は特急でさえ組めなかった。

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」

ある公立高等学校の変遷10 「学校」上映中止

かって鴨沂高校では各種の文化的な催しや講演会が開催されその中にヘレンケラーの講演会というものも行われていた。そんな高校での下記記事がどうも気になるので続き。

 「京都・鴨沂高」毎日新聞1994年記事  京郡府立鴨沂高校京都市上京区、小谷嘉明校長) のPTAなどが企画した 山田洋次監督の文部省特選映画「学校」の上映・講演会をめぐり、小谷校長が「山田監督は今年四月の京都府知事選で革新候補を 応援した」という理由で、同校講堂の会場使用を断っていたことが、三十一日分かった。
映画上映は見送られ、 講演会だけ別会場で閧いたが、 関係者から「催しの内容も検討せず、施設借用を拒否したのはおかしい」と批判の声が上がっている。
 映画上映・講演会は、PTAとPTAOB会、前身の府立京都府一高女同窓会の三者が主催。 これまでも作家の水上勉氏の講演会を行うなど。年一回の恒例行事として実施してきた。
 関係者によると、 今年は一年生を対象にした山田監督の講演会と他の生徒やPTAらにも呼びかけた 「学校」上映会を五月二日に計画講堂の会場借用を学校側に申し入れた。
 ところが、小谷校長が四月中旬、知事選の話を持ち出し反対し、講堂使用を許可しなかった。 代替の広い会場を確保出来なかったため 上映会は中止・市内の別会場で同日、講演会だけ行った。
 山田監督は四月十日投開票の京都府知事選で落選した革新候補を推薦する団体のピラなどに推薦人として名前を連ねていた。
 小谷校長は「山田監督は政治的な主義主張を鮮明にしており、生徒に与える影響などを考えた」と話している。

参照 http://coboon.jp/memory.of.ouki/archives/author/memory-of-ouki/page/43

「学校」から見える教育

調べるとその後映画上映が出来なかった山田洋次監督は2000年に学校についての本を発表している。以下その中から

その学校で目にしたのは予想もしないものでした。生徒の年齢はさまざま、昼間の仕事着そのままのような生徒も多い。匂うような生活感がある。教室の雰囲気も決して暗くない。
リタイアした老人もいれば在日韓国・朝鮮人の老婦人、中国からの引揚者、ベトナム人、身体や知能に障害のある人も含めてのびのびとして楽しげに熱心に勉強している。管理されているとか規則に縛られているといった圧迫感がまるでない。進学する生徒はほとんどいなかったから受験という重石がない。校則はまったくといっていいくらいない。服装検査などあるはずがない。ペンキだらけの服を着た生徒もいれば化粧をしてマニキュアした娘もいる。中には妊娠して大きなおなかをした女生徒もいたりする。学校の帰り道に先生を誘って一杯やるなんてことはしょっちゅうだし、廊下の一隅に喫煙所があったりする。
教師もまたほがらかで仕事をたのしんでいるように思えました。校長とか教頭とかいった管理職(学校の現場に管理職という言葉があるのはとても納得いかない)のいない職員室の空気は実に自由でした。

東京都の公立学校の新任教師はひとつの学校に8年以上は継続して勤務できない、という異動要綱があった。1か所に十年も二十年も継続して勤務することからくる弊害はあるかもしれない。また経験を学びあうための交流も必要であろう。しかし夜間中学の場合は異なる。教師も特別なノウハウを持たなければならないし、何より夜間中学にたいする愛情を持っていなければ到底つとまる仕事でない。この学校の卒業生たちは、昼間の中学校の生徒にはない、深い愛着を学校に対してもっているから、卒業して何年もたってから学校を訪問することが多い。身寄りや親しい友人が少ない淋しい境遇の人も少なからずいる。そんな生徒が何かつらいことがあったときに、ぶらりと母校を訪れたくなるときもある。そのようなときに知っている先生、古だぬきのような教師がいなきゃいけない。だから夜間中学の教師であることに喜びと生きがいを抱いている人たちは人事異動の話があるたびに教育委員会と喧嘩しなければならなかった。
Mさんの場合もそうでした。十年で異動といわれたのですが断り続けました。
それを知った生徒たちがMさんを応援することになった。学校の近くの駅に立ち署名運動をしたり、仕事を休んで教育委員会に嘆願に行ったりした。
 しかし、そのことがだんだんMさんに負担になってきた。つまり自分を転勤させまいと一生懸命寒い風に吹かれながら駅前で署名活動をしてくれているこの人たちはみなアルバイトやパート、あるいはいまにもつぶれそうな工場で働いている。それに比べて自分は公務員として彼らの誰よりも安定した地位にいる。その自分がみんなに守られているのはおかしい。守られなければならないのは自分ではなく、彼らではないか?
そして彼らに自分の考えを正直に告げ、生徒たちの気持ちをおさめてもらい、転勤を承諾したのです。

この講演会を拒否した校長はこのような自由な雰囲気がいやだったんだ。「個性の確立に努めるとともに、社会について広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと」その教育を拒否したのだ。そして自身は教師ではなくすっかり管理職になったんだ。

 

世の中の動き

1971(昭和46)年、中央教育審議会が、我が国戦後教育政策の中で初めて「個性尊重=多様化」路線を打ち出した。 「初等・中等教育は、人間の一生を通じての成長と発達の基礎づくりとして、国民の教育として不可欠なものを共通に修得させるとともに、豊かな個性を伸ばすことを重視しなければならない。そのためには、人間の発達過程に応じた学校体系において、精選された教育内容を人間の発達段階に応じ、また、個性の特性に応じた教育方法によって、指導できるように改善されなければならない」
この多様化路線流れはその後も維持拡大され1985(昭和65)年臨時教育審議会は第一次答申で次の様な指摘をした。
「我が国の著しい経済発展は、教育の量的拡大をもたらすとともに、学歴偏重の社会的風潮を一層助長した。このため、いわゆる一流企業、一流校を目指す受験競争が過熱し、親も教師も子どもも、いや応なく偏差値偏重、知識偏重の教育に巻き込まれ、子どもの多様な個性への配慮に乏しい教育になっている」
すなわちこれは「子どもの個性を配慮するならば、受験競争に適性のない子どもは早い時期からそのようなルートから外してあげるべきだ」ということになる。

「学校」から見える教育

映画「学校Ⅱ」は北海道の雨竜という町にある高等養護学校をモデルにし、実際にその学校で大勢の生徒、先生、職員たちの協力でロケーションができた。その学校にかって本間さんという校長先生がいた。この学校の先生たちは本間さんを慕っていました。本間さんは障害児教育一筋に生きてきた人です。北海道の人で、父親は早くに亡くなって母親が肉体労働をして大勢の子どもたちを育ててくれた。だから早く一人前になってお金を稼いで、母を楽にさせたいとずっと思っていた。工業高校を出てすぐに働き始めたのですが、あるとき勤め先が倒産してしまった。そこで学校時代のクラスメートで聾学校の教師をしていた友人に就職の相談にいった。
 ちょうど教員会議の最中で、本間さんは聾学校の校庭でぶらぶらしていた。そこには授業の終わった生徒たちが遊んでいる。本間さんはいつのまにかその生徒たちと遊んでいた。
 ところが教員会議を行っている部屋の窓から、聾学校の校長がその光景をじっと見つめていたのだそうだ。そして教員に尋ねた。「いまあそこで子供たちと遊んでいる見かけない青年はだれかな」そして本間さんの友人が「あれは私の友達で、就職の相談で訪ねてきたんです」というとその校長はかれに「どうだろう。あの青年、うちの学校で働く気はないかな。聞いてみてくれ」といったのだそうです。その時代のことだから、おそらく代用教員という形があったのかもしれない。とにかくその聾学校の校長は一目で、窓越しに、聾唖の子どもと遊んでいる姿を見ただけで、「この青年は障害児教育にふさわしい人材だ」ということを見破ったわけです。

青文字段落 山田洋次:「学校」が教えてくれたこと:より抜粋
教育についての見識が鋭い。まさしくこのよう監督が手塩にかけて育てた教育界の映画上映こそ「高校」という学校でされるべきなのではなかったか。
シリーズ「変遷9」で書いたように「府一」には「鴨沂会」という卒業生組織がある。立派な会館を持ち、公益財団法人となっている。鴨沂高校全体同窓会事務局も鴨沂会館にあるようだ。しかし新制鴨沂高等学校との距離は微妙だ。組織は一体となっていない。
京都府立第一中学、一中同窓会は洛北高校同窓会と「京一中洛北高校同窓会」として一体になっている)

周囲の先輩を含めた卒業生に聞くと、ほとんどが校舎建て替えについてすら関心を示さない。もはや母校を懐かしく思う気持ちさえ失われたのかもしれない。2017年秋の総合同窓会も17000人強の登録会員の中100人弱の集まりだったと聞く。
「鴨沂」名付け親の京都府立第一高等女学校を1.0とするなら1970年ころが鴨沂高校2.0、そしてそれ以降特に制服採用以降は鴨沂高校3.0と校舎とともに変節した。このことは間違いないようだ。
鴨沂の教育史記録に邁進された旧教職員の会とともに、老兵は死なずただ立ち去るのみか。
ぶらりと母校を訪れたくなる卒業生が何人いるのか・・

ある公立高等学校の変遷9 変節といってもいい変化 -へ戻る  紙つぶて 細く永く

ある公立高等学校の変遷 資料2 高校三原則と進学率 - へ戻る 紙つぶて 細く永く

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」