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日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 17

線路は続く8 採用候補者名簿の工夫

(文中敬称略)

JR7社発足にあたって新会社の採用候補者が選ばれた。責任者は職員局葛西敬之。全職員に旅客会社と貨物会社計7社の中から第一希望から第五希望までを聞き合わせた。そして勤務成績などを加え評価データとして整備した。
また並行して希望退職、国鉄を退職しJRへの採用を望まない希望者の募集も行った。その結果、予定数の2万人を上回る2万2千人に達した。そのため新会社への、「再雇用」を希望する職員を全員採用しても欠員が生じる見込みとなった。そこで井手や葛西たちは下記にあげる国鉄改革法23条の「基準を提示」に目を付けた。

日本国有鉄道改革法第二十三条  承継法人の設立委員(当該承継法人が第十一条第一項の規定により運輸大臣が指定する法人である場合にあつては、当該承継法人。以下「設立委員等」という。)は、日本国有鉄道を通じ、その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び職員の採用の基準を提示して、職員の募集を行うものとする。


二人が設立委員会委員長斎藤英四郎に「委員会として採用基準を作ってほしい」と陳情すると、斎藤は「君らがその案をつくれ」と指示をした。葛西らは「不当労働行為といわれないギリギリの線」でその案を作り斎藤に渡した。
採用基準には「(国鉄在職中の)勤務状況からみて、新会社の職員としてふさわしくない者」の除外規定が入れられた。
斎藤は「組織を破壊するようなことばかりやっていた連中を、新会社で、大手を振って歩かせれば、組織は再びおかしくなる。過去の処分歴などが選考基準に入ることはいいことだ」と設立委員会で説明した。
その結果「昭和58(1983)年度から昭和61(1986)年度までの間に停職処分2回以上、または停職6か月以上の処分を1回でも受けた者、それ以外に採用基準に適合しないという理由がある者」という採用不適格基準が盛り込まれた。
 この4年間(1983-1986)に限るということになれば、組織を守るために”大転換”を図って分割・民営化路線に協力してきた動労組合員の処分は皆無に近く、国労を中心に全動労・千葉動労に不採用が集中した。(「昭和解体」牧久より)
国労動労の分離を図り分割民営に賛成した動労に有利に働くような基準作りだったことは否めない。このことが23年という長く厳しい長期裁判の要因ともなった。参照

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 16 - 紙つぶて 細く永く


1988(昭和61)年初めの職員数は27万7000人。JR新会社の採用予定数は18万3000人。
しかし、実際は転出者や退職者も増え年度末では職員数は21万6000人まで減少し、新会社発足直前では本州の3社(東日本・東海・西日本)は合わせて9000人の欠員でスタートした。
その一方、北海道で4300人、九州で2300人が地元採用を希望し清算事業団職員として残った。その70.8%が国労員で残りが(動労とは別の)全動労・千葉動労の組合員だった。
そして「新しく」JRの社員となった職員も新しい職場でそのモチベーションの高揚もあいまって勤務についた。

 

JR7社発足

国鉄からJRへの歴史は、「昭和の解体」というテーマで語られた。

国交省に日本の鉄道史という資料がある。それによると、
1893(明治26)年度には官私合わせて約3,219キロメートルであった鉄道路線は、1906(39)年度には8,047キロメートルに達した。

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明治末の国鉄路線

轍のあった道 より

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大正末の国鉄路線

轍のあった道 より

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昭和末の国鉄路線(国土数値情報を元にBlog主が加工)


国鉄としての総延長路線は20,920kmが最長となった。

国交省「日本の鉄道史」より
    21 世紀に向けて、国土の均衡ある発展を図り、豊かさの実感できる社会を実現するために、交通関係社会資本の充実・強化が重要とされる中、特に鉄道については、環境問題及びエネルギー問題等の制約の中で期待が高まってきた。 しかし、鉄道の整備は、投下資本が多額であり、投資の回収に長期間を要するため、中長期的な見通しに立ってめざすべき鉄道の姿を示し、鉄道整備を計画的に進めていく必要があると認識されてきた。 このため、平成3年の鉄道整備基金の設立を機に、同年6月、運輸省は運輸政策審議会に「21 世紀に向けての中長期の鉄道整備に関する基本的考え方について」を諮問し、4年6月に答申が出された。 この答申は、鉄道に対する期待の高まりの中で、国鉄の分割・民営化により民間を中心として進められることとなった鉄道整備についての基本的方向を示したものであり、鉄道整備の目標を具体的に示したこと、国、地域社会及び利用者等の関係者が、それぞれ必要な負担を行い、鉄道整備の実現のために一層努力することを求めたこと等が大きな特徴である。 なお、整備目標としては、幹線鉄道について、
  • 新幹線を含む全国主要幹線鉄道の表定速度の平均を時速 100km から時速 120km 台までに向上させること。
  • 鉄道特性のある分野について、東京、名古屋、大阪、福岡または札幌から地方中核都市までを、少なくとも、概ね3時間台で移動できるようにすること。
  • 都市鉄道について、
  • 東京圏については今後 10年程度でラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として 180%程度にすることとし、大都市圏の都市鉄道については、長期的には、ラッシュ時の主要区間の平均混雑率を全体として 150%程度にすること。
  • を提示した。 
国交省「日本の鉄道史」より
  1. 上限価格制の導入
  2. 認可対象となる運賃水準及び運賃体系は上限のみとし、事業者は上限運賃の範囲内であれば報告 のみによって運賃の設定・変更が可能であることとした。これによって、事業者の自主性の拡大及 び規制コストの軽減が図られるとともに、利用者ニーズに応じた多様な運賃設定が弾力的に行われ うることとなり利用者利益の増進が期待されることとなった。
  3. ヤードスティック方式(基準比較方式)の強化
  4. 鉄道事業の経営効率化を推進するため、例えば、線路費実績単価等の何らかの指標によって事業 者の比較を行い、非効率によるコスト増は運賃等によって回収できないとすることにより生じる事 業者間の間接的な競争を通じて効率化を推進するヤードスティック方式について、比較方法の緻密 化、適用方法の改善、経年変化による効率化努力の評価、公表データによる基準コストの算定、計 算方法及び計算結果の公表並びに対象事業者の拡大といった改良を行い、経営効率化インセンティ ブをより高める方向に強化するとともに、規制コストの軽減及び透明性の確保を図った。
  5. 原価計算方式の改善
  6. 運賃改定時の原価計算期間をこれまでの1年から複数年度(3年)へ延ばすことによって運賃改 定周期の長期化を図ること等により、規制コストの軽減と経営効率化インセンティブの強化を図っ た。
  7. 手続きの簡素化
  8. 座席指定料金の設定・変更等について地方運輸局長への権限委任範囲を拡大する等の手続きの簡 素化を行い、規制コストの軽減を図った。
  9. 情報公開の推進
  10. 運輸省及び鉄道事業者が運賃改定時等に提供すべき情報を定めた情報公開のガイドラインの策定 並びに新ヤードスティック方式による基準コストの公表等の情報公開の推進を行った。これにより 運賃改定の透明性が向上するともに、利用者等の監視を通じた経営効率化及びサービス向上等の促 進が期待された。 新しい旅客鉄道運賃制度の導入後、11年5月までに 153 社が上限価格制に移行し、このうち 47 社の約5,000区間では、従来の認可制では見られない認可された上限額を下回る廉価な運賃が新たに設定され、 また、乗継割引運賃、時差回数乗車券及び土休日回数乗車券の拡充等利用者利便を増進する多様な運賃 設定がなされる等その効果は確実に現れた。


その後、新幹線開通に伴って第三セクター移管等でJR路線としても在来線は縮小の一途をたどっている。2014年現在JR総延長20,022km(新幹線2,679km 在来線17,342km)「数字で見る鉄道」

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