紙つぶて 細く永く

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日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 21

線路は続く 目次

線路は続く12 道路維持費について

鉄道存廃の判断基準とは

国交省HPに以下のような流通経済大学 板谷和也教授の意見が掲載されている。
私の考えを青色で書き込んでみた

この文章には「地域公共交通シンポジウムin旭川旭川グランドホテル 2017/06/12」とクレジットがある。

鉄道存廃の判断基準なぜ、鉄道でなければならないと思うのか
  • なんとなく「地域の衰退」につながりそう• 鉄道がない街は衰退してしまうのではないか

    はっきりしたデータではないがもちろんないよりはある方が有利とはいえる。一例(https://www.projectdesign.jp/201605/pn-fukui/002870.php

  • JRの努力が不足していそう• まだコスト削減の余地があるのではないか

    日高線は高潮被害で不通になっている区間の護岸工事をJRがやるべきことになっている。なぜ国土保全のことまでやらなければいけないのか」等過当な保守もあることは事実だ。

  • 国が無責任だ• 社会の基本的なインフラだから、赤字かどうかに関わらず維持されるのが当然ではないか

    憲法にうたわれているように交通弱者にも「移動の自由」は認められているということからも適正な交通手段は維持されるべき。http://greengreengrass.hatenadiary.jp/entry/2017/04/10/112401

  • 鉄道の利用が減少したことが原因で維持困難線区が発生

    鉄道利用が減少したその原因は、他に価格比較で割安な移動手段(主に高速道路)が調整もせずに作られたことも大きい。

  • 質問:鉄道利用が減るのは悪いことなのか?•回答:誰も悪くない
  • 交通状況の変化は当然のこと• より便利な移動手段が使えるようになったら、誰でもその移動手段を使うようになる • 利用が減った交通手段は「役割を終えつつある」だけ

    道路は作れば採算度外視。一方鉄道は「受益者負担」という名のもとに個別に採算を要求される。公平なルールによって判断されていない。

国鉄が分割民営化に至った要因
  • 労使関係の悪化
  • 「働かない」職員が多数存在

    国鉄最後の社員は27万7000人。JR発足時は21万6000人となり初年度から黒字となった。

  • 巨額の債務
  • 新線建設の資金を多額に高利で調達

    この部分は政治が関与した問題

  • 経営権不在• 新設建設をするかどうかや運賃水準などを自力で決められない

    同じく政治が関与した問題

分割民営化が必要だった理由
  • 国鉄のままでは経営不能

    同じく政治が関与した問題

  • 弾力的な運賃設定、ダイヤ設定、職員運用、関連事業の充実、地域の特色を生かした経営のいずれも、国鉄では不可能

    当時の国鉄にはいえるが、「国営鉄道」そのものについて不可能か否か根拠薄弱

  • 内部補助による非効率• 黒字路線の利益が赤字路線の維持に使われてしまう

    内部補助は重要な問題。これを行わなければJR東日本でも採算がとれない路線は廃線となり、行く末は首都圏路線網と東北線等の幹線くらいとなる。他のJRでも在来線は大部分赤字となり残るのは大都市近郊と新幹線くらい。

「国」が鉄道路線を維持する論理
  • 幹線ネットワークを構成する路線については、国が維持する必要がある
  • 理由:その路線が存在することで、国全体が利益を享受できるから
  • したがって、少なくとも道外に利益が波及しない路線については、国が支援するべきではない

    鉄道は路線網であり、北海道の路線を考えても道外からの乗客が0という路線は少ないのではないか

  • こうした路線は、本来なら鉄道で維持すべきではあるが、利用が少ない場合はバスの方が効率的

    一般的なバスは鉄道よりも運輸効率は悪化する。バス路線は最終的には赤字となり廃止となる例が多い。

  • 国負担:北海道以外の46都府県の住民が、北海道のために金を出すということ 「クニ」という実態のない概念が負担するのではない• したがって、負担させる論理が不可欠
  • ガソリン税の一部を鉄道への補助に用いるというのは、自動車ユーザーが鉄道を助けるということ

    ユーザーではなく国が強制的に税として徴収し、鉄道幹線と並行する自動車道を作ってきた。そして環境負荷の多い自動車へとユーザーを導いたことに対する是正という面を考えたい。

  • 北海道負担:道民が負担• 鉄道の走っていない市町村民も負担するということ• たとえば、留萌線を維持するために、釧路や根室の人が負担できますか?

    下記にあげたように、国全体で全線路保守(例として東海道新幹線の鉄道収入をあてる)という考え。

 

北海道国道40号線の維持費について再考してみた。

まずは一般道・高規格道路を分析
以下平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査から見てみると、このルートには一般国道と高規格道のバイパスがあることがわかった。
国道40号線と名寄美深道路、幌富バイパス、さらに豊富バイパス合計300.1km(内高規格道路49.6km、一般国道250.5km)の車両通行量を求める。

平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査

これによると国道40号線全線の1日当たり総通行車両は466,128台、各調査地点の平均をとると5684.、最低通過台数地点は965台となっている。


観測地点82か所の合計車両通行量は466,128台。最大数量23,303台、最小965台、平均5,685台と計測された。「線路は続く」前々回( 日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 19 - 紙つぶて 細く永く )で求めた国道40号の維持費246km 27億45百万円を、高規格道路49.6km、一般国道250.5kmに合わせて再計算する。
そして求めた表が以下になる。

北海道開発局道路補修予算 757億9100万円
北海道開発局国道40号線維持費コスト
全線 300.1km   この区間は4.4%  3347.3 11.16
内高規格 49.6km 16.5% 高規格 553.2  
一般 250.5km 83.5% 一般国道 2794.06  
        単位百万円

年間維持コストは33億4730万円となった。

平均車両/日 1年換算 維持コスト 1台当たり
5685台 2,074,843台 33億4877万円 1613.14円

国道40号線年間平均通過車両は(a5685台×365)2,074,843台、これで徐する33億4730万円/2074842.5台は1613円となる。
つまり国道40号線この区間旭川稚内)の通行により1台・1回あたり平均1613円の通行コストが係っていることになる。
 自動車はこの道路建設や維持に係るコストを年間5兆円に上るガソリン税自動車取得税等で別途支払っている。
九州の自動車や名古屋の自動車が、たとえ北海道の高規格道路を使わなくても雪害対策や道路整備のコストは道路特定財源を使って負担される。
このようなシステムは鉄道を考えた場合に充分生かされていない。あくまでもJR6社は地域環境が異なっても当然のごとく6社が自社のエリアでの維持費を捻出する。

仮称:鉄道特定財源

単位百万円

JR7社の決算一覧
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR北海道 20
16
総合 2,568.7 76,847 29.9 125,127 49 -48,280 -18.8 7,065
20
17
総合 2,283.2 79,758 34.9 132,334 58 -52,576 -23.0 7,003
新幹線 148.8 11,653 78.3 14,435 97 -2,782 -18.7
JR東日本 20
16
総合 7,458.2 1,805,000 242.0 1,647,300 221 157,700 21.14 57,580
新幹線 1,194.2 578,200 484.2        
20
17
総合 7,457.3 1,816,200 243.5 1,680,100 225 136,100 18.25 57,580
新幹線 1,194.2 584,300 489.3        
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR東海 20
16
総合 1,970.8 1,357,900 689.0 800,300 406 557,600 282.9 18,164
新幹線 552.6 1,192,000 2,157.1        
20
17
総合 1,970.8 1,371,900 696.1 784,900 398 587,000 297.9 18,054
新幹線 552.6 1,211,900 2,193.1        
JR西日本 20
16
総合 5,007.1 850,000 169.8 817,000 163 33,000 6.6 29,680
新幹線 812.6 437,200 538.0        
20
17
総合 5,008.7 849,600 169.6 820,600 164 121,700 24.3 29,152
新幹線 812.6 434,600 534.8        
JR四国 20
16
全体 855.2 26,982 31.6 37,895 44 -10,913 -12.8 2,507
20
17
全体 855.2 27,269 31.9 39,178 46 -11,909 -13.9 2,450
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
JR九州 20
16
総合 2,273.0 180,900 79.6 191,400 84 -10,500 -4.62 9,060
新幹線 288.9 49,362 170.9          
20
17
総合 2,273.0 176,400 77.6 150,700 66 25,700 11.31 8,978
新幹線 288.9 50,100 173.4        
JR貨物 20
16
全体 7,967.9 136,366 17.1 139,723 18 -3,357 -0.4 5,602
20
17
全体 7,961.8 136,934 17.2 136,406 17 528 0.1 5,529
  年度 区別 営業km 鉄道収入 /km 鉄営業費 /km 鉄営業利益 /km 社員
7社合計 20
16
  30,374 4,433,995   3,758,745   675,250 22.2 129,658
20
17
  27,810 4,458,061   3,748,045   710,016 25.5 128,746
新幹線 20
16
  2,848.3 2,256,762 792          
20
17
  2,997.1 2,292,553 765          

決算資料HPは末尾に記載


JR7社合計では2016年度6752億5000万円、2017年度7100億1600万円の鉄道営業利益があった。つまりJR北海道JR九州・JR貨物まで含めた全社では黒字なのだ。この発想からは様々な方策が考えられる。
 政策当局はどうしても「国鉄分割の失敗」を認めたくないようだ。
自動車に倣えば、新幹線の鉄道収入を全国6社のJRで共有するという方法も可能ということだ。

仮称「鉄道特定財源一案として新幹線特急料金相当部分を「鉄道特定財源」もどきと見なし、共有する。
 試算したところ東海道新幹線部分での各駅間運賃+特急料金に占める特急料金のシェアは平均47%、同じく東北新幹線プラス東海道新幹線各駅間運賃+特急料金に占める特急料金の平均は46%だった。
 早特割引等を換算し、特急料金収入を新幹線鉄道収入の少なく見積もり40%と仮定した。
2016年度の新幹線鉄道収入は2兆2925億5300万円、この40%は9070億2120万円これにあたる部分を鉄道線路保守資金として全路線に活用する。

国交省の試算によるJR各社の「雪量」比較は以下のようになる。


JR北海道の7508に対しJR東海は451、JR四国は0である。当然立地によって雪害も大きく異なる。

f:id:greengreengrass:20180216112305p:plain

http://www.mlit.go.jp/common/001195227.pdf より加工


JR北海道では2017年度雪に対する冬季設備投資が4億9000万円(新幹線1億2000万円 在来線3億7000万円)、冬季対策費が44億5000万円、合計49億4000万円係ったという。(JR北海道「お客様相談室」による)
鉄道収入797億5800万円の鉄道収入に対して雪害対策が49億4000万円、これは6.2%になる。

雪害のJR北海道や近辺人口の少ない過疎地を走る列車の路線保守にも、全国鉄道収入を合計した鉄道収入計から必要に応じて費用を賄う。まさに道路特定財源の鉄道版だ。
諸外国では鉄道路線の維持に向けて、端的に税金で補助する方策等財産としての鉄道路線に思いをはせている。

JR北海道 http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/mi/kessan/28/pdf/00_jrhokkaido.pdf
JR東日本 http://www.jreast.co.jp/investor/guide/pdf/201703guide1.pdf
JR東海 http://company.jr-central.co.jp/ir/annualreport/_pdf/annualreport2017.pdf
JR西日本 http://www.westjr.co.jp/company/ir/library/fact/pdf/2017/fact2017.pdf
JR四国 http://www.jr-shikoku.co.jp/04_company/kessan/30_stage.pdf
JR九州 http://www.jrkyushu.co.jp/company/ir/library/earnings/__icsFiles/afieldfile/2017/05/12/2016.4q.kessansetsumei_2.pdf
JR貨物 http://www.jrfreight.co.jp/common/pdf/kessan/h27_kessan.pdf

 

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