紙つぶて 細く永く

右の「読者になる」ボタンをクリックし読者なっていただくと記事更新時にお知らせが届きます。

}

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 32 線路は続く18

線路は続く 目次

鉄道と他の交通機関

そもそも鉄道等交通機関にはどのような特徴があるのだろうか。

そしてその中で鉄道としての存在意義はどのあたりにあるのか、それを深く掘り下げたい。

 まず下記は地方鉄道についての言及であるが、鉄道の特徴を強く指摘している文章となっている。

鉄道が必要な理由、鉄道が存在することは、地域にとってどのようなメリットがあるのか、他の交通機関と比較すると次のように考えられる。
他地域との相互交流や連携が一層重要なものとなる中で、交通基盤を整備することは、歴史や文化といった固有の資源をPRし地域の魅力を高めることと並んで大切なことである。
したがって、その立ち後れが地域の衰退を招くことは容易に想像される。そして、子供や高齢者など誰もが利用でき、いくつもの駅や路線を介し面的な広がり・ネットワークを有するのが鉄道の特色だ。
他の交通機関では、利用できる対象・年齢層や交流できる地域が著しく限定されてしまう。
また、航空機や高速バスは鉄道の競合交通機関として発展を遂げているが、ともに2地点間を最短距離で結ぶ交通機関であり、その中間に位置する町や地域は全く無視されている。
その点、鉄道であれば、人口や規模の大小、遠近にかかわらず地域と地域を結び、常に相互に交流・来訪が可能であることなどが特色といえる。
現実には、乗換えや異なる路線間では別々に運賃を払うといった労が伴うし、何より鉄道では結ばれていない地域も存在する。だが、そのような点を差し引いても、周辺の地域とのつながりが常時維持されているということに、大きな意味があるのではないだろうか。
鉄道の駅は電車に乗る場所としてだけでなく、一般に都市や地域の中心近くでまちの核として機能している。その点、空港やインターチェンジ、新幹線単独の駅等は、地域の中心にはなく数キロ以上離れているのが一般的である。
また、バス停やバスターミナルは、地域の中心にはあるが施設の規模が小さいことや機能が充実していないことなどが指摘できよう。
鉄道の駅は地域の拠点として、いわば地域の顔や交流空間、あるいはランドマークとしての機能を有していると考えられる。
加えて、駅は何十年、ときに百年以上もほぼ同じ場所にあるものだ。人が行き交い活気があふれる場所であり、実際に鉄道を利用していた、あるいは今も利用している住民もいることだろう。そのため、誰もが親近感を抱いたり、安心して時間を過ごせしたりできる対象としてとらえられるのではないだろうか。
鉄道や駅は、地域資産あるいは地域資源と言っても過言ではないだろう。

鉄道が地域にもたらすもの
鉄道の存在 駅の存在
  • 地域間連携や相互交流の推進
  • 他地域とのつながりの維持
  • 地域の拠点形成
  • 地域のランドマークの役割
  • 安心して時間を過ごせる場所

地方における鉄道 数値化が困難な分野での存在意義/地方公共交通に明日はあるか | 北陸の視座vol.21 より

次に鉄道と他の交通機関の特性を項目で比較してみた。

まずは項目について

交通機関特性比較
  1. 「走行路コスト」
    交通車両が走行する通路の設置コスト。
    鉄道なら線路、自動車・バスなら道路、飛行機はもちろん空(空間)ということになる。
  2. 「拠点整備」
    交通車両を利用する際の起点・終点設備、鉄道なら駅、自動車には不要、バスなら道路、飛行機は空港になる。
  3. 「近隣度」
    交通機関を利用する際の起点・終点が目的交通路に近いか遠いか。もちろん自動車は目の前から乗車するので近隣度が最も高く、細かな路線網を設置しているバスが続き、そして鉄道が第三位、飛行機は数少ない空港まで出向く必要性から最後の順となる。
  4. 「車両輸送人員」
    運転手あたりの乗車輸送人員、一般的に鉄道車両が最も多く、飛行機、バス、そして日常の走行では運転手以外はほとんど乗らない自動車の順となる。
  5. 「CO2排出・安全度」
    鉄道・運輸機構のHPに資料を参考にした。
  6. 「速達性」
    目的地に早く到着する順。飛行機・鉄道・自動車・バスの順になる。
  7. 「機動性」
    移動の希望時間にどれだけ近接して便があるか。自動車は任意の時間に出発できるので最上位。そして便数の順に鉄道・バス・飛行機となる。
  8. 「動力効率」
    単純に動力エネルギーへの変換効率を考えた。圧倒的に電気モーターを主力とする鉄道が優位。そしてバス・飛行機・自動車の順となる。
  9. 「輸送エネルギー効率」
    交通機関ごとに集計されている交通機関ごとに消費されたエネルギーと実際に運輸した人・ものから計算した。

その項目ごとに点数化してみた。

最も優位なものに4をそして順に3,2,1と点数を付け集計した。

結果順位は鉄道30点、バス25点、飛行機24点、自動車22点の順になった。

交通機関の比較(優劣順に4-1ポイント)
  鉄道 自動車 バス 飛行機 備考
走行路コスト 3 3 4 走行に必要な設備
拠点設備 2 4 3 1 起点終点の施設
近隣度 2 4 3 1 乗車施設が近くにあるか
車両輸送人員 注1 4 1 2 3 運転手当たりの輸送人員
CO2排出 注2 4 1 3 2 走行中の排出CO2
安全度 注2 3 1 2 4 死者/人km
速達性 3 2 1 4 どれだけ早く着くか
機動性 3 4 2 1 便数の多さ
動力効率 注3 4 1 3 2 動力転換の効率
輸送エネルギー効率
注4 次章で詳細
4 1 3 2 輸送人員トン数当たり実需エネルギー
合計点 30 22 25 24  

注1

f:id:greengreengrass:20180729095230p:plain

自動車の平均輸送人数はほぼ毎日使用する通勤・業務分野では1名強、休日のレジャーとしての使用や買物で2名程度の人数となる。

注2 鉄道建設事業の概要 | 鉄道建設 | JRTT 鉄道・運輸機構

注3 以下エネルギー効率 - Wikipedia より加工

変換形態 入力
エネルギー
有効出力 効率% 用途備考
蒸気機関 化学 動力 3–44 鉄道他 
スターリングエンジン 化学 動力 10–66 冷凍機等
ガソリンエンジン 化学 動力 20-30 自動車
ディーゼルエンジン 化学 動力 < 50 自動車・鉄道 
2ストローク低速ディーゼル 化学 動力 55 大型船舶用
タービンエンジン 化学 動力 40 航空機
電気モーター 電力 動力 20–99.5 鉄道他・出力200W以上の
モーターでは70%以上
発電機 力学 電力 95–99.5  

そして科学的な解説によると、鉄輪と鉄路の接地による鉄道の動力伝達方法、すなわち鉄の車輪とレールを用いることで転がり抵抗が少なくなるという利点もある。 

右記資料より https://bunken.rtri.or.jp/PDF/cdroms1/0009/2012/0009000181.pdf

以下も参照 http://www.jterc.or.jp/kenkyusyo/product/tpsr/bn/pdf/no08-02.pdf より

交通機関のエネルギー効率
  • 全般に鉄道やバスといった集合的サービスは、個別輸送の自動車に比べてエネルギー効率が高い。これは、主として有償荷重すなわち搭載する旅客の重量に比べて車両の重量が小さいためである。 もちろん、旅客が少なければ効率は低下するので、鉄道やバスを有効に利用することが、エネルギー効率の面からも有効である。
  • 電気動力の鉄道と内燃機関のバスを比較して、1km以下の短い間隔で停車するような運行では、鉄道の効率はバスに劣る可能性がある。動力に関しては、内燃機関と発・送電過程を考慮した電力とでは、大差は無さそうであるが、鉄道は、旅客重量に比較した自重がバスより大きいために、この結果が生じている。
  • いずれにせよ、車両に関しては有意な重量の削減が効果的である。
  • 電気自動車は、通常の自動車に比べて、部分負荷時のモータの効率が内燃機関より優れているという利点を有するが、それが発揮されるのは、アイドリングや減速中のエネルギー消費が無視できない、かなり深刻な交通渋滞の場合に限られそうである。この事情を決定するのは電池の重量が大きいためで、ここでもまた車両の重量が大きな影響を与えることがわかる。
  • 電池重量のほか、電気自動車の効率は充放電効率に依存するので、充放電効率の高い電池を見いだすことが重要である。
  • 回生ブレーキによる効率改善効果もそれほど大きくないと見られる。電気自動車について本報告では試算を行っていないが、鉄道電車より不利な面がある。それは、回生電力を電池に充電するためにロスを伴うほか、電池によっては回生エネルギーを回収しにくいタイプがあることである。

 

鉄道と他の交通機関分担率

鉄道は多くの項目で優位を占める。ただ鉄路の建設や駅設備に多くの費用を要す。

そして近隣度は自動車、バスより低いが飛行機よりは高い。

次に以下は近年の交通機関別の分担率である。

(資料:総合政策局情報政策本部情報政策課交通経済統計調査室 「自動車輸送統計年報」、「鉄道輸送統計年報」、「内航船舶輸送統計年報」、「航空輸送統計年報」)

交通機関別に旅客と貨物に分けてその輸送比率をパーセントで表してある。

旅客

<td>65.4

旅客の輸送機関別輸送量推移
年度 人員 人キロ
鉄道 自動車 旅客船 国内
航空
鉄道 自動車 旅客船 国内
航空
1955 69.3 30.2 0.5 0.0 82.1 16.6 1.2 0.1
1960 60.6 38.9 0.5 0.0 75.8 22.8 1.1 0.3
1965 51.3 48.3 0.4 0.0 66.8 31.6 0.9 0.8
1970 40.3 59.2 0.4 0.0 49.2 48.4 0.8 1.6
1975 38.1 61.5 0.4 0.1 45.6 50.8 1.0 2.7
1980 34.8 64.8 0.3 0.1 40.2 55.2 0.8 3.8
1985 35.4 64.3 0.3 0.1 38.5 57.0 0.7 3.9
1987
JR発足
28.8 70.9 0.2 0.1 31.1 64.8 0.6 3.5
1988 28.3 71.4 0.2 0.1 30.4 65.7 0.5 3.5
1989 27.5 72.3 0.2 0.1 29.1 66.7 0.5 3.7
1990 28.1 71.6 0.2 0.1 29.8 65.7 0.5 4.0
1995 26.9 72.8 0.2 0.1 28.8 66.1 0.4 4.7
1996 26.8 72.9 0.2 0.1 28.6 66.1 0.4 4.9
1997 26.2 73.5 0.2 0.1 27.8 66.6 0.4 5.2
1998 26.2 73.6 0.2 0.1 27.3 67.0 0.3 5.3
1999 25.9 73.9 0.1 0.1 27.0 67.1 0.3 5.6
2000 25.6 74.2 0.1 0.1 27.1 67.0 0.3 5.6
2001 25.1 74.7 0.1 0.1 27.0 67.0 0.3 5.7
2002 24.7 75.1 0.1 0.1 26.8 67.0 0.3 5.9
2003 24.8 75.0 0.1 0.1 27.0 66.9 0.3 5.8
2004 24.7 75.1 0.1 0.1 27.2 66.8 0.3 5.8
2005 24.9 74.9 0.1 0.1 27.7 66.1 0.3 5.9
(75.9) (23.4) (0.4) (0.3) (69.5) (15.0) (0.7) (14.8)
2006 25.2 74.6 0.1 0.1 28.2 0.3 6.1
(76.2) (23.1) (0.3) (0.3) (69.5) (14.8) (0.7) (15.1)
2007 25.4 74.4 0.1 0.1 28.7 65.0 0.3 6.0
(76.8) (22.5) (0.3) (0.3) (70.3) (14.4) (0.7) (14.6)
2008 25.5 74.2 0.1 0.1 29.0 64.9 0.3 5.8
(77.1) (22.3) (0.3) (0.3) (70.6) (14.6) (0.6) (14.1)
2009 25.4 74.4 0.1 0.1 28.7 65.6 0.2 5.5
(77.5) (21.9) (0.3) (0.3) (71.2) (14.7) (0.6) (13.6)
2010 78.0 21.5 0.3 0.3 71.8 14.2 0.5 13.5
2011 78.4 21.0 0.3 0.3 72.7 13.6 0.6 13.1
2012 78.7 20.7 0.3 0.3 72.1 13.5 0.6 13.9
20.6 2013 78.8 0.3 0.3 71.9 12.9 0.6 14.6
2014 79.1 20.3 0.3 0.3 71.8 12.6 0.5 15.1

往年国鉄の時代には7割程度の分担率を占めたこともあるが、特にJRとなって以降は25%程度を維持している。

2010年になぜか自家用自動車の数字が統計から外された。そのため鉄道の比率がぐんと高くなった。

そのため2009年以前の統計と一貫性が失われた。貨物でも同じ。

これには有識者から批判が出たので、2005-2009年の統計に自家用自動車を外した参考値を併載している。また別にはなるが自家用自動車の統計も提供されている。お役人仕事だなあ)

貨物

貨物の輸送機関別輸送量推移
年度 トン数 トンキロ
鉄道 自動車 内航
海運
国内
航空
鉄道 自動車 内航
海運
国内
航空
1955 22.5 69.1 8.4 0.0 52.6 11.7 35.7 0.0
1960 15.1 75.8 9.1 0.0 39.0 15.0 46.0 0.0
1965 9.3 83.8 6.9 0.0 30.5 26.1 43.4 0.0
1970 4.8 88.1 7.2 0.0 18.0 38.8 43.2 0.0
1975 3.6 87.4 9.0 0.0 13.1 36.0 50.9 0.0
1980 2.7 89.0 8.4 0.0 8.5 40.8 50.6 0.1
1985 1.7 90.2 8.1 0.0 4.9 47.5 47.5 0.1
1987
JR発足
1.4 90.5 8.0 0.0 4.6 50.4 44.9 0.1
1988 1.3 90.6 8.0 0.0 4.9 51.0 44.0 0.1
1989 1.3 90.5 8.3 0.0 4.9 51.7 43.3 0.1
1990 1.3 90.2 8.5 0.0 5.0 50.2 44.7 0.1
1995 1.2 90.6 8.3 0.0 4.5 52.7 42.6 0.2
1996 1.1 90.9 8.0 0.0 4.4 53.3 42.1 0.2
1997 1.0 90.8 8.1 0.0 4.3 53.8 41.7 0.2
1998 0.9 91.0 8.1 0.0 4.2 54.5 41.2 0.2
1999 0.9 91.0 8.1 0.0 4.0 54.8 41.0 0.2
2000 0.9 90.6 8.4 0.0 3.8 54.2 41.8 0.2
2001 1.0 90.6 8.4 0.0 3.8 53.9 42.1 0.2
2002 1.0 90.6 8.4 0.0 3.9 54.7 41.3 0.2
2003 0.9 91.3 7.8 0.0 4.0 57.1 38.7 0.2
2004 0.9 91.1 7.9 0.0 3.9 57.5 38.4 0.2
2005 1.0 91.2 7.8 0.0 4.0 58.7 37.1 0.2
(1.0) (91.0) (8.0) (0.0) (4.0) (58.6) (37.2) (0.2)
2006 1.0 91.4 7.7 0.0 4.0 59.9 35.9 0.2
(1.0) (91.2) (7.9) (0.0) (4.0) (59.8) (36.0) (0.2)
2007 0.9 91.4 7.6 0.0 4.0 60.9 34.9 0.2
(1.0) (91.2) (7.8) (0.0) (1.0) (60.8) (34.9) (0.2)
2008 0.9 91.7 7.4 0.0 4.0 62.1 33.7 0.2
(0.9) (91.5) (7.5) (0.0) (4.0) (62.0) (33.8) (0.2)
2009 0.9 92.2 7.0 0.0 3.9 63.9 32.0 0.2
(0.9) (92.0) (7.0) (0.0) (3.9) (63.8) (32.0) (0.2)
2010 0.9 91.6 7.5 0.0 4.6 54.7 40.5 0.2
2011 0.8 91.8 7.4 0.0 4.7 54.1 41.0 0.2
2012 0.9 91.4 7.7 0.0 5.0 51.3 43.4 0.2
2013 0.9 91.1 7.9 0.0 5.0 50.8 43.9 0.2
2014 0.9 91.3 7.8 0.0 5.1 50.6 44.1 0.3


以上のように交通機関として鉄道の優位は多くの項目で揺るぎない。しかし、その鉄道は分担率でみると、旅客で25%、貨物では1%程度になっている。

鉄道の分担率は欧米はじめ世界でみても日本より少ない傾向となっている。

各種数字でみても優位な鉄道、歴史的にも移動について貢献したその鉄道を政策的に考慮することなく、JR東海を初めJR7社合計すれば、黒字を保っているという状況のなかで、JR北海道の例をあげるまでもなく、単線のみを考慮した赤字ということで廃線=廃棄していいものだろうか。

ましてや、最初にあげたように、鉄道は存在するだけで、町の風格が上がり、他の地域とのつながりを意識でき、人の集中によって町としての核ができる。多分多くの地方都市で最大の集客装置は駅になるだろう。まず鉄道にはそのような数字化できない面がある。この点を強く指摘したい。

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 33 線路は続く19 -へ進む  紙つぶて 細く永く

日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 31 線路は続く17 に戻る- 紙つぶて 細く永く

2017年
  • JR北海道の年間赤字「-525億7600万円」
  • JR四国の年間赤字「-119億0900万円」
  • JR東海東海道新幹線の年度利益額「5398億6000万円」

REMEMBER3.11