京都盆地は水瓶だった
京都の地下には大きな水瓶がある。
そしてその上にある京都市域では上水道や農業、飲食、酒造、豆腐、友禅、茶道ばど京都盆地の水は多岐にわたり利用されている。
京都盆地の一番底にはまず1億年から1億5千万年前に堆積し岩盤からなる古生層があり、その上に150万年から500万年前に堆積した洪積層が乗っかり、一番上には約3万年前に薄く堆積した沖積層がある。
古生層は岩盤で水を通さずその上にある洪積層そして沖積層が重なっている。
一番底の古生層が水を通さない岩盤で、このの洪積層・沖積層に地下水が溜まっている。
下図の京都消防局による解析では北山通付近で地下100mほどのところに基盤岩(=古生層)があり順に、今出川通御池通と深くなり、御池通から五条通付近では300mから400m、名神高速付近では500mとなっている。
昭和初期まで京都南部にあった巨椋池はこの地下水の湧水で溜まったものと思われる。
*
水の収支
京都盆地地下に溜まった水はどうなるか。
関西大学楠見晴重教授によると、京都水盆の水の収支は以下のようになる。
地震探査・重力探査・ボーリングの結果から計算すると京都盆地地下水量は約211億トン、琵琶湖の水量270億トンに匹敵する水が存在している。
京都水盆に流れ込む水は淀川水系(猪名川水系を除く)に降った雨が元となる。
上記京都の水域図で表したように滋賀県に降った雨は琵琶湖に注ぎ、琵琶湖から唯一の流出路である瀬田川、木津川、宇治川を通り淀川となる。
木津川の川上は三重県になる。
このエリアに降る雨は1700mm/年ほどなので年間降水量は約120億トンとなる。
一方流出する水路は淀川のみで国土交通省淀川河川事務所の観測では年間平均流出量は約90億トンとなっている。
降った雨の表面流出量と地下浸透量との比率は湖面、山地、耕地、市街地によって大きく異なるが、それらを平均して大まかに考えると、ほぼ同じ量と推定。
すると京都盆地での水の収支は、(いずれも年間)
降水量120億トン
表面流出量45億トン
地下浸透量45億トン
平均流出量90億トン
蒸発量30億トン
と考えられる。
京都盆地地下の水211億トンは、211億トン/45億トン=4.68つまり約5年かけて入れ替わるのだ。
*
京都盆地に穴をあける?
京都盆地を堀川通に沿って南北の断面図を見ると以下のようになる。
北山通から今出川通を経てJR京都駅近辺まで400mほどの深さの盆状面を見ると以下になる。
東大路から西大路を越え阪急嵐山線までつまり東山から西山までいわば水瓶が存在している。
京都大学防災研究所奥西一夫名誉教授によると、
京都盆地の地下水は主として、水が殆ど浸み込まない山地からではなく、丘陵地とくに伏見丘陵から供給されていると考えらる
また平野や京都盆地の底を流れる桂川など大きい川は伏流水を通じて盆地に地下水を涵養している。
実際の盆地内の地質は古期扇状地や氾濫原堆積物が複雑に堆積し、透水性の高い地層が帯水層となっている。
浅い帯水帯の地下水は利用しやすいが生活排水や産業排水の影響を受けて汚染されやすいが、深い帯水層の地下水は水量、水質ともに安定し、産業利用も盛ん。
しかし地下水をくみ上げすぎると地盤沈下が起きるので、規制が必要になる。
京都盆地の中にはいくつもの断層があり、その一部は活断層でもある。
活断層は盆地と山地の境界部に多い。
伏見のあたりの地層は砂質層と粘土質層が幾重にも重なってる。
*
北陸新幹線延伸
その先敦賀から、東小浜、京都、松井山手、新大阪駅までの延伸も予定されている。
そのルートが京都市近辺では以下の地図にある紫色の「事業実施想定区域」(京都盆地近辺のみ表示)内を通る。
丁度京都盆地を通りぬけるように路線が計画されている。
丹波山地から京都市内京都駅まではトンネルのルートとなる予定。
わかりやすく言うなら金魚鉢の底を貫通するトンネルを掘る、みたいなことだ。
なんのために・・、京都の町の景観を守るために高架路線を止め地下にしたということだろうが地下にも京都の命である水瓶があった。
京都は文化財の集積地
事業主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(略称JRTT鉄道運輸機構)でも路線予定地の埋蔵文化財を取り上げている。下記をご覧いただきたい。
右から左まで埋蔵文化財ばかりのエリアとなる。
上記は埋蔵文化財包蔵地だけであるが、京都市のサイトから同エリア内の文化財地図を見てみると以下になる。
当然ながら埋蔵文化財に加えて建造物や史跡名勝、重要遺跡など、いわば京都は文化財の集積地である。
この地での工事には十全な対策が必要だが、十分に考慮された工事が行われるのだろうか?
京都には鉄道建設それも地下鉄工事の経験がある。
そこでの様子をうかがい知ると。
地下鉄工事により文化財が破壊されたらしい。
*
北陸新幹線ルート再考
このように文化財の宝庫京都をなんとか通過するルートを考えると、地下よりは掘削面積の少ない高架であればよかったのではないだろうか。
そこで京都市内主にJR東海道線から南であれば地下ではなく高架も可能と考えてみた。
東の滋賀県比良山系から東山を抜け京都駅を目指す。
または西の丹波山地から景勝地嵯峨嵐山を避け少し南を京都駅まで。
しかしどうもルートを引いていて松井山手駅が引っかかる。
東西どちらの迂回ルートであっても、この駅が無ければ迂回ルートは以下のように素人目にもスムーズだ。
松井山手駅は必要なのだろうか?
何故松井山手駅が出来たのか?
京都駅から松井山手駅までは直線距離で17.5km
いろいろ調べると往年の国鉄時代の我田引鉄の様子が浮かんできた。
当初はJR西日本も松井山手駅の設置を考えていなかったようだ。
新幹線の駅間距離を見てみよう。
東海道/山陽 新幹線駅間距離 |
||
東京 | ||
6.78 | ||
品川 | ||
18.76 | ||
新横浜 | ||
51.11 | ||
小田原 | ||
18.78 | ||
熱海 | ||
15.87 | ||
三島 | ||
23.7 | ||
新富士 | ||
32.44 | ||
静岡 | ||
43.86 | ||
掛川 | ||
27.62 | ||
浜松 | ||
35.25 | ||
豊橋 | ||
38.65 | ||
三河安城 | ||
29.2 | ||
名古屋 | ||
25.1 | ||
岐阜羽島 | ||
41.11 | ||
米原 | ||
68.08 | ||
京都 | ||
39.04 | ||
新大阪 | ||
32.65 | ||
新神戸 | ||
22.21 | ||
西明石 | ||
31.07 | ||
姫路 | ||
20.05 | ||
相生 | ||
55.01 | ||
岡山 | ||
25.8 | ||
新倉敷 | ||
30.93 | ||
福山 | ||
17.38 | ||
新尾道 | ||
10.55 | ||
三原 | ||
30.94 | ||
東広島 | ||
29.28 | ||
広島 | ||
44.16 | ||
新岩国 | ||
38.16 | ||
徳山 | ||
41.01 | ||
新山口 | ||
24.11 | ||
厚狭 | ||
23.79 | ||
新下関 | ||
20.74 | ||
小倉 | ||
55.91 | ||
博多 | ||
平均km | 31.44 |
東京駅品川駅間の6.78kmや新尾道駅三原駅間の10.55kmなんて例もあるが、現在の松井山手駅の交通利便性を考えれば特段設置しなければいけないわけでもないと思う。
これは下記記事に指摘されるように政治に歪められた一面だろうか。
北陸新幹線はなぜ「南回り」で大阪を目指すか 東洋経済オンライン
それにも増して不可思議なのは、京都駅から新大阪駅まで新幹線が2本も必要ですか?
またこのエリアにはいずれリニア中央新幹線も乗り入れてくる。
その上で方程式を解くことが必要になりそうだ。
参照
新幹線のトンネル工事現場に潜入!住宅街の地下に新幹線!?【イチオシ‼】 - YouTube