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タテカンは主張する

京大タテカン訴訟第2回口頭弁論

2021年11月11日14時30分から、京都地方裁判所101法廷において、京大職組を原告、京都市および京都大学を被告とする損害賠償請求訴訟の第2回口頭弁論が開催されました。

コロナ対策のため積極的な傍聴は呼びかけませんでしたが、多数の学生さんを含め、傍聴席をほぼ埋める方々にお集まりいただきました。

弁論では弁護団から、原告の主張を記した第1~第3「準備書面」の内容が陳述されました。

第1準備書面は、京都市が本件タテカンの設置主体をあいまいにしていることなどについて、立場を明らかにするよう求めるものです。

第2準備書面は、京大法人が組合との団体交渉において、組合のタテカン掲示は「労使慣行」として確立していたと明言していたにもかかわらず、本件訴訟において「労使慣行はない」などとする誰の目にも明らかな嘘を主張していること、

また、同じく団体交渉において、京都大学立看板規程の制定・適用に関して組合と話し合う余地は一切ないなどと主張していることに対して、反論を展開しています。

第3準備書面は後に項を改めて紹介することにします。

口頭弁論終了後、同志社大学新島会館にて報告集会を開催し、今回弁論までの流れや今後の見通しを紹介しました。

会場でのご参加のほかZoomでのご参加もいただき、支援者の方々には厚く御礼申し上げます。

この後12月20日の弁護団会議を経て、次回の口頭弁論は、2022年2月22日(火)14時30分から京都地裁101号法廷で行われます。

引き続き、ご注目とご支援をお願いします。

表現の自由に関する主張以下では、私たち原告側の第3準備書面の主な内容を紹介させていただきます(「」は書面の引用です)。

京大タテカンの歴史と意義

京大周辺には、学生や教職員の意見表明の場として、50年以上タテカンの設置されてきた歴史があります。

「京都大学の自由な学風の象徴として長年設置されてきたタテカンは、大学関係者だけではなく、周辺住民だけに留まることなく、多くの人にとって、京都大学周辺の景観の一部となり、誇りを持った景観として扱われてき」ました。ました。タテカンが設置されている場所は「非常に多くの人々の目に触れる位置であ」り、

「タテカンが『京大の文化』であり、守るべき文化であることは」、すでに京都市屋外広告物条例の存在していた2005年当時の被告京都大学の学長(尾池和夫学長)自身も認め、立看板を規制することはしないと明言」されています。

むろん、「意見の表現方法の手段はタテカンに限られるものではな」く、組合も「職員組合ニュース」の配布やインターネットの活用に努めてきました。

しかし、「チラシを撒くという手法で届く人は絶対数において限られている上に、2020年春以降は新型コロナウイルス感染症拡大のためにそれすら困難とな」りました。

インターネットは「多数の情報に溢れていることから、情報の受け手が、自ら情報を求めて調べる必要があり、受け手自身が好む情報以外のものに到達する可能性は高く」ありません。

「これに対して、キャンパス外構で公道に向けて掲出されたタテカンは」、

「さまざまな立場の違いを超えてメッセージを届けられる媒体で」す。

労働組合は「それ自体として大学と市民社会をつなぎながら市民社会の期待や要求を大学側に届けていく役割を担っており」、

その「活動の一環として掲出するタテカンは地域社会と大学をつなぐ象徴的な媒体のひとつ」として「市民にとっても価値のある情報媒体で」す。

また、京都大学の「基本理念」(2001年制定)は、「『京都大学は、開かれた大学として、日本および地域の社会との連携を強めるとともに、自由と調和に基づく知を社会に伝える』ことを謳ってい」ます。

制限された表現行為「タテカンの中には一般市民を対象とする講演を含む催事告知、大学にかかわる国や自治体の施策についての意見表明、クラウドファンディングの呼びかけなど地域住民を直接的な宛先として含んでいるものもあ」ります。

本件「規制のためにキャンパス外構に掲示……できなかったことは労2働組合としての活動に大きな支障となってき」ました。

たとえば、

①2019年に組合が実施した、大学入学共通テストに関する羽藤由美京都工繊大教授の公開講演会の案内、

②2020年の市長選立候補予定者3氏に対する組合の「京都市屋外広告物条例および大学等就学支援法にかかわる公開質問状」の3氏の回答を掲載したニュース、

また③2020年7月に「新型コロナウイルス感染症拡大への緊急の対応として……京都大学医学部附属病院が……クラウドファンディングを始めたこと」への支援を呼びかける組合の声明は、

いずれも本件規制のため、キャンパス外構に掲示することができませんでした。

実は、2013年に組合は「京都大学の総長選挙の廃止が検討されているという情報をいち早く察知し」、「タテカンでその情報を発信して卒業生を含む地域住民に情報を拡げて署名運動を展開、総長選挙の廃止に反対する学内外の世論を盛り上げることで総長選挙廃止の阻止にこぎつけた」ということがありました。

しかし、

④「2020年の総長選挙ではこれまで行われてきた決選投票が廃止されるなど大きな問題が生じていたにもかかわらず、被告らによる規制のために効果的なアピールをすることができ」ませんでした。

本件規制により組合は、地域住民にも関係する情報を発信することができず、「自らの意見表明、ひいては社会内での意見形成を阻害されてい」ます。

「これらの情報は、周辺住民や学生や職員が、自ら求めて得ることが難しいことは明らかであり、タテカンという表現媒体が奪われたことによる弊害の大きさは明白で」す。

パブリックフォーラム論:

京大法人は、国家公務員に準じて教職員の賃金をカットした際、自らが公的地位にあることを主張していました。憲法上、道路や広場などの公共の場所を表現活動に用いることを認める「パブリックフォーラム」論が海老名フラッシュモブ事件などの裁判例によっても採用されています。

「京都大学吉田キャンパス周辺は、立て看板の設置場所として従来から人々に認知されてい」ます。

「京大の立て看板は、京大周辺を通りがかれば自然に目に入る場所にあるため、不特定多数の人々が、当該情報を容易に得ることができることから、インターネットとは異なる側面で強い伝達性を持つ手段であり、非代替性が高い伝達手段で」す。

さらに、「大学は、学問を研究し発表する場を提供し、学問の更なる深まりと発展を達成していくという役割を担っており」、「現在起きている社会問題に対する考察や芸術、学生らの活動等も全て、大学で行われるべき『学問』」だといえます。

「立て看板にて掲示されている内容は、大学の軍事研究に反対する政治的主張や、人工知能(AI)を考えるフォーラム、LGBT(性的少数者)の権利を考える集いについてなど、まさに学問的要素を含む表現内容で」す。

「大学周辺において、そのような表現行為を行うことは、大学の意義に直結する重要な表現行為で」す。

「学術発表、社会への問題提起」などの「内容の表現を、大学が発信することは、大学が社会に対して負っている非常に重要な責務であることから、そのよう表現内容を広く市民に対し発表する場は尊重されなければな」りません。

今後の展開

組合は下の写真と同じ場所に「職員組合ニュース」を掲示して直ちに撤去されました。次回以降の弁論では、京大法人や京都市が労働者の権利をないがしろにしてきたことを明らかにするとともに、専門家の意見も援用して憲法論を展開していく予定です。

(文責・クラウドファンディングプロジェクト代表・副委員長髙山佳奈子)

▲2021年10月22日、今出川

  • 伝統的パブリック・フォーラムには、公園や道路など、伝統的に大衆の表現活動の場であった場所が該当する。

    そこでは、あらゆる表現活動が基本的に制限されない。

    もし、内容に依拠して (content-based)規制するならば、厳格審査 (strictscrutiny)が要求される。

    厳格審査を通過するには、政府のやむにやまれぬ利益 (compellingstate interest)を達成する目的があり、できるだけ狭く設定された規制である必要がある。

    また、内容中立 (contentneutraD という条件下では、時間または場所、態様による規制だけが許される。

     ただし、その規制が、狭く設定されていることと、表現の代替手段を確保している必要がある。

  • 次に、制限的パブリック・フォーラムClimitedpublic forum) は、政府が公有財産を表現活動のために意識的に指定し、開放した場を指す。

    制限的パブリック・フォーラムでは、開放の目的に合致した表現活動であるならば、伝統的パブリック・フォーラムと同様の基準で表現活動を保障しなければならない。

    また、表現の場としての公聞を中止する自由を政府は有しているものの、言論の封殺を目的としてフォーラムを閉鎖することは許されな い。

    この類型には、公立公会堂や公立学校の講堂、公営劇場などが該当する。

  • 最後の類型である非パブリック・フォーラムは、上記の 2類型以外の公有財産を指す。

    例えば、刑務所やホワイトハウス、軍事基地、市役所が該当する。

    そこでは、単に表現者の見解に反対するという理由ではなく、合理的な理由があるならば、表現規制は許される。

参照 

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/139411/1/edsy10_101.pdf

 

「イヴァンよお前にやる花はない」プラハの花屋

REMEMBER3.11