150周年記念 交通権
国土交通省に「わが国における交通基本法と『交通権』の位置づけについて」という文章がある。これは「交通権」というものについて国としての意気込みを語るものである。
http://www.mlit.go.jp/common/000130170.pdf
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その要点は
となっている。
そして交通権学会という学会からも下記「交通権憲章」というものが披瀝されている。
交通権学会 Association for the Research of Transportation Problems and Human Rights
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交通は、人や物の移動に必要不可欠なものであり、あらゆる活動の基礎ともなるべきもの。その移動の自由、交通権を護るためには何が必要なのであろうか。
自家用車が交通手段として重要な社会的役割を果たしていることは事実であるが、一方自家用車を運転できない高齢者や体の不自由な人々の、職場への通勤や病院通い、買物に不自由なく移動できる、足としての手段・公共交通が各地で失われてゆきつつある。
いわば自家用車を使える人と使えない人の間に移動の自由の格差が広がっている。いまここで誰もが利用でき、将来にわたり持続可能な公共的交通手段のベストミックスを確保する必要がある。
そして大気汚染の問題も大きい。日本における交通部門からのCO2排出量は2割、そしてその中で相対的に優れた乗り物は鉄道になる(一説には交通部門の中で自家用車の炭CO2排出量は9割になるといわれている)。
http://wwwtb.mlit.go.jp/hokkaido//bunyabetsu/kankyou/ecotsukin/3document03.pdf
より
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交通権を保障するためには、地域の実態に合うように地域公共交通を維持・再生し、活性化させていくことも必要である。しかし、地域公共交通をめぐる状況は大変厳しくなっており、地方のバス、タクシー、鉄道、旅客船 の旅客数は過去10年間で2割減、20年間で4割減と落ち込み、赤字の 会社が増え、運行の維持が困難なところが増えている。採算をとろうと して運賃を上げようとすると、客離れが起きるという悪循環に陥ってしまうが、このまま放置しておくと安全で安心な輸送が脅かされない。
また、 交通施設や乗り物のバリアフリー化も道半ばの状況であり、人々の移動権を充足するためには、これらを誰もが利用しやすいユニバーサル・デザインにすることも望まれる。
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これらの意見を踏まえて2013年に交通政策基本法が制定された。
しかし残念ながらこの法案では上記文章に意気込まれた「交通権」についての観念は盛り込まれず、まさに上記文章より後退した姿勢が強い。
その端的な例 第16条に
「地域における自然的経済的社会的諸条件に配慮しつつ」なんて猶予条件が付加されてしまった。
これでは経済的側面を取り上げれば、地方赤字路線は住民の「交通権」にかかわらずほぼ廃線必死ということになる。
このサイトにも注目
地域公共交通再生の実現へ向けて ~ 交通政策基本法の必要性 | 小嶋光信代表メッセージ | 両備グループ ポータルサイト - Ryobi Group -
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人と環境にやさしい公共交通機関をこれから創設して行くのではなく、今ある公共交通機関を維持しながら、人と環境にやさしい公共交通機関に作り替えてゆこうという視点が重要なのではないか。日本には世界に誇れる交通路線網が(今のところ)ある。
参照
REMEMBER3.11
不断の努力「民主主義を守れ」