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日本の鉄道はこのままでいいのだろうか 28 線路は続く14

線路は続く 目次

線路は続く14 海外の鉄道改革

海外の鉄道に対する哲学

下記資料は古いが代表的な世界各国の都市における鉄道運賃収入割合は以下になる。
(欧米各都市ではこの時代から運営費に対する補助金(収入不足分)給付が続いている)当然100を越えれば不足分はないので補助金は支給されない。

世界各都市の交通機関
直接運営費に対する運賃回収比率
  1980年 1991年
ロンドントランスポート 78 84
RATP(パリ) 74 43
トロント 72 68
ブリュッセル 30 28
ミラノ 23 28
ストックホルム 32 30
コペンハーゲン 58 52
ミュンヘン 60 42
ウィーン 50 50
チューリッヒ 63 66
大阪市 108 137
営団地下鉄 171 170
阪急電車 123 123

「わが国の都市鉄道整備補助制度についての一考察」正司健一より
欧米の特に都市公共旅客輸送では運輸に係る人件費や燃料費等の直接経費を含んだ部分を運輸収入で賄えない場合でもその不足分を補助金で給付している。
 欧米では、運輸事業のサービス維持について、市民生活にとってまた都市経営にとって不可欠であるか否かとの判断からその存廃を考えている。
イギリスでは1975年に「許された財源のもと乗車人マイルの最大化を図ること」を企業目的とするようになった。

イギリスの鉄道

 イギリスの国鉄はイギリス交通委員会(BTC)の執行機関が運営していたか、1963年に独立してイギリス国鉄となった。その初代総裁リチャード・ビーチング博士が1969年の収支均衡を目指してビーチングプランを策定した。その後1993年に鉄道法が施行され翌年1994年から新たな鉄道改革がスタートした。
改革の特徴は、
1鉄道旅客運輸事業と鉄道インフラ事業の分離(上下分離)

2鉄道輸送事業への期間限定営業免許の導入

3国鉄各部門の民営化

4貨物のオープンアクセス

この改革によって鉄道線路の保有会社として「レールトラック」(レールトラックはダイヤ編成・運行管理・列車指令も行った)、そして旅客鉄道会社(TOC)25社、貨物鉄道会社6社、車両リース会社3社、信号保守会社14社などおよそ100の組織・機関が誕生した。

設立された民間会社レールトラックは、順調に利益を計上し、株式配当も行っていた。

しかし受け取る線路使用料を、鉄道ネットワークの整備や近代化に充当することになっていたが、充分その機能を発揮できず、1999年10月と2000年10月に連続して起こった二つの列車事故により破たんした。
その破たんしたレールトラックの事業を受け継いだのは非営利組織である「ネットワークレール」でその収益を全て鉄道整備に当てられることになった。鉄道線路保有組織は株式会社から非営利団体の公的セクターへと転換した。
しかし旅客鉄道路線の大部分は採算がとれていない。そのため社会的に重要と思われる路線について欠損を政府が補助金として補填した。上記各TOC25社はその補助金を含むという期間契約で事業を行った。1991年から2005年の平均で補助金の割合は38%程度になる。

ドイツの鉄道

 ドイツ鉄道は1994年、東西ドイツの合併によりそれまでの国営鉄道から政府100%出資の株式会社となった。1999年には持株会社となり傘下に以下の6社が設けられた。
DB Fernverkehr(DBフェルンフェアケーア) 

長距離旅客列車の運行を担当

DB Regio(DBレギオ)

短距離旅客列車の運行を担当

DB Stadtverkehr(DBシュタットフェアケーア)

都市内の交通を担当

Railion(レールオン)

貨物列車の運行を担当

DB Station & Service(DBステーション & サービス)

駅の運営管理を担当

DB Netz(DBネッツ)

軌道の保守管理を担当

そして2008年1月からは以下の3社に集約された
DB Bahn(DBバーン)

旅客列車の運行を担当、長距離輸送・地域輸送・カートレインを含む

DB Schenker(DBシェンカー)

貨物列車の運行を担当。国内の貨物輸送だけでなく国際物流にも進出しており、日本の西濃運輸などとも提携している。

DB Netze(DBネッツェ)

軌道の保守管理、駅の運営管理を担当

ドイツでは高速道路(アウトバーン)が無料(注1)であるため、バスに有利な鉄道とバスの競合が懸念された。そのため、鉄道路線のあるところではバスの営業が認められないことになっている。(「EUとドイツにおける鉄道政策」より)
(注1)近年は大型トラックに有料化の動きがある。
またドイツでは鉱油税を財源として公共交通の施設整備への助成を連邦と州が行う。

ハンブルグで地下鉄、路面電車、バスを運行するHHA社(ハンブルグ高架鉄道株式会社)は98%の株式をハンブルグ市が保有する。HHA社は自社で運行するバスと地下鉄、路面電車をゾーン制の均一運賃に変更し、同一ゾーン内ならば乗換の有無にかかわらず一定運賃とした。
ドイツには各地に運輸連合があり、共通運賃制度、運賃率の決定、交通計画の作成、各交通事業者の調整、収入配分、行政からの助成金の分配等を行っている。

運輸連合の営業支出に対する運輸収入の割合は、例えばミュンヘン運輸連合では44.2%(1973年)、61.1%(1980年)、58.3%(1984年)となっている。つまり補助金の割合が、40%から50%を占める。他の連合でも50%前後の比率となっている。

ドイツの鉄道助成金(下記表は主に公共交通の施設整備への助成)

ドイツの鉱油税による助成金額の推移
  税額/リッター 税収総額 助成金額100万マルク
  単位ペニヒ 100万マルク 道路 公共近距離旅客輸送
  ガソリン 軽油     億円:70円/マルク
1964 32 30        
1966       342.40 252.8 177.0
1967 35 33 9423 443.60 342.3 239.6
1968       539.00 403.1 282.2
1969       500.40 486.5 340.6
1971       538.70 631.2 441.8
1972 38 37 14227 863.70 886.7 620.7
1973 41 39 16598 1080.90 875.6 612.9
1974 44 42 16052 1109.80 1014.9 710.4
1975       990.30 1087.4 761.2
1976       1143.30 998.8 699.2
1977       953.30 1116.8 781.8
1978       1030.80 1155.8 809.1
1979       1138.80 1267.9 887.5
1980       1092.90 1272.6 890.8
1981 49 44 21351 1087.50 1296.4 907.5
1982 51 45 22835 1086.20 1448.6 1014.0
1983       1188.10 1355.8 949.1
1984       1141.10 1360 952.0
1985 50 45 24521 1222.60 1403.3 982.3
1986       1249.90 1358.6 951.0
1987       1377.90 1457.2 1020.0
1988       1212.10 1471.5 1030.1
1989 57 45 32965 1215.40 1408.6 986.0
1990       1211.20 1408.1 985.7
1991.1 60 50 47266 2362.40 2131.9 1492.3
1991.7 71 50
1992 82 55 55166 3460.80 3307 2314.9
1993       2153.40 3949.8 2764.9
1994 98 62 63847 2053.50 4073.5 2851.5
1995       2015.20 4032.5 2822.8
1996       2152.20 3851.8 2696.3
1997       1650.50 1876.2 1313.3
1998 104 68 66694 1622.90 1618.1 1132.7
1999       1572.10 1593.2 1115.2
2000 110 74 73930 1658.90 1516.9 1061.8
2001 115 80 79602 1629.00 1510.7 1057.5
2002 121 86 82516 1657.80 1622.2 1135.5
2003 127 92 84472 1686.10 1655.6 1158.9

「ドイツにおける公共近距離旅客輸送の助成とその成果」青木真美より

 


日本の鉄道に対する助成

日本の鉄道に対する助成金

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海外では鉄道を公でささえるという哲学が広まっている。上記にあげたイギリス、ドイツもその例であるが、鉄道先進国フランスではさらに進んだ鉄道優遇策もあるようだ。

「都市交通税」フランスの都市交通事業者はその経営形態はきわめて多様(株式会社・公社・第三セクター等)であるが、全体として運賃収入は二割程度であり、その他は公的な「都市交通税」という制度による財源で運営されている。
これは「一定規模以上の都市で事業を営む法人(雇用主)は公共交通システムの受益者であるから、その受益に対して適正な負担に応じる義務がある」という考え方により導入された制度である。
都市共同体ごとに市町村の規模の大小により税率が決められ、都市圏内にある一定規模以上の企業から従業員の給与総額に基づき徴収される。
ナント都市圏では、その税率は1.8%で、従業員12人以上のすべての企業が対象であるが、社員に他の交通手段を利用させている場合は免除される。
また、都市圏内の24の市町村が都市交通税の対象となり、周辺の農村部などは除外されているという。この都市交通税という特定財源や運賃収入などの一般財源と、運営費に対する補助金制度が公共交通システムの運営を支えている。

日本でもその先駆けとなるような考え方は芽生えている。

greengreengrass.hatenadiary.jp

鉄道についての哲学を深めていく

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線路は続く 目次

 

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