クリスチャン・ベール
映画VICEを見た。
こてんぱにディック・チェイニー元副大統領を指弾している作品だ。
2001年9月の同時多発テロ事件当時に、副大統領だったチェイニーを取り上げた作品。
若き日20代のチェイニーから晩年のチェイニーまでを、クリスチャン・ベールが演じる。
体重を増やし、髪の毛を剃り、眉毛を脱色するなど役に溶け込んでいた。
とても同一人とは思えない。
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チェイニーは単純でデクノボーな子ブッシュ(ジョージ・W・ブッシュ)に頼まれ副大統領になった。そして大統領に才能がないことを利用して、史上最強の副大統領になったという筋書きだ。
チェイニーは副大統領になるまで石油関連大手企業ハリバートンのCEOだった。
当然ハリバートンは石油関連企業だから、イラクの石油に関する米国の政策は利益を左右する。
映画の中でも、ハリバートンが入札なしで政府契約に絡むところや、チェイニーがハリバートンから退職金2600万ドルを得る場面が描かれる。
どこの国にも政界の幇間、つまりたいこもちはいるようでアメリカ政界にも待ってましたとばかりに、権力者のいいなりに都合のいい法解釈をする輩がいる。
まあ、どこか極東の非民主主義国のように、朝食は摂ったのに「朝ごはんは食べましたか」「いえ食べてません(=ごはんはたべてません)」なんて非論理的な幇間ではない。
法の解釈を独自の視点から権力者の都合のいいように解釈し直すという幇間だ。
チェイニー自身も才能ある人には描かれていないが、自らのために人を裏切り続ける男に描かれている。
最後に彼の独白が流れる。
イラクを破壊したブッシュ政権の政策に国民の過半数が否定的な判断を下したことをインタビューアに聞かれ、かれは最後叫ぶように反論する。
「一体どのようなテロなら許されるのか。
私は選ばれた者として、国民からの信託を受け政策を実行したまでだ。
反省なんかしていない」
ここまでくると社会ドラマのようだが、映画は喜劇としてつくられている。
途中政界を引退しハリバートン入りしたチェイニーは、「余生を悠々と過ごした」と映画途中でテロップが流れたり、最後に「この映画」のアンケート調査場面があり、市民が殴り合いの喧嘩を始めるなど思わずにこりとするところもある。
(この最後の場面は2回あるエンドロールの1回目後に出てくる。だから半分くらいの観客は帰った後だった)
ブラッド・ピット
前回の「グリーンブック」といい、私の見る映画はだいたい観客10人くらいだが、この映画は平日なのに人気なのだろう20人以上と入り数も多かった。
実名が多く出てくる映画。
だからその当時の政策的悪行も記憶の中で鮮明に思い出せる。
たとえば安倍のかわりに「財前首相」が
「憲法違反の戦争法案を様々な政治的幇間(建畠法制局長官や成瀬唯夫首相秘書官)を使って無理やり通した」
なんて映画をつくってもしょせん迫力がない。
この映画にアカデミー賞をはじめきちんとした評価をするアメリカンジャーナリズムがたくましい。
そしてこの映画をプロデュースしたブラッド・ピットにも感謝。
「イヴァンよお前にやる花はない」プラハの花屋
REMEMBER3.11