紙つぶて 細く永く

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読めばわかるのだが むしかえしに誘われて

ある投書から

参院選の結果、憲法改正の議論が本格化しそうです。
しかし議論は改憲派護憲派の意見がかみ合わないまま推移し、今日に至るのではないでしょうか。
 この状況を改めるには、両派閥の議論が必要です。
そこでまず、改憲派の私から護憲派のみなさんに質問です。
 ①戦争放棄や戦力の不保持が9条に定められているが、それだけで日本は戦争を仕掛けられたり戦争に巻き込まれたりしないという根拠はあるか。
 ②改憲派の「日本が第2次大戦後、戦争をせずにこられたのは、日米安保体制や自衛隊の存在のおかけ」という意見をどう思うか。この考えを否定するなら、日本が平和を維持できた理由をどう考えているか。
 ③日本の近隣には核武装を進める北朝鮮や、南シナ海東シナ海で覇権をうかがう中国がいる。こうした国々の覇権主義的な行動を止めるには、対話のほか、抑止力として一定の軍剌力も必要ではないのか。
 この3点について、ぜひ一護憲派の意見を伺いたい。

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武器の破壊力は絶えず増大し、戦争の被害はかぎりなく拡がってゆくから、もし人間社会が生きのびるとすれば、いつかは戦争をやめなければならず、いつかは世界連邦政府を成立させなければならない。それが遠い将来を望んでの大きな理想である。その遠大な理想に向かっての曲折にみちた人類の歩みにおいて、一歩先んじたのが、日本国憲法の理想主義であろう。
 一国民の誇りの根拠は、単にその現状(たとえば物質的豊かさ)によるばかりでなく、またみずから信ずる価値、すなわちその理想による。日本国はもはや「神国」ではない。たとえかってのように「神国」を誇ろうとしても、日本のカミは日本国以外のどこでもカミではない。もし日本国民が国際社会で通用し得る普遍的な理想をもつとすれば、憲法の平和主義の他にはないだろう。長期的にみて望ましいのは、日本国の改憲ではなくて、まだ第九条をもたぬ国々の改憲である。(略)
今日の世界には、このまま放置すれば人類の将来を脅かすだろう大きな問題がいくつかある。たとえば環境破壊・人口爆発・南北格差・民族主義紛争など。どの問題の解決にも国際的協力の必要なことはいうまでもない。と同時に、どの問題も軍事力によっては解決されない。民族主義紛争が武力衝突に発展すれば、停戦を実現または保証するために国際的な武力行使が必要な場合もあり得るだろう。しかしその場合にさえも軍事的手段は当座の応急処置にすぎず、紛争の原因を除くためには役だたない。一般に必要な国際協力は軍事的協力ではない。
 そもそも国際貢献の話を軍事的協力からはじめるのは、本末転倒である。まず解決すべき問題を列挙し、それぞれの問題について複数の解決法の優先順位を論じ、遂に武力介入を考慮せざるを得ないときに至って初めて軍事的な国際貢献を考えるのが、事の正当な順序である。いきなり国際貢献即軍事貢献という話から改憲論へ向かうのは、政治的倒錯症とでもいう他はない。(略)
 それでも「解釈改憲」というものが、なしくずしに行われて、今日に及んだ。そのこじつけと言葉のすり替えには止めがないようにみえる。いっそ第九条を改めて自衛隊を合法化し、その規模と任務をはっきりと限定した方が、軍国主義の再発を防ぐのに有効だろう、という考え方もある。
 しかし、今日改憲を望む人々が強調してきたのは、まず「押しつけ」論、次は「国際貢献」であって、軍拡の歯止ではない。「解釈改憲」で軍拡を進めてきた同じ権力が、軍拡を抑制する「改憲」を行うだろうという期待は現実的でない。憲法のこじつけ解釈には、さすがに後ろめたさが伴うが、改憲は公然と、朗らかに、軍国日本を再建するための道をひらくことになるだろう。(略)
 改憲は、つまるところ日本国民の意志による。国民の意志決定は、改憲が日本国をどこへ導くかを国民が十分に知った上で行われなければならない(いわゆるinformed consent)。その条件がなく、それでも国民の半数が改憲を望まぬときに、世論を操作して改憲を企てるのは、民主主義の原則に反するだろう。
 以上の理由により、私は日本の多くの市民と共に、またおそらくアジアの人民の大多数と共に、日本の国際貢献が軍事的であることを望まないのである。
加藤周一「護憲の理由」1993年3月より

私がとくに強調したいのは、昨年からの論点は改憲の如何ではなく「採られた政策が日本国憲法違憲か否か」ということである。

学問の自由と大学の危機1 - 紙つぶて 細く永く

追記 ドイツ大統領ヴアイツゼッカーの言に因めば「日本兵の強さを再び見たいと願う国はあるまい」

 

REMEMBER3.11

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