山田洋次監督の「東京家族」。松竹の先輩小津安二郎監督に捧ぐとクレジットされた映画を鑑賞。
期待多くもって見た故か、少し残念という気がする。
山田監督は、モチーフの元となった小津作品「東京物語」には通奏低音として、虚無感があると述べている。
一方山田作品はあえて人生の明るい未来を志向した、とも述べている。
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東京家族クランクインの前に起きた東日本大震災により脚本変更を考えたとの事であるが、
映画には少し触れられるだけ。
(次男妻夫木聡の恋人「間宮紀子」:蒼井優と知り合ったのが東日本大震災でのボランティアという設定)
(主役「平山周吉」:橋爪功の親友が東日本大震災で亡くなった)
この設定だけで「東日本大震災」を無理に織り込む意義があったのだろうか。
もう少し全面的に震災の不条理を訴えてもよかった。
名人といえども急な脚本の変更は難しい、ということだろうか。
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監督は主役橋爪功の理解力を持ち上げていたが、笠智衆との比較は無理に思える。
今回の「平山周吉」橋爪功は高校の教師という設定であるが、私にはやり手の町工場社長に思えた。
「極度に感情を抑え、淡々とした語り口が日本人の父親の原点」
といわれた笠智衆の一見飄々とした演技が、脳裏を離れない。
(ちなみに「東京物語」主演当時笠智衆は49歳。
港湾で二人海を見つめるシーンでは座布団を当て老いる背中を表現したと聞く)
離れてゆく家族の悲哀、この境地を時代に即して表現することは相当の演技力ではないだろうか。
小津作品「東京物語」では上京した年老いた両親を甲斐甲斐しく、
親身に世話をやくのが死んでしまった次男の嫁(演じるのは伝説になった原節子)
いわば本来の家族ではなく、
家族ではなくなろうとしている次男の嫁しか心を開いてくれなかった二人の悲しみが本当の「東京物語」なのであろう。
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「東京家族」では居酒屋での小林稔持・母親が亡くなったときの妻夫木聡。印象に残る演技があった。
しかし、小津作品「東京物語」東山千恵子のさりげない「父さん、帰りましょうか?」のたった一言を凌駕できなかった。
独立した子どもたちのいる東京に家族はなく、故郷へ帰っても二人、いやお母さんが亡くなり一人になった周吉である。