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官僚の彼我

同じように東京大学から官僚となり、方や文部科学省かたや財務省。年の差2歳。
それにしても官僚人生の最後にその評価は大きく差が開いてしまった。
前川喜平氏62才と佐川宣寿氏60才
前川氏は官僚としての最高位、事務次官に上り詰め、退官間近に「文科省天下り問題」( 文科省天下りで37人処分 最終報告、違法事案62件に :日本経済新聞 )で停職処分を受けた。そして退職後メディアに安倍政権下での「忖度行政」の事実を披瀝し、「面従腹背」を実践した。
一方このころに上記忖度行政の暴露を止めようという下心からか、「官僚足るものにあるまじき」出会い系バー通い、を読売新聞記事で指摘された。
ところが、どっこい出会い系バー通いは事実であったが、貧困調査のためだったことが実証され、形勢は逆転、彼の評価は上がり、情けないことに官邸からのリークを下に取材もせず記事にしたとした読売新聞の報道姿勢が大いに非難される事態となった。
その饒舌な講演で全国各地から引く手あまたとなっている。

一方佐川宣寿氏は、財務省理財局長時代の国会における忖度答弁「文書はありません」「廃棄しました」を強いられ、その後に就いた国税庁長官事務次官と同等の地位だそうだ)としての職務では「適正・公平な課税、徴集の実現を図ることが重要」と述べ、本心に反してしっかり文書を保存し行政に当たりましょうとは言わなかったようだ。
それでも以下のように部下たちに「面従腹背」にあい、
「国会答弁のように睨み付けるようなことはなく、時々笑顔も出たのですが、回答は用意したペーパーを読む官僚答弁。苦情を受けているのは現場の職員なので、何かメッセージを発してはどうですか、と言っているのですが、最後まで謝罪はありませんでした」(国税労組関係者)
満足に職務も行えず、悶々とした日々を過ごしている。( 雲隠れの佐川・国税庁長官を発見 まるで逃亡犯のような行動│NEWSポストセブン )

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官僚、いや誰かに仕えるという職業についての生き方の多くは、前川氏の言ではないが面従腹背である。
前川氏と異なり、佐川氏には「面従」しかなく「腹背」する宮仕え魂が存在しなかった。
その逃げまくる姿勢をみても哀れな末路だと想像する。無知性の権力に「こきつかわれる」人生もたまったものではない。
後任の理財局長である大田氏は、質疑に対して「金額についてのやりとりはあったが、価格の提示はしていない」と、佐川氏のように全くの否定ではなく、巧妙言葉を変えて逃げた。いささかの腹背を見せたのだ。
(あの場面で、野党の質疑は「金額についてのやりとりはしたのだな?」とたずね直せばよかった。そうであれば「そうです」と肯定せざるを得なかった)
佐川氏は長い職業人生の終盤に近く、思わぬ落とし穴にはまったその境遇を恨んでいる事だろう。国税庁長官として栄転で職業人生を全うするはずが、上部から忖度を求められ、機転を利かすことができずつい明かな嘘をついた。試練が続く。
この二人の機微について逆転の王、前川氏が自らざっくばらんに語っている。

前川喜平さん「私がもし佐川宣寿国税庁長官(前理財局長)の立場に追い込まれたら」 (1/2)


経済一流、政治二流といわれたがいずれも凋落は明かで、日本に残った唯一といっていい一流システムである官僚機構が崩壊しかけている。
かってその頑固さで嫌味だった福田康夫元総理も官邸による官僚の人事管理を「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」と批判している。
人間万事塞翁が馬で、今日の落胆は明日の喜びとなり、今日の忖度は明日の恐怖となる。官僚諸氏よこんな日本システムで全うな方法で出世しようとしても無理なのだ。

REMEMBER3.11