紙つぶて 細く永く

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ターニングポイント

 毎週末、東京に雪が降る。東京都知事選の投票の前日、2月8日もそうだった。
 JR新宿駅前は吹雪。細川護熙小泉純一郎のW元首相の最後の街頭演説は、悲壮だった。
  夜のビルの電光温度計は「0」を表示していた。
 福島原発事故があったのにまだ原発を続けるのか、ここで「原発ゼロ」に踏み切るべきでないのか、  それがW元首相をかりたてた思いだった。何度かふたりの演説を聞いた。
  「あとの世代に原発を遺(のこ)したくない。もっといい国を遺したい」というW元首相は本気だったと思う。
  残念ながら、選挙の勝利には結びつかなかった。
  それを都知事選で訴えるというところが東京の有権者にはわかりにくかったかもしれない。
 さて、このW元首相の挑戦は「原発ゼロ」だけだったのか。
  8日昼、降りしきる雪の数寄屋橋で田中秀征さんの応援演説を聞いて、むろん原発はだいじな問題だが、  それだけではなかったんだと感じた。
  今回、細川さんと小泉さんの連携の橋渡しをした秀征さんの思いは、一言でいえば「ストップ・ザ・アベ」  ということだったかと思われる。
 秀征さんはこう切り出した。
 「さきがけから20年ぶり、数寄屋橋で演説するのは感慨無量です」
 「さきがけ」は1993年、秀征さんたちが自民党を飛び出してつくった新党である。
  日本新党の細川さんを首相にして「非自民」政権をつくる原動力になる。今回はあのときのメンバーが再結集した形である。
安倍政権の「暴走」を予言
 「あした(投票日)はわれわれが勝ったとしても負けたとしても歴史的な日になる。
  安倍総理はいま徐行運転をしている。われわれが負けると安倍さんはあさってから暴走しますよ」
 安倍政権は、原発をベース電源とするエネルギー基本計画の決定を遅らせていた。
  でも、この選挙で勝ったらさっさと決定して、原発再稼働に動くだろう。
 「いま止めなかったら、いつ原発をやめることができるか。
  福島原発のような事故が再び起きるまで止められないですよ。この選挙でわれわれが勝てば止められる」
 核のゴミをどこに捨てるのか。小泉さんが鋭く提起する問題である。
 「政府は最終処分場の実現可能性があるようなことを言っている。あるわけないじゃないか。
  都知事選の間だけ、処分場の場所を探すふりをしている」
 「われわれは1千兆円の借金を孫子の代に残しているだけではない。もうひとつ、捨て場のない核のゴミを残している。
  私たちの世代の名において恥ずかしいんですよ」
 選挙1週間後のテレビで、自民党高市早苗政調会長はまもなくエネルギー基本計画決定に動くことを明らかにした。
  安倍首相は「エネルギーのベストミックス」、つまり原発再稼働発言を再開した。
 秀征さんは特定秘密保護法を論ずる。
 「安倍さんはお茶を濁すような諮問会議をつくり、まだ法は実施前なのにマスコミはびくびくしている」
 テレビも新聞も「選挙報道の公平」の名のもとに、
  細川さんのすぐわきに立つ「小泉さん」の姿を映像や写真に出さない。演説も報道しない。
  NHKで原発を論じようとした学者の発言を封じたように、自己規制が始まっているようにもみえる。
 秀征さんの声に力が入る。
 「集団的自衛権(容認)に解釈で変えられるなんてとんでもない。憲法は根本規範だ。
  堂々と改正するというなら文句はいいませんよ。これを解釈で変えられるというなら、憲法がある価値がない。
  (安倍さんは)猛スピードであさってから走り出しますよ」
■「ストップ・ザ・アベ」で戦わば……
 秀征さんの予言はあたった。開票の3日後、安倍首相は自信満々、憲法の解釈権者は私だと大見えを切る。
 「(解釈の)最高責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。
  審判を受けるのは内閣法制局長官ではない。私だ」
 選挙で勝てばそれでいいだろ、文句あっか、とでもいいたげである。
 この点、安倍さんの政治的師匠である小泉さんはどんな考えだったのか。2004年2月、小泉首相はこう述べた。
 「解釈変更の手段が便宜的意図的に行われるならば、……政府の憲法解釈、
  ひいては憲法規範そのものに対する国民の信頼が損なわれることが懸念される。
   ……憲法について見解が対立する問題があれば、
   ……正面から憲法改正の議論をすることにより解決を図ろうとするのが筋だろう」
 イラク自衛隊派遣をした小泉さんにしてこうである。
  戦後政治をつくった自民党政権を取材してきた私たちの世代の政治記者は、これを保守政治の持つ節度、
  よき自制心と思ってきた。
 秀征さんは原発ゼロのみならず、これらの政治のありかた全体を含めて「ストップ・ザ・アベ」と言いたかったのではないか。
  かつて、都知事選で美濃部亮吉候補が時の佐藤栄作首相に対し「ストップ・ザ・サトウ」と叫んで当選を果たした。
 
 もし、W元首相がそういう打ち出し方をしたら、天下を揺るがし、ひょっとして結果は違ったかもしれない。
  (早野透桜美林大教授・元朝日新聞コラムニスト)

知性の欠けた東京都民には呆れる。除名した候補を立てた無節操な自民党を「勝たせた」五輪万歳思想。
フクシマ」などは放っておいて国民等しく血税を負担しましょうというエゴイズム。
東京にいるクラスメートから自己環境についての年賀状が毎年届くが、「60歳過ぎて私は・・をしている、連れ合いは・・の環境にいる、娘が結婚しなくて困る、孫が歩き始めた・・」と。
年金を受給するということも知性があれば、この国のシステムを考え始める一端になりえるが彼はそう思わない。きっと政治は専門家(?)に任せておこう、とでも考えているに違いない。