紙つぶて 細く永く

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マイナス1%の良識

今年町内会の組長に当たった。月に1回ほど組長会合(組会)がある。
今までにソフトボール大会の打ち合せや今後の予定を検討する会合などに出席した。
参加する組長は世の常にならい、年齢50歳から70歳くらいの年代がおおい。
旧来からの地元の人と、新規に越してきた都会への通勤者が入り混じっている。
組会で話される内容を聞いていると農業を主として(の思考で)考えるか、親睦としての面を重視するかにより意見もまちまちである。

以前組長に当たる前、東日本大震災への寄付が強要されて各家庭に一律いくらいくらとの回覧が回ってきたことがある。
当然、我が家として強制された寄付はお断りした。
(多分このように町内会で集められた寄付は上部組織を通じて集計され、寄付した個人の名称は埋没し、受ける組織の代表と集約した組織の代表がやあやあと和んで終わりという処理の仕方になるのであろう)
一町内会員として町内会で決めてもらわなくても当然寄付は行っていますと苦言の文書を投函した。
その結果強制はなくなった。

先日の会合では新しくできる団地の話になった。
現在我が家がある町内会は約100所帯、新規にできる団地は約40所帯。
一挙に構成所帯が1.4倍になる。数ヶ月もすれば町内会への入会申し入れがあるだろうとのこと。
一方町内会で取り組んでいる、春秋の一斉溝掃除作業への常態的不参加所帯の問題が話題になった。
古くから町内会に参画している古参の住民によるとここ数年毎年話題になっているとのこと。
そこで町内会長が発言した。
「仕事が重なった人は溝掃除の日に有給休暇をとることで参加できる。常態的に不参加の理由はない」
「欠席所帯から実費(実情は任意の決定額)を徴収する方向で検討したい」
それを受けて集まった10人ほどの全員が発言しない。
しばらくしてポツリと年配の女性組長が発言した。
「私は中小企業にパートとして働いた経験からいうと溝掃除が行われる日曜日は休みがとれない」
「経営者にパートにも有給休暇という考えがない。休んだら職を失う」
町内会長「一人所帯ならともかく家族のだれかが参加できるのでは。独身所帯の人は・・・うーん」
私「一度日曜ではなく平日に行ってみては? そうすれば欠席者も出席できるかもしれないし、逆に今まで参加していた人も有給休暇をとり辛いという現実が理解できるのでは」
組長A「うちの知り合いにもほとんど参加しない人がいますね」
組長B「もっと郡部に行けば欠席すれば9000円取られますよ」
町内会長「それは少しどうかと・・。2000円くらいがいいんじゃない」
先ほどの女性組長「お金で済むなら有り難い。当日出かける時も溝掃除の場所を回り道しなくてすむ」
堪り兼ねて私が「都会では町内会に入らないとう所帯が増えてきていると聞く。ペナルティーを徴収することになると入らないという所帯が増えるのでは?」
町内会長「わたしはその団地を販売している複数の不動産会社に町内会に入らないといっている所帯には売るなといっています」
(「それは基本的人権の侵害」という小声の野次)
私「隣の市では溝掃除は行政が行っている。住民税は全国ひとしく所得の10%を支払っている
(市町村民税で6%、道府県民税で4%、合計10%)」
「まず市に隣市と同じようなサービスの提供を受けられないか相談を持ちかけ協力を仰げないか」
組長C「いまの財政でそれは無理でしょう」
全員ウーンと黙り込む。
町内会長「それでは各組長で出欠の実態調査をしてもらい、その結果を元に徴収の提案をする方向で」

意見を検証しながらまとめるのではなく、最初から結論ありきの会合の典型であった。
私も私の意見が通るとは思っていなかったし、出席し徴収に無条件で賛同したととられたくないだけの理由で発言した。
平凡な50%の良識をもつひとがマイナス1%良識を放置することで良識49%の烏合の衆となり、
強く意見を述べる人に引きずられる。
良識の放置が思わぬ結果を生む。
「選挙にあたり棄権をすることは良識の放置であり烏合の衆となり、
ドイツ・ワイマール憲法はこのように静かに粛々と改憲された。あの手法を学ばねば・・」
あきれるほど良識のない財務大臣にこう発言されたようにマイナス1%の良識放置は大いなる被害を生む。

しかしそうであろうか逆説的にいうなら、1%の良識を放置し「まあいいか」と原発政策に意見を持たない候補者に投票する、そして1%の良識を放置し差別的選挙区制度に基づいて投票する、
この行為こそがあいまいな原発政策すなわち今までと変化のない「原発安全神話」と結びつくのであり、自民党は34・7%の得票で62.5%の議席を得たのである。
さらに重大な数字は棄権47.39%を加えると自民党有権者の18.25%の得票で62.5%の議席を得た。
麻生財務大臣の肌感覚はこの情勢を分析したものでもある。
1%の良識放置により未来に大いなるしっぺ返しを受けないよう、
1%の良識放置により烏合の衆となるなかれ。

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