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山本義隆氏に学ぶリニア新幹線について その1

線路は続く 目次 

山本義隆(科学史家、元東大全共闘議長)

再度リニア新幹線について、という山本義隆(科学史家、元東大全共闘議長)の文章を読み、リニア新幹線について学びます。

山本氏には多くの著作がありますが、その中でも有名なものは「磁力と重力の発見」です。

氏は本来物理の専門家で、東京大学在学中は一時京都大学基礎物理学研究所に国内留学し後にノーベル賞を受賞する湯川秀樹の薫陶をも受けた。

その将来を嘱望されていたが、おりしも展開した東大全共闘運動にかかわることとなり、東大全学共闘会議の議長を務めた。

そのことに湯川秀樹は惜しい逸材を獲られたと大変嘆いたと伝えられている。

全共闘としての活動で1969年に逮捕された後、氏は大学を去り、予備校講師として物理の講義を続けた。その成果が上記2003年刊行の「磁力と重力の発見」に繋がる。

以下山本氏の文章に準じ、物理学の先覚からリニア超伝導についてその基礎から学んでゆく。(文中敬称略)

「エネルギー」

まずは言葉の定義から。

ここでは、固体・液体・気体を問わず分子が数多く集まって形成される巨視的な系(システム)を簡単に「物体」、
そしてそのまわりの空気等の存在する空間を「環境」と定義します。

「エネルギー」は

物体を加速する能力、

物体を摩擦や空気抵抗に抗して動かし続ける能力、

物体を重力に逆らって持ち上げる能力、

バネを引き延ばしたり気体を圧縮したりする能力、

そして物体を熱する能力等を指します。

エネルギーの移動の形態として「仕事と熱」があり、

「仕事」は、

物を持ち上げるとか、

気体を圧縮するとか、

ばねを引き延ばすとかの形で

物体に与えられるエネルギーであり、

「熱」は熱するという形で物体に与えられるエネルギーです。

そしてその際エネルギーは保存されます。

つまり物体Aと物体Bがあり、AがBに仕事をしたり熱を与えたりしたならば、その分だけAのエネルギーは減少し、Bのエネルギーは増加します。

熱とは、

物体を構成している分子の無秩序な運動エネルギーのことです。

無秩序ということは、全体として見た目には静止しているが、 分子ひとつひとつがあるものは前後に、あるものは左右に、あるものは上下にというようにテンデンばらばらに動いていることを意味します。

お風呂のお湯が熱いというのはそういうことです。

他方、滝の水が流れ落ちるのは、すべての分子が下向きにそろって、つまり秩序だって動いているから、熱運動とは言えません。

「熱運動を表す温度」

熱運動の激しさを表すのが温度(絶対温度)です。

絶対0度とは、熱運動が0、つまりその物体が全体として静止している状態ですべての構成分子が静止している状態を指します。

それにたいして摂氏0度は1気圧で水が氷る温度で、これは絶対温度の273度に相当します。
つまり絶対零度は摂氏-(マイナス)273度(零下273度)です。

温度比較
絶対温度 摂氏温度
500 227
300 27
273 0
200 -73
100 -173
0 -273

「運動エネルギーと電気的エネルギー」

発電機は運動エネルギーを電気的エネルギーに変換する機械であり、

電力とは発電機や電池から電流によって電気器具に供給される電気的エネルギーであり、

それによってモーターを用いて物体を駆動させることも、

オーブンで物体を熱することも可能な、汎用性の高いエネルギーです。

電流によって電気器具にエネルギーを供給する際、

通常の導線(金属線)をもちいて電流を流すと、

導線に電気抵抗があり、

そのため供給されたエネルギーの一部が熱となって無駄に環境中に失われます。

(つまり環境中の空気分子に与えられ、それは回収不可能で使い物になりません)

これをマンチェスターのジュールが発見したので、ジュール熱と言われています。

棒磁石に巻きつくように導線を巻いて両端をつなぎ、ループ状のコイルを作ります。

この状態で棒磁石を急速に抜き去りますと、そのコイルに電流が流れます。

1831年にイギリスのファラデーが発見した電磁誘導という現象で、これが発電機の原理です。

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四国電力HPより

このときコイルが常伝導(下記参照)であれば、熱(ジュール熱)が発生しこの電流は減衰しやがて無くなってゆきます。

しかし超伝導であれば、熱は発生しないので、この電流は減衰せずいつまでも流れ続けます。

「超伝導」

さて、「超伝導」(まったく同じ意味で「超電導」とも書きます)ですが、

ある種の金属は絶対0度近くの極低温で電気抵抗が完全に0になることが知られ、その状態を指します。

それにたいして通常の電気抵抗のある導線の状態は「常伝導」と言います。

超伝導状態にするには極低温に冷却しなければならないのですが、通常その冷却には液体ヘリウムを使います。

ヘリウムは常温では気体ですが、絶対4度(摂氏零下269度)近くで液化します。

この点について、超伝導の解説書(岩田章『応用超伝導』講談社)には次のように書かれています。

岩田章『応用超伝導』講談社 このようにして流れ続ける電流を永久電流といい、このような超伝導コイルの使い方を永久電流モードといいます。
…… 実際に超伝導体の電気抵抗がゼロであることの実証は、この永久電流を数年間流し続けることによっておこなわれました。
この永久電流が数年で打ち切られたのは、永久電流が減衰したためではありません。
超伝導状態を維持するためには毎日液体ヘリウムを補給する必要があり、それがマンパワー的にも経済的にもたいへんで、この実験は中断されたのです(p.25f.)。

この本には実際の運用として次のことも書かれている。

岩田章『応用超伝導』講談社 電線では、 かならず何パーセントかの電力が無駄に失われます。
それにたいして超伝導線ではこの損失がなくなります。
問題は、超伝導状態を作ることと維持することにあります。
我が国の主幹送電線では最高10パーセントの送電電力がこの電気抵抗で〔ジュール熱として〕消費されております。
超伝導送電では、このような損失がまったくなくなるわけです。
しかし、実際には超伝導線を液体ヘリウムで冷却しなければなりませんので、そのためかなりの電力が必要であり、現状ではあまりメリットはありません。(同上p.21)

つまり超伝導状態を作るためには、そして維持するためにも、多大な経費や電力が必要なことになります。

その上でリニア新幹線を考えます

山本義隆氏に学ぶリニア新幹線について その2 に進む

線路は続く 目次

 

 

2020年発表JR各社の決算より
  • JR北海道
    2020年3月発表決算
    運輸収入「875億円」:赤字「▲521億円
  • JR四国
    2020年3月発表決算
    運輸収入「260億円」:赤字「▲136億円
  • JR東海
    2019年3月発表決算リニア新幹線関連投資予算額3100億円)
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1兆4222億円」:鉄道部門利益額「6167億3300万円」
    (2020年3月発表決算リニア新幹線関連投資額未掲載)
  • JR東日本
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1兆9692億円」:鉄道部門利益額「2540億9500万円」
  • JR西日本
    2020年3月発表決算
    運輸収入「9318億円」:鉄道部門利益額「1054億1200万円」
  • JR西日本
    2020年3月発表決算
    運輸収入「9318億円」:鉄道部門利益額「1054億1200万円」
  • JR九州
    2020年3月発表決算
    運輸収入「1652億円」:鉄道部門利益額「200億8900万円」

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