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タテカンから見える景色

京都大学のタテカンについて学ぶ

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京都大学の「タテカン」撤去、が話題となり調べてみると、その構造が見えてきた。

昨年11月、京都市から大学に対し、立て看板が京都市条例で設置を制限する「屋外広告物」であること、歩行者に危険であるなどの指摘が近隣住民からあることを理由に、条例などの法令遵守するよう通知することがあった。

この行政指導をきっかけに京大事務当局により下記の京都大学立看板規定が決定され、タテカン整理へと進んだ。

京都大学立看板規程」

・設置は公認団体に限る

・大きさは縦横2m以内

・各団体1枚

・大学当局の指定場所

タテカンには設置団体名、設置責任者氏名や設置期間、連絡先を記載

しかしこの規程制定にあたり、当のタテカン設置者となる学生との協議は全くされなかった。

ここに京都大学当局は学生を対等の話し相手とみていない、というのは私のアジ的表現で、本当は、学生から攻め立てられ罵倒されたくないのでそんな場を設けたくない、というのが大学側事務局の本音かもしれない。(このあたり国会議員団と官僚の関係にも似てくる)

京都大学ではこれまで、学術のみならず文化・芸術活動の拠点としてさまざまな活動がおこなわれそして卒業後も芸術文化活動を続けている。

有名なところでは、劇団けっぺき、劇団愉快犯、劇団そとばこまち、辰巳 琢郎、平野啓一郎森見登美彦綾辻行人宇治原史規森見登美彦万城目学、etc(順不同)

京都大学の現役の先生に聞いたところでは、昔時計台の横には池があり、その周囲を三輪車で競争したというようなこともあったらしい。まあそれほど無邪気でわがままで自由なところが伝統のようだ。

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一方、真面目な方は下宿生の時に台風に見舞われ、激しくゆれる下宿の窓ガラスに恐れをなし、なすことなく大家の間に駆け込み震えていた、という哲学専攻の大学院生もいたと・・。

行政の京都市としては受け取り方が異なるようだが、京都市民は、このようにわがままであって無邪気で、自由で、幼くて、大いに破目をはずし、表現が上手で下手で、孤独で、お金がなくて、通学は自転車で、でも試験は受けるし、不可なら落第するし、論はたつし、何人かに一人は国を背負うほど優秀だし、功成り遂げて後継者を教育するし、ノーベル賞を獲る、そのような限りない可能性を持っている(かもしれない)学生が可愛くて仕方がないのです。
京都にあふれている学生さん可愛がりは市行政のあずかり知らぬところなのかもしれないが、その慈愛は京都のお寺さんにまして、学生に大いに注がれている。

学ぶタテカンシンポジウム

本年2月13日京大学内で行われたシンポジウムでは、

仮に立て看板の設置・管理に問題があるとしても、それへの対応を当事者抜きで決めることが本当の解決につながるのでしょうか。 大学職員の一括管理で事態が良い方向に進むのでしょうか。答えはノーだと思います。さらに、立て看板規制は現場の職員の労働強化でもあります。

という実際にタテカン取り締まり業務にあたる職員への同情意見も発表されている。

https://sites.google.com/view/tatekan-yoshidaryo/documents

国立大学は国立大学法人への移行から毎年の運営費を毎年1%カットしている。
(昨年は「国立大学法人機能強化促進費45億円」なんて得体のしれない予算も導入されたが・・)

そのため各大学で正規職員数が減り、非正規職員が増え、職員ひとりの仕事量も増え、研究・教育するべき教授にもその余波が及んでいるようだ。

「ぶつぶついわないで、ただ働け、というところです。
文句を言わずに研究しとけ、ならまだいいのですが・・」というぼやきも聞こえてくる。



 


今回のこの構図はどこかで聞いたと思った。
自民党文教族イケイケコンビだ。
イケイケコンビ役が京都市で、文科省役は大学事務当局、目的中学役は大学現場(教授を初め学生まで)、前川氏役がタテカンという役回りか。
まずイケイケコンビ現場のタテカンがおかしいとクレームをつけ、大学事務当局にねじ込んだ、本来なら主体的に善処方法を思考しなければならない事務当局だったが、面倒をいやがり、主体大学現場と協議せずに京都大学立看板規程でいわばお茶を濁した。これがまずかった。
現場教授を含め学生はまっとうに反発した。

シンポジウムで総じて学生管理が強まっている。(注1)
その学生を管理している、教職員に対する管理も「トップダウン」のガバナンスといわれ2014年ごろから強まっている。
その後総長選挙においても意向選挙(注2)を廃止という強い動きがあったが、強い反対にあって意向選挙は残り、無事山極壽一総長が選出された。
同年国立大学法人法が「改正」され、それまで「重要な事項を審議する」とされていた教授会の権限は「教育研究に関する事項について審議する」と縮小された。
毎年1%運営費が削減される中で、京都大学ブラック企業化し、仕事量は増えても教員は増えない。
教育学部の事務職員20名の中で、文字通り京大の職員である人は6人程度です。昨年閣議決定された「新しい経済政策のパッケージ」では高校教育無償化について、支援の対象となる大学は、産業界からの人材を理事に2割以上含めた大学だけとなっています。
このような実態の中で、タテカンや吉田寮に関する破壊的な政策に対抗し、市民との関係の中で自由や自治の空間を育てる市民と学問の接点を作らなければならない。

街の中でジェントリフィケーション(注3)が進行し街の風景は無標となり、京大周辺は有標となっている。
大きな流れでは、視覚に入る様々なメッセージを排除することが求められる。
いままでの流れから、京大の場合、これまで形式的だった規制が、行政指導を口実に本格的規制になってきた。
非常に凡庸な言い方をすれば、共謀罪の「実質化」が進んでいる。
キャンパスはタテカンがあるという緊張感、テンションが必要な場所。
今回景観条例を持ち出してしまったことで、教員、学生、そして京大に何らかの形でかかわったあらゆる人間に開かれた運動が始まろうとしている。

注1 「学生管理が強まっている」吉田寮問題も同じ時期に問題となっている。
注2 「意向選挙」 下記画像参照

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文科省HPより



注3 「ジェントリフィケーション」下記URL参照 

貧困層が土地を追われ、よそ者が街を支配する… アメリカで注目を浴びる「ジェントリフィケーション問題」とは - ログミー (こちらのリンクは切れているので以下を参照ください)

京大新聞「ジェントリフィケーション問題」

介入方法を使い分ける行政

京都市は市内にある大学と協働名目で活力ある京都市を目指しているところだ。その中のうたい文句に

大学のまち京都・学生のまち京都の推進:総合企画局総合政策室大学政策担当 大学政策担当の主な仕事「大学のまち交流センターに関する事務,留学生に関する事務,大学の施設整備の支援,山ノ内浄水場跡地活用事業の推進」
  • 学生の確保に向けた「学びの環境」の充実 ―京都で学びたくなる「大学のまち」の仕組みづくり―
  • 大学の国際化に向けた,優秀な留学生等の受入拡大と国際社会に対応した人材の育成 ―留学生等の飛躍的な増加に向けた「広報」「支援」「交流」―
  • パワーあふれる「学生のまち京都」の実現 ―学生が持つエネルギーによる「京都力」の強化―
  • 産学公地域連携の推進による京都地域の活性化 ―産業・地域の活性化,研究成果の活用に向けた連携強化―

パワー無き「学生のまち京都」の実現、を目指しているのではないのか?と突っ込みたくなる。

様変わりした東一条交差点

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実際のタテカン過去からの主なものは以下にある 

https://sites.google.com/view/tatekan-yoshidaryo/tatekan

おもしろくも変人でもない京大

そんな中撤去の翌日5月14日に復活したタテカン達

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火に油を注いだのは京都市、実際にはそそのかした担当部署

( 京都市:都市計画局広告景観づくり推進室 )

REMEMBER3.11