紙つぶて 細く永く

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賛歌

中島みゆき蕎麦屋という曲がある。その中の一節で
「どうでもいいけど唐辛子そんなにかけちゃよくないよ」
と唄われる。
この歌は、所ジョージに、例の調子で「蕎麦屋なんてタイトルで一曲かけない」なんていわれて作られたという説をきいた。
対談の中、陽気な御仁に頼まれはいはいと作られたかのような印象を持っているのだがしかしこれがなかなか深い。
まず最初から「世界中がだれもかもえらい奴に思えてきて・・」ときて石川啄木の情景を彷彿させる。
中島みゆきの会話体はその作品と大いに趣が異なり、努めて明るく装っているように感じる。
いや双方あいまっての「中島みゆき」だろう。丁度プラスとマイナスが等しくなるところに作品があるのかもしれない。

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作品を聴くと必ずこころを捉える一節がある。
「戦う君の唄を、戦わないやつが笑うだろう」
「肩に降る雨の冷たさにまだ生きてた自分をみつけた」
「足跡は降る雨と、ふる時の中に消え」
「人形みたいでもいいよな、笑えるやつはいいよな」
数えるときりがない。
その言語力は底深くかつ時代を経ても色あせない。
ちなみに上にあげた曲の制作年はそれぞれ、1983年、1985年、2000年、1979年、そして蕎麦屋が1980年。
しかし中島みゆきはバックミュージシャンにも凝っていて後藤次利はともかく布袋寅泰デニー・フォンハイザー、今剛等々

昔は絶えず中島みゆきを聴いていたが、近頃は特に落ち込んだ時にプレイリストでかける。
 プレイリストはかってな気分で選んだ曲ではあるが、今朝PCを立ち上げプレイリストを聴いているとふと蕎麦屋がかかった。ここから情景が広がる。
むかし吉田山北側の屋台の中、私の横で、うどんを一口ずつ唐辛子を山のようにかけて食べている学生がいた。この歌「蕎麦屋」を聴くといつもそのことを思い出す。
そしてこの歌は次の歌詞で終わる。
「風はのれんをばたばたなかせて ラジオは知ったかぶりの大相撲中継
中島みゆき研究所【歌詞】『蕎麦屋』(BA.102)