線路は続く4 経費増大の中での生産性向上運動の挫折
1964(昭和39)年に創設された日本鉄道建設公団(現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構となっている)が建設した路線図が下記図
鉄道新線建設を積極的に推進するため国鉄とは別個の組織日本鉄道建設公団をつくり新線建設事業にあたらせた。このことは反面、国鉄自身の経営的意志決定とは関係なく新線がつくられるということになり、路線は完成後国鉄に貸し付け譲渡された。
下記に日本鉄道建設公団(現独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が建設した路線一覧がある。
現行路線には右端に一日あたりの通過人員を記載した(2014年度)。ここの数字が4000人/日以下の路線は旧国鉄で定義された採算が厳しいという特定地方交通線に当てはまる。4000人/日以下の路線は該当数字を赤色にしている
鉄建公団建設路線ver2-1.pdf - Google ドライブ
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日本鉄道建設公団の上記図には含まれない「未成線」という定義の路線がある。
1980(昭和55)年、国鉄再建法施行にともなって運輸省は、開業後見込まれる輸送密度が1日当たり4,000人未満の路線については、受け皿となる第三セクターなど国鉄以外の運営主体がない限り建設を凍結することを決めた。以下のサイトに詳しく掲載されている
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戦後の混乱期に引揚者を受け入れ、かつ朝鮮戦争をきっかけに盛んになった経済状況を受け運送需要が増大した国鉄は主体的人員計画もなく職員数最大で61万5千人となった。
敗戦後国鉄の中身は疲弊していた。
国鉄の労使関係が極端に悪化したのは1967(昭和42)年からの反合理化闘争からである。70%もの列車を牽引していたSLを廃止し電化・ディーゼル化が進むにつれ機関車に乗る機関助士が不要になった。また、ボイラー用の水と石炭を補給するために50から100キロごとに設置されていた動力車基地も不要になった。
しかし国鉄の労働者は要員効率化機関助士廃止に反対した。
この当時の国鉄には国鉄労働組合=国労(281800人)、鉄道労働組合=鉄労(74500人)、国鉄動力車労働組合=動労(62100人)の3組合があり、中でも国労は1949(昭和24)年には575800人と国鉄職員の9割以上の組織率であった。この組織率が強気を生んだ。
結局この反合理化闘争は国鉄経営側が折れて大幅な妥協となった。
その後1969年(昭和44)年磯崎叡が総裁に就任すると、再度合理化を徹底し企業らしい経営を求める「生産性向上教育」略してマル生と呼ばれた、が開始され、その教育を依頼されたのが日本生産性本部である。
そして磯崎総裁は実施にあたり現場管理職に向かってこう述べた
しかし、国鉄の現場は一般の工場労働者とちがって「生産性向上」の実績を数字で表せない業務が多い。必然的にその”矛先”は、仕事の足を引っ張る組合活動家に向けられ、国労・動労の組合員を減らすことが目的になっていく。それが各地の現場で「不当労働行為」を引き起こした。
国鉄の生産性向上運動は、労使協調という、”愛の哲学”をたてまえに敵対する組合員を排除する”憎悪の哲学”を裏面に同居させながらスタートしたのである。(上記昭和解体-国鉄分割・民営化30年目の真実-より)
また「国鉄改革の真実」葛西敬之著には、
「国労・動労はマスコミと野党を動かして反撃を試み、いくつかの行き過ぎを不当労働行為として訴えることにより、生産性向上教育を政治問題化することに成功した」とある。
教育を引き受けた日本生産性本部が実施する、生産性向上運動の原則は以下の三点であった。
- 「生産性の向上は究極において雇用を増大する。過渡的な過剰人員は配置転換などで失業を防止する」
- 「生産性向上のための具体的方式は労使協力して研究、協議する」
- 「生産性向上の成果は経営者、労働者、消費者に公正に分配される」
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なぜかその日本生産性本部のHPに今も当時の総評の宣言「生産性増強運動にたいする基本的態度」が掲載されている。
公益財団法人日本生産性本部 綱領・宣言集 「生産性増強運動にたいする基本的態度」
その中には
「それらのことの結果、日経連が本年2月発表した数字を基礎としてみても(昭和)28年9月以降、労働生産性が7%の上昇をしめているときに、賃金はわずかに3%の上昇にすぎず、反対に生計費指数は9%あがり、失業は増加している。このことは,半面において大資本家の手中にはいる利潤の増加をしめすものといわざるをえない。最近大資本家の主張するいわゆる労働生産性の増強なるものが、誰を利益し、誰の負担を増加させるのであるかは、おのずから明らかである」
とある。