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火星の人

一気に読ませた早川文庫「火星の人」上、下。火星探査の途中で砂嵐にあい帰還できなくなったマーク・ワトニーの物語。
取り残された火星アキダリア平原でワトニ-はいかに生き延びたか。その方法はただ一つ3200km離れた次のミッションで火星に到着する予定地アレス4までたどり着くこと。次のミッションは4年後のことになる。

解説によるとハードSFということになるらしい。火星人がでてくる、得体のしれない細菌に侵される、強烈な落雷に見舞われるなどのいわば主人公にとって、イコール読者にとってもであるが想定外の夾雑物の一切ないSFの神髄ということであるようだ。著者は「(主人公)マークが直面する問題のそれぞれは、彼がおかれた状況から当然そうなるものでなければならない。稲妻に打たれ、そのあと隕石の直撃をくらってはならないのだ」と述べている。
まさしく展開の中で、腸から異生物が現れたり地球上では想像できない異変が起きるわけでもない。たくましく生きるマークについての物語といっていいだろう。筋の中で中国の国家航天局が救助用の延命食料搬送ロケットを供与する。台頭する中国なのかはたまた単におまけなのか。

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アメリカという国は不思議な国だ。なぜ世界の警察を自認しなければならないのだろうか・・。今行われている大統領候補を選ぶためのキャンペーンでも遠く中東の「民主主義確立」のために多額の税金を投入することを違和感なく話している。減額という声も聞くが、それは減額であってゼロではない。税金の投入という点には異論が無いようだ。
一つは多くのアメリカ国民の出自が多国にわたっていること、すなわち世界各地の紛争が自身の祖父や親の利害と直接かかわりがあること。ちなみにこの本の映画「火星の人」主人公を演じるマットデーモンもイングランドスコットランドフィンランドスウェーデンの血を引くという。
それについて思い出すのは在ペルー日本大使公邸占拠事件だ。フジモリ大統領が日系(日本・ペルー二重国籍)ということもあり日本政府でも異例の処置がとられた。それだけ関心が強かったということか。つまるところこのような状況で遠い海外へ税金を負担する=強い関心をもつことが一般的なのかもしれない。また隠れた要因としてアメリカには戸籍がないので投票をするには有権者であっても自発的に選挙権登録をする必要があり、そのことから投票率が低くカウントされる(投票数/全有権者)、一般意志の作成に大いに寄与していることもあるのかな。

 

 

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」