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探偵!ナイトスクープ 「全国アホ・バカ分布考」その1

「全国アホばか分布考」松本修著という本がある。

大阪朝日放送(正しい名称は朝日放送なのになぜか大阪を付ける習慣があるなあ)

のかってのテレビ番組「探偵!ナイトスクープ」で視聴者からの疑問に答える形で始まった全国アホ・バカ分布調査の集大成で、

番組では関西の「アホ」と東京の「バカ」を対比しエリア分けを試みた。

一般に関東では「バカ」といい関西では「アホ」という。

ではどこからどこまでが「バカ」の地域で、どこからどこまでが「アホ」なのか。これを正確に調査しようとした。

「俺たちバカなことしたなあ」

「うん、もうこんなアホなことはやめよう」

「きょうの君は、すばらしい」

「いやんバカ」や「なに言うたはるん、アホかいな」

番組に届いた投書、東京と大阪出身の夫婦がけんかで「バカ」「アホ」と言い合うことの疑問がとっかかりである。

 その昔テレビで放映された時に見ていたが、今回ひょんなことからその調査結果「全国アホ・バカ分布考」という本を手に入れた。

番組で忙しいスタッフたちに代わりズブの素人である松本プロデューサーが未知の分野言語地理学にに挑んだ。その著作である。

番組の探偵氏がまず東京で、町行く人に大阪でいう「あほなこと」を実演し、

「バカ」との一言を受け取り、そして大阪に向かう。

静岡でも「バカ」だった。

ところが名古屋駅前では中日ファンから「たわけなジャイアンツ」と「タワケ」が出現した。

そうして「アホ」と「バカ」ではなく「アホ」と「タワケ」の境界線を探すことになった。

結果どうやら「アホ」と「タワケ」の境界線は天下分け目の関ケ原(岐阜県不破郡関ケ原町大字関ケ原西今津)にあった。

ここでその捜索結果を受けて探偵局長・天才上岡竜太郎からそれで「バカ」と「タワケ」の境界はどこかと疑問があがった。

また番組最後に長崎出身の探偵局(秀才)秘書岡部まりから「(九州では)バカというきがする」との締めくくり。

そこでスタッフはアホとバカの境界が西にもあることに気付いた。

こんないきさつから全国のアホとバカの境界調査が大々的に始まった。
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番組では全国の3245自治体の教育委員会あてにアンケート用紙を配布し一斉に回答を得た。

調査のキーワードは柳田國男の蝸牛考で披瀝された「方言周圏論」。

言葉は文化の中心から周辺に向かって伝播する。

したがって日本では歴史的に長く中心地であった京都から周辺に次々と新しい言葉が伝わった。

京都を中心とした同心円を描いて同じ言葉の位置がみられる。

「言葉は旅をした」その結果より古い時代に都で使われていた言葉ほど遠い地方に残り、

新しい言葉ほど都に近いところに残っているというもの。

蝸牛考が公表されるや昭和初期の日本人に大きな衝撃を与えた。

それまで田舎者の卑しい言葉と信じられていた方言が数百年、あるいは千数百年の歳月をかけて幾千川を越え旅してきた由緒正しい都ことばであった。

徳川宗賢大阪大学教授によるとそのスピードは1年間に約930m、

一日2m60cmということらしい。

アンケートによれば県単位以上に広がる「アホ」「バカ」に類する言葉は「バカ」「アホ」「ダラ」「アンゴウ」「タワケ」「トロイ」「アヤ・アヤカリ」「ダボ」「ハンカクサイ」等23語に上った。

そしてこの23語が見事に同心円状にならび方言周圏論が改めて確認された。


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