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学問の自由と大学の危機 おまけ

どうやら守旧派が国旗・国歌に「敬意を払え」と指摘する根拠になっているのはこの条文のようだ。
教育基本法第二条五号 「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」
国旗・国歌は1999年に法定されたことは間違いない。今はこれに敬意を払うことも当然だ。だが、どこかの下り坂府で行われたようにそれがすなわち卒業式において校長が教員一人一人の発声を見届けるということでもなかろうに。「国歌」あなたは強制しなければ歌われない 、だから強制します。これこそ国歌に対する侮辱であろう。
広辞苑で「国歌」をひくとまず「国家的式典や国際的行事で国民および国家を代表するものとして歌われる歌」と出てくる。ちなみに「和歌」ともなっている。
またwikipediaでは「その国を象徴する歌のこと。各国の法律によって規定されるもの、国民の共通意識によって認識されるもの、歴史的に国歌として扱われているものなどがあり、一様ではない」となっている。
「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」この文言自体の抽象性を恣意的に設定した当時大いに議論を沸かした一文であるが、ここでまさに当時の指摘通り守旧派によって使われ始めた。

以下再び「学問の自由と大学の危機」に戻り中の広田照幸先生の文章から。

この第二条自体は対象を特定せず一般的で抽象的に教育の目的を論じているに過ぎない。その条文の一部を恣意的に抜き出して使うべきではない。1937年に起きた矢内原事件では大学令第一条「大学は・・・国家思想の涵養に留意すべきものとす」という文言を使い、時の東京帝国大学教授矢内原忠雄が経済学部内紛と文部省教学局の圧力により辞表を出させられた。
大学の授業では現前の政治情勢を批判的に考察するとか、国民国家という存在を相対化するといった内容のものは当然含まれる。社会科学は利害やイデオロギーにとらわれない真理を追究するもの。(これにつけ思い出すのはウィルスソフトの問題。情報学の研究室ではウィルスに対する研究も当然行われる。そこで組織全体にセキュリティの観点からファイヤウォールをかける場合もこの研究の場合は対象をはずす、この研究をしてはならないとは言えないということがあった)
しかしだれか悪意をもったものが教育基本法第二条の都合の良いところを引っ張ってきたら簡単に批判できうる。現に松沢成文議員によってその端緒がみられる。それにたいする安倍首相の「税金によって賄われていることに鑑みれば、いわば教育基本法の方針に則って、ただしく実施されるべきではないかと私はこんな感想をもった」という発言は、昔大学令が果たした言論抑圧を今度は教育基本法が果たすことになる。ちなみにこのことは大学だけの問題ではない。教育委員会の役人が、地方政治家が、あるいは町内のおっさんが、(また国会議員某松沢氏が)「えー、教育基本法の第二条にてらしてだな、あんたの学校の(安倍)先生は逸脱した授業をした」などと文句をつけ始めると大変厄介なことになる。もう一つは「税金で賄われているから」という文言。これが「税金で賄われているから国旗・国歌を掲揚・斉唱」という論なら、税金で支えられているからということと国旗掲揚・国歌斉唱の義務付けとの間の論拠が欠けている。(税金を受けているということが国歌斉唱につながるのなら、東南アジアやアフリカの戦後倍賞を受けたあるいは援助を受けた多くの国々でも国歌斉唱をということになる)注()内はBlog主書き込み

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以下は再び石川先生の記事より再掲。
なお設置者・設置目的を持ち出さないという約束は、設置者が国または地方公共団体である場合だけでなく、私立大学にも当てはまる。判例は「大学(blog注 そのものとして)は、国公立であると私立であるとを問わず、学生の教育と芸術の研究を目的とする公共的な施設であり、法律に格別の規定がない場合でも、その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定」できる、ということを強調。最高裁昭和49年7月19日判決昭和女子大事件 上告審
設置者・設置主体を持ち出さないという約束が大学の自治を定める憲法23条の「学問の自由」の要請だった。そしてそれこそが公私の境界線を護るもっとも需要な堤防のひとつであった。以上「卒業式の式次第」と「学問の自由」という一見関係の薄そうな論点がじつは「公共空間の再編」「公共空間と私的空間の境界線」「堤防としての大学の自治」というより本質的な憲法問題に深く連関している、しかも現在は憲法が保障するこの本質的な内容が正式な憲法手続きによらないでいわば裏口から侵害されようとしている危機的な事態である。

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