紙つぶて 細く永く

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戦争の放棄

戦争の放棄に関して、重要なのは、それを降伏や服従としてではなく、
積極的な「贈与」として行うことである。
軍事的な主権を「贈与」することは、服従とは違う。
贈与することは、いわば「贈与の力」が伴う。
そのようにいうと、贈与の力が武力よりも強いということはありえない、非現実的だ、
という答えがすぐに返ってくる。
しかし、私はそう思わない。今のように戦争への道に向かいつつあるときに、
ますます武力や財力の増強に訴えるということがどうして現実的でありえよう。

Karatani たとえば、日本が、あるいは、どの国でもいいが、戦争放棄を宣言した場合、
他の国が、そのような国を攻めるだろうか。
もし攻めたら、その国は世界中の世論から非難を浴び、
回復不能な不名誉をこうむることになるだろう。
だから、贈与には力があるのだ。
戦争の放棄=贈与は、たんに120年前(日清戦争脱亜入欧)の反復を避けて、もっと、
普遍的に世界史的な意味をもつことになる。
おそらく日本はそれとは逆の道をたどるだろう。
が、結局は、そこに行き着くことになる、ただし破滅のあとに。
柄谷行人-憲法9条を実行する-