紙つぶて 細く永く

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雲の峰

「恋愛の彫刻のごとく、じっとしていた。」

「けれども相当の地位を持っている人の不実と、零落の極に達した人の親切とは、結果においてたいした差異はないと今さらながら思われた。」

「(書生の)門野はこの暑さに自分のからだを持ち扱っているくらい、用のない男であったから、すこぶる得意に代助の思うとおり口を動かした。
夕方には庭に水を打った。二人ともはだしになって、手桶を一ぱいずつ持って、無分別にそこいらをぬらして歩いた。門野が隣の梧桐のてっぺんまで水にしてお目にかけると言って、手桶の底を振り上げる拍子に、すべって尻もちを突いた。
白粉草が垣根のそばで花を着けた。
手水鉢の陰にはえた秋海棠の葉が著しく大きくなった。
梅雨はようやく晴れて、昼は雲の峰の世界となった。
強い日は大きな空を透き通すほど焼いて、空いっぱいの熱を地上に射りつける天気となった。」
-夏目漱石「それから」-

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REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」