紙つぶて 細く永く

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箴言2

漱石の「それから」のなかで,代助と嫂が対話をする。
「一体今日は何を叱られたのです」
「何を叱られたんだか、あんまり要領を得ない。然し、お父さんの国家社会の為に尽くすには驚いた。
何でも十八の年から今日までのべつに尽くしてるんだってね」
「それだから、あの位に御成りになったんじゃありませんか」
「国家社会の為に尽くして、金がお父さん位儲かるなら、僕も尽くしてもよい」
1_4 東寺春の公開(2012)

この漱石の痛烈な皮肉を浴びた代助の父は日本の資本家のサンプルではないのか。
こうして「栄え行く道」と国家主義とは手に手をつなぎ合って近代日本を「躍進」せしめ同時に腐敗せしめた。
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「私事」の倫理性が自らの内部に存せずして、国家的なるものとの合一化に存するというこの論理は
裏返しにすれば、国家的なるものの内部へ、私的利得が無制限に侵入する結果となるのである。
-丸山真男超国家主義の論理と心理」-