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矛盾をどう克服するか 災害と防災学

災害と情報学というシンポジウムを聴きにいった。
3.11の災害を受けて「情報学」という立場から防災・減災について考えるというのがテーマ

講演者はGoogle・ITSJapan・Wethernews・NHK大阪各社の代表主催は京都大学大学院情報学研究科

Googleは有名な20%ルールにより揺れの一瞬からプロジェクトが立ち上がったようだ。
「CrisisRespnse」(http://www.google.org/crisisresponse/
というサイトが以前からあり、Googleお得意の「Picasa」等でボランティアによる尋ね人の掲示板を撮った掲載写真の解読等が報告された。

ITS「IntelligentTransportSystems」というサービスが上記ITSJapanによって提供されているそうだ。このサービスは知らないうちに使っていた。
カーナビゲーション」「ETC」「交通管制」「道路管理」etcなどを総称してITSというそうである。
目新しいところでは、「プルーブデータ」集約実験を実施しているとのこと。
ハイスペックナビゲーションシステムから自動車の走行データを集め道路の渋滞状況などを得るシステムホンダの取り組み「インターナビプレミアムクラブ」は以前から知っていたが、今はトヨタ「G-Book」日産「カーウィングス」パイオニア「スマートループ」と4社で実施されている。
これら各社のデータはそれぞれ会員向けのサービスでその中でしか活用できなかった。
そこで実証実験として各種法人によってNPO法人としてITSが設立され、そこが国土地理院の地図上に各種データを落とし込みしている。初期の協議会としての設立は1994年この組織ではないかもしれないが、道路に表示される混雑情報に懲りている立場(注a)としては疑心暗鬼という気持ちは拭えないが発表はそれなりにITを活用していると実感できた。
(注a「道路情報」特に道路に表示される混雑情報とラジオでの混雑情報ほど、「狼少年」を実感させるものはないだろう。運転者は「混雑しています」という表示に何度も「騙されている」経験があり、究極の信用しない・できない一物となっている)
また、VICSの混雑表示がなぜ「赤」「オレンジ」「緑」なのかも不思議な事象だ。
これが表示される車載ナビゲーションシステムを最も見るのは運転者である。
つまり前方を見ながら運転中に瞬時にNAVI画面を見るわけである。「オレンジ」「赤」の区別が難しい、ということは設計段階から判ることである。交通に相応しいのは「赤」「黄色」「緑」である。知恵がないとしかいえないシステムである。

しかしその取り組みが究極の目的としている「IntelligentTransportSystems」
は交通革命を起こしそうな各種技術が詰まっている。
自動車の種類・走行経路・速度を地図にプロットするとどこでスピードが落ちたか、どこでUターンをしたか、どこは車の走行が無いか、等が積み重ねられ道路の状況がわかる。全国の道路地図にそれが反映されるという訳である。東日本震災からWebで公開されたようだ。
(参加者の多くがITSという言葉を知っていた。さすが情報学研究科ですね)
http://www.its-jp.org/saigai/

Wethernewsが凄い。

有料契約会員数160万人 その中でウェザーリポーターが30万人この30万人が自身の周辺の様子をレポートする。「空の写真+GPS位置情報+天気+フリーコメント+五感予報(自身の予想)」を携帯電話で送信する。このデータを地図にプロットし解析をする。これに当然気象庁の発表する観測データを加味する。
すると見事な天気予報が完成する。
また気象庁のレーダーでは雨雲を地上2kmの辺りで探索しているのでゲリラ豪雨は予報不可能となっているのだそうだ。
ゲリラ豪雨というものは発生してから2kmに成長する間で豪雨を降らせるとのことで、上記Wethernewsでは「ゲリラ豪雨防衛隊」なるものが3万人配置され、豪雨発生の可能性があるときに雲の監視を依頼しリポートが送られてくる。このデータを分析することでWethernewsではほぼ完全に予報可能と謳っている。
http://weathernews.jp/android/srtn_daishinsai/graph.html?id=04010009
このリポーター達が東日本大震災で活躍した。震災直後からその通常リポートに震災の様子が掲載されはじめた。 現在でもWebで読むことが出来る。http://weathernews.jp/tohoku_quake2011/map/#

NHK大阪からは報道部ディレクター

震災後の報道とその検証ということで、NHKの報道を中心に社会的リアリティの構築という面からの分析があった。
最初の30分(ほぼ大きな津波が襲う時間)に何があったか。
NHKの放送は「最初の30分」を集計すると宮城・岩手からの中継映像が50%東京からの中継映像が27%残りが東京スタジオ画像・図表その他となっている。それも最初の10分間、次の10分間、最後の10分間と時間をおって東京中継画像(お台場の火災や新橋駅前の群集画像)が多くなってくる。
現地の画像が入りにくく東京に偏ってしまったという。
また5分刻みでみると注意喚起コメント回数が15分から20分の間で0となっていた。
Wethernewsの事後の調べでは地震発生後「大津波警報」を知ったのは平均16.4分。丁度その間はNHKのコメントが欠落している。
津波のリアリティを実感できるのは、例えば防災無線で「高台に避難しましょう」と呼びかけるのではなく自動音声放送に変換し「防災職員も避難しました」と発することも1方法かも知れない。
そこで津波警報を最初に何で知ったかの調査をすると、「テレビ32%、ラジオ27%、家族知人13%、携帯サイト・メール20%」等となっている。
また震災後1ヶ月の報道では結果的に専門的技術者のボランティア報道に偏った等、「プロに任せておけばよい」「寄付の方が合理的」「行くとかえって迷惑になる」という評価を生み、震災後数ヶ月のレベルでは東日本大震災へのボランティア延べ人数は阪神・淡路大震災の10分の1程度になっている。
このような検証が発表された。
報道各社の東京サイドへの偏重はかねてから指摘されていることであり、東京ニュースセンターは仕方がないとしてもバックアップとしてのニュースセンターを何故置かないのか。ニュースによっていは遠隔地でもセンターの機能を維持できるのであり、沖縄などまさしく好適な場所でないだろうか。

私は震災のその時間偶然ある部屋のテレビの前にいた。津波の様子がそれこそ劇的な画像で流れていた。

いまもゆっくりと多くの家を飲み込んで田畑のなかを流れる津波空撮映像が頭から離れない。
Yutubeに海外からの投稿があった。いずれ削除されるかも知れないが多くの人の記憶に残せたらと思う。
http://www.youtube.com/watch?v=HNGTidV1pME&feature=related

ある防災研究者から言われたのが「災害時にITなんて使えると思うな。電気なしで何ができる」
究極の「矛盾」に陥る。
発電能力をもつ福島第一原発が全電源喪失によって壊れてしまった。それと同じく、災害に備えた「情報学」が災害によって動かなくなる。ブラックジョークのような事態に「情報学」は何をしてくれるのだろうか?

 

 

REMEMBER3.11

不断の努力「民主主義を守れ」