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伊藤計劃「虐殺器官」

一気に読み進めた。著者は東京生まれで、武蔵野美術大学映像科を終え民法キー局系列のウェブ制作会社に勤務

在学中は漫画研究会所属

設定は9.11以降の近未来

 SFで科学に裏づけされた?武装が出てくる。

「人口筋肉」からできたポッドや「神経マスカーと薬物(体内)局所輸送による前頭葉局所マスキング」

「兵士たちを作戦のたびに、最高の状態で送り出すため」の医学的処置

「痛みの「感覚」だけマスキングをして、痛みの「知覚」だけは保存する」

こうすることによって、戦闘の障害になる「痛み」を「感じる」のを抑えながら、「痛い」と「知覚する」ことは妨害しない。

脳の中で「痛み」を感じることと「痛み」を認識することは、別のモジュールがおこなっている。
脳の様々なモジュールを決められた組み合わせでマスキングすれば痛みを抑えるだけでなく、目的に応じた行動性格特性をその人に与えることも可能になる。

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漫画研究会所属という経歴からか映像を彷彿させる場面が随所にでてくる。

アメリカ人の情報軍大尉クラヴィス・シェパードが主人公

舞台は「イラク」から「サラエボ」「アフリカ」「インド」と全世界に亘る。

「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない」宮部みゆき

と帯にあるように、取材力がすごい。

 著者は惜しくも2009年3月癌で死去した。

そして小説では「虐殺の文法」がキーワードとなり、最後に「アメリカ」合州国は内戦に突入してゆく。

SFでは用意周到なプロットであればあるほど、読者は「穴」がないかと勘ぐるもので、少しの「穴」には眼をつぶらなければいけない。

ところでテレビの、特に推理ドラマに全く興味がわかないのは解決できることが眼に見えているからであり、どれだけ完全犯罪との想定を出されても、スリシングな解決方法は「だまし」ということが判る。

いわば際限ない不可能性を提示され、「どうですか。これなら解決しないとおもうでしょ」と提示されればされるほどこちらは意気消沈するので、

しかし、「刑事コロンボ」は最初に犯行場面があり、「解決するのはこの範囲までです」と教えてくれるのでなるほどそこまでいかにして辿るかという筋が共感でき生きてくる。

あんちょこな性善説=悪人は淘汰される、という手法は思考を生まない。

 

「イヴァンよお前にやる花はない」プラハの花屋

REMEMBER3.11