紙つぶて 細く永く

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カラ兄 その3

ヨーロッパに行ってみたいんだ、ここからそのまま出発する。
行きつく場所が墓場だってことはわかってるさ。
でも何よりだいじな、いちばんだいじな墓場だ、そうなんだよ!
だいじな人たちがあそこに眠っている。
墓石のひとつひとつが、過ぎ去った熱い人生や、自分の偉業や、自分の真理や
自分の闘いや、自分の学問にたいする熱烈な思いを伝えているからね、

もし子どもたちまでがこの地上で恐ろしく苦しんでいるなら、
それはむろん自分の父親のせいだし、リンゴを食べた自分の父親の変わりに罰せられているんだ。
といってもこんなことは別次元の考え方なんで、この地上の人間の心なんかにはとうてい理解できない。
罪のない人間が、他人の代わりに苦しみを受ける理屈がどこにある。
しかも、あんなふうにまだ罪のない子どもがだ!

「おれはこう思うんだ。もしも悪魔が存在しないなら、
つまり、悪魔を人間が創ったんだとしたら、人間は悪魔を自分の姿に似せて創ったということさ」
「そんなことなら神さまだって同じですよ」

人間が自分の姿に似せて神さまを創ったっていうんなら、
おまえの神さまってそう悪くはないんじゃないか。

自由と、地上に十分ゆきわたるパンは両立しがたいものなのだ。
-ドストエフスキーカラマーゾフの兄弟亀山郁夫訳-